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保健室へようこそ

2010/08/28 Sat
m25


こんなことなら、ほいほいと保健室などにくるのではなかった。痛みに歪んだ瞳が一瞬、保健室の扉を探す。
予想できていたはずなのに、最近はいつもルガールに助けられていただけに油断していた。
しかし今、ルガールはいない。
そこまで考えるとヨハンは無意識のうちにルガールを頼りにしていた自分の不甲斐なさを自覚してグ、と喉が詰めた。
自滅ばかりがヨハンを襲い、心臓までキュウと音を立てるように縮こまる。

「………何を考えているのですか?」

ヨハン、と名を呼ぶ場違いなほど穏やかな声が鼓膜を擽り、ヨハンは己の考えを改める。
ルガールは確かに優しく頼れる相手だが、ヨハン自身も立派なラスボスなのだ。
自分を奮い立たせるように頭を振ると、力強くゲーニッツを睨みつけた。
その反抗的な視線に当のゲーニッツは一層深い笑みを浮かべる。
一瞬のみ、ヨハンの視線が助けを求めるように扉へ注がれたのを見逃さず、
笑みを崩さぬまま、声が明らかにワントーン落ちた。
ヨハンとゲーニッツの脳裏に浮かぶのは意味合いの違う同一人物、金色の髪を持つ隻眼の彼。

「そう、ですか。………無事に帰すつもりでしたが、貴方が強情張るなら、
目上の者に対する接し方と言うものを教えてあげなくてはいけませんね」

嘘だっ!とヨハンは大声を張り上げたかったが、それを口にする前に手首に何かが絡まった。
シュル、と布の擦れる音がして、左右の手首が背中でぶつかり、驚愕が顔に広がる。

「やめろ!いい加減にしろ!これが目上の者がやることかっ!」

騒ぐヨハンを無視し、二の腕を掴んで無理やり立ち上がらせた。
引き摺るように連れられていくのは、カーテンで仕切られているベッド。
シャッとカーテンを引く音に、ヨハンの心音が跳ねる音が重なった。
背中を押されて、前のめりにベッドに倒れると重量に負けたスプリングが大きく軋む。
強かに肩を打ったが、スプリングが衝撃を吸収し、痛みは少ない。
だが、ゲーニッツが覆いかぶさってくるのに充分な隙が生まれた。
肩に武骨な指を掛けられ、両腕を下敷きにして身体の向きを変えられると真っ向からゲーニッツと対面する。

「やめろと言ってるだろう、ゲーニッツ!」

ヨハンの大声は薄いカーテンを揺らしたが、その程度で怯むようならトラウマラスボスなど呼ばれていない。

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[Serene Bach 2.23R]