保健室へようこそ
2010/08/28 Sat
m25
思わず、ゲーニッツ、と止めるルガールの声を無視して白衣を翻し、ゲーニッツは踵を返す。
職員室の扉に手を掛け、ゆっくりと開くと、肩越しに睨みつけてくるルガールを振り返り、再び唇を動かして宣言する。
しかし、それは宣言と言うよりも、縋るような、頼むような、小さく弱い声だった。
「………彼は、私のものなんですよ」
その一言を残し、扉を抜けていくゲーニッツを見送って、ルガールは深く溜息を吐き出す。
小さく舌打ちをしながら、己の前髪に指を差し込んでクシャリ、と掻き揚げた。
「私もお前も、教育者だろう…」
頭で考えたはずの言葉が本音のように口から零れて、驚くと共に今一度溜息が漏れる。
うっかり迷い込んでしまった袋小路で、その実、自分もゲーニッツと変わらないじゃないか、と、
キリキリ痛む胃を押さえつつ、三度目の溜息を吐き出した。
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