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MAID IN LOVE

2011/03/30 Wed
m25



「神隠しなんてオーソドックスだと思うのですが」
「新月の晩に、なんて貴女らしいとは思いますが、私はただの人間ですから」
「私もただの人間です」
「最近流行のランク詐欺ですか、わかります」

オズワルドは困ったように眉尻を下げて見せた。
その表情に合わせて、月から零れたような銀髪を揺らして咲夜がほんの少しだけ笑みを零す。
見透かすような笑みから逃げるように温くなってしまった紅茶を掌で包み込み、僅かに乾いてしまった咽喉を潤した。

「この年になって、好いた惚れたと言うのもどうですかね、と思わないでもないですが」
「引退した甲斐があったじゃありませんか」

ごもっともです。と人並みらしい悩みに頭を使っている現状を振りかえってオズワルドは苦笑する。
まさかこの年で男に惚れた挙句、孫といっても差し支えないほど歳の離れた相手に恋愛相談するとは夢にも思わなかったが。
客観的に見れば、滑稽なまでに色恋に傾倒している自分を諌めるように頭を振る。

「カーネフェルは、ワイルドカードを切る程度の能力だと、思っているだけですよ」

やれやれといったふうの姿を慰めるように、咲夜が合いの手めいて言葉とポットを差し出してきた。
あまりに自然な行為だったので、素直に二杯目を貰い受ける。
咲夜の美しく膨らんだ唇が、明らかな含みを持って撓んでいることにも気づかずに。






咲夜とのお茶会を繰り返し、次にジェネラルの姿を見たのはやはり大会会場だった。
モニター越しではない、生のジェネラルを網膜に映すのは本当に久々だ。
大きな大会会場には必ずといって良いほど併設されている中庭のベンチにジェネラルは居た。
心地よい日差しが緑の軍服を、木々の新緑色に沈め、オズワルドは眩しそうに目を細める。
ジェネラルは足を組み、瞼を伏せて何か考えるように他を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
オズワルドはその姿を見ると、条件反射めいて左胸が甘苦しく痛み出す。
また、避けられてしまうかもしれないと思いながら足を踏み出し草を踏むと、ジェネラルの傍を流れる空気が僅かに変わった気がした。
現役軍人であるジェネラルが隠してもいない足音に気づかないわけがない。
それでもベンチから立ち上がろうとしないジェネラルに心中で小さく安堵の息をつく。

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[Serene Bach 2.23R]