夢に見るほど甘い生活
2011/02/28 Mon
m25
その事実に安堵しながらも、オズワルドは密やかに眉を顰めて見せる。
きっと料理をしているうちに、手袋は汚れてしまうだろう。
手入れしているとはいえ、年季の入った革製品を余り濡らしたくはないのだが、背に腹は変えられない。
何はともあれ、とりあえず料理は出来るようになったのだから多くは望まない。
オズワルドは小さく肩を竦めると、早速料理に取り掛かる。
しかし、料理を始めて程なくして、玄関の扉が開く音が耳に届く。
次いで聞こえた声に、オズワルドは料理を中断して玄関へと向かった。
玄関にいたのは想像した通りの人物で、オズワルドは笑みを深めて労わりの言葉をかけた。
釣られるように笑みを浮かべたジェネラルは、僅かに身を屈めてオズワルドの唇に触れようとする。
何のことはない、いつもの帰宅の挨拶だ。けれど、オズワルドは一歩後ろに下がることでそれを回避した。
いつものオズワルドであればジェネラルの首に腕を回して懐きに行くのだが、今日は状況が異なった。
今のオズワルドは触れたものをチョコレートへと変えてしまうのだ。
そしてオズワルドには、『手』で触れたものが変わるのか、『触れた』ものが変わるのかの線引きを理解できていないのだ。
もしも『触れる』ものを変えてしまうのなら、どうあってもジェネラルに触れるわけにはいかない。
無論、そんなことを知る由もないジェネラルは分かり易く避けられて、小さく首を傾げて見せる。
オズワルドは自分が手にした能力を説明し、だから触れるわけにはいかないのだと言えば、ジェネラルは苦笑しながら納得してくれた。
そうして、困ったように笑いながら、こう言ったのだ。
君にとっては歓迎すべき能力だな―――と。
「―――…そうじゃないのか?」
隣に伸びているオズワルドに、再度そう問えば、抗議を多分に含んだ視線が突き刺さる。
その視線に僅かに怯むと、それを見咎めたようにオズワルドが上体を起こした。
「確かに、チョコレートは好きです」
頷き、肯定しながらもオズワルドは酷く不本意そうだった。
ジェネラルは抗議めく視線の意味を図りかねて困ったように眉を寄せた。
すると、オズワルドの腕がジェネラルへと伸びてくる。
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