オーバーヒート
2011/07/01 Fri
m25
「………」
ずばりと確信を付くと、オズワルドは少しだけ困った顔をして見せた。ゆっくりと唇を一文字に結んで、眉尻を下げる。
何処か憂いを帯びたような眼差しは、深い躊躇いと僅かな切なさを思わせる。
ルガールは僅かに瞳を細め、オズワルド?と名を呼んで先を促した。
暫く逡巡した後、オズワルドは緩やかに休憩室のドアに視線を滑らせて、人気を確認する。
どうやら、他者には聞かせたくないことらしい。
「――…社長には、社員の体調を管理する義務もありますから話しますが――」
勿体ぶった口ぶりに神妙な面持ちで頷き、僅かに上体を乗り出すように傾けた。
缶コーヒーを握りこむ掌にも自然と力が篭る。
「………閣下が脱ぐんです」
「………………………は?」
シリアス丸出しで構えていたのに、返ってきたのは大分、頭の湧いた答えだった。
一瞬理解しきれず、脳内を整理してみるが、意味が全く分からない。
「私よりも暑さに強いようなんですが、此処最近の猛暑は流石に堪えるらしくて、軍帽を取って、胸元を開くんですよね」
「……ああ」
何だか、先を聞くのも馬鹿らしくなってくる展開だが、一応相槌を打つ。
だが、本心としては既に如何でも良くなっている。
一気に興味の削がれた内心を隠すようにルガールはコーヒーを啜った。
「少し汗ばんだ金髪を撫でつけて、帽子をかぶり直すんですよ」
「………な」
「ああ、想像はしないでくださいね。前職の血が騒ぎますので」
なにがなんだかわからないよ。と某淫獣の言葉がうっかり口から出掛けただけで、ジェネラルのセクシーショットなど決して想像していない。
そもそも誰得なのか。いや、ここはオズ得なのだろう。頭痛が痛い。
「いつもきっちりと着込んだ詰襟を寛げて、逞しい首筋が露わになるんです。それが、うっすらと汗を掻いているんですよ」
「…………」
「ああ、想像はくれぐれも成さないでくださいね。暑さは人を殺めかねないとフランス文学でも言っておりますので」
ルガールはそこまで聞いて、静かに首を左右に振った。まるで何かを諦めるように。
前言撤回。
こいつも度し難いほどの恋人大馬鹿だ。
ルガールはそう確信した。
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私のクローンがこんなに可愛いはずがない >>
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