祭祀様は夢を見ない
2010/08/30 Mon
m25
ゲーニッツの部屋のカーテンを開けて陽光を取り込んでいたグスタフは、背中に掛けられた声に応じて振り返った。
挨拶を送ってきたゲーニッツは寝台の上で一度寝返りを打ってから、億劫そうに身を起こしているところだった。
グスタフよりも一族の主たるオロチに近しい身である分、ゲーニッツは爬虫類の特性が強かった。
そのお陰で目覚めたばかりのゲーニッツは何処かぼんやりとしており、声にも緩やかな色が混じっている。
それはゲーニッツの起床を手伝うグスタフにしか見ることが出来ない特別な姿だった。
「ええ、悪くありませんよ。暫くしたら頭も冴えるでしょう」
「それは何よりです、今日の茶はハーブティーに致しましょうか」
潤む目を起こすように目頭を押さえているゲーニッツを微笑ましく思いながら提案すると、
お願いします。とやはりまだ眠たそうな声が聞こえてくる。
欠伸を噛み殺すような仕草は普段のゲーニッツでは見られないもので、グスタフの心音が人知れずに上がる。
理性がぐらつく音を誤魔化すようにカーテンをタッセルで留めてながら視線を逸らす。
「そういえば、最近は特にお目覚めが優れないようですが」
「………、……そうですか?」
「お疲れなのではないでしょうか」
「……ああ、いえ。…そんなことはありませんよ」
どこか歯切れ悪く答えるゲーニッツに首を捻り、祭祀様?と声を掛ければ、
今まで寝台の上でぼんやりとしていたゲーニッツが動き出して洗顔に向かうようだった。
「貴方様は我らオロチ一族の尊き導き手。――…何卒ご自愛ください」
「分かっていますよ、……下がりなさい」
本心からの言葉を吐くも、ゲーニッツはにべにもなく手を振ってグスタフの退室を促した。
しかし、グスタフは直ぐに退室せず、ゲーニッツの傍へと足を進めた。
これが己の本能の成す業なら理性で押し留めることも出来たが、
ゲーニッツの不調が危惧されるならグスタフを止めることは何人たりとも出来ない。
ゲーニッツ本人の意思すら振り払い、その後に懲罰を受けようとも安否を確かめずには居られないのだ。
大股で距離を詰めると、不遜だと自覚しながらゲーニッツの頬に掌を翳した。
瞬間的にゲーニッツが不快を隠さず、青の瞳でグスタフを睨みつけてきたが、
[7] << [9] >>
-
-
<< 保健室へようこそ
小休憩 >>
[0] [top]