夢に見るほど甘い生活
2011/02/28 Mon
m25
短く切りそろえられた髪を梳くように撫でる手は子ども扱いと言うよりも、甘やかそうとしているようだった。
老齢に片足どころが両足を突っ込んでいるオズワルドに対してする行為ではないが、不器用な恋人がしていることに抵抗する理由はない。
ふと気づけば、今まで本へと注がれていた視線を独占していた。
邪眼と名高い目はオズワルドだけに注がれている。
じわりと広がる満足感に小さく笑気を漏らして自らが見た奇妙な夢物語を紡ぎ始めた。
「多分、寝る前にお菓子のことを考えていたのも関係していると思うんですが…」
夢の中で、オズワルドは手で触れたものを全てお菓子に変えてしまう能力を手にしていた。
例えばそれが植物であっても、無機物であってもお構いなしだ。
どういったわけか、手袋を嵌めてしまうと効力は得られないらしいのだが、素手で触れば長年の相棒であるカードですら甘い香りを放つクッキーへと変じてしまった。
リビングに飾っているバラを触れば細い細工の飴になり、リモコンに触ればエクレアに、サングラスに触ればチョコレートへと転じていく。
夢の中のオズワルドは困るよりも先に楽しむことを優先した。
頭の何処かでは夢であることを理解していたので、別段気兼ねする必要もなかった。
個人的な好みでいえばお菓子全般よりもチョコレートが好きなので、そうならないかと念じてみると、程なくそういう能力になった。
時計を触っても、本を触っても、テーブルを触ってもそれらは艶の美しいチョコレートへと変わっていく。
試しに、チョコレートへと変わった本の端を齧ってみるとミルクチョコの甘い味が舌へと広がった。
流石にテーブルに齧りつくことはしなかったが、手に持った本の何ページかはオズワルドの口へと消えていった。
「―――君の好物はチョコレートではなかったか?」
珍しく話の途中で割り込んだジェネラルは、訝しがるように首を傾げながらそう言った。
確かにオズワルドの好物はチョコレートだ。それを裏付けるようにキッチンの棚にはチョコレートが常備されている。
一日にどれだけ消費しているのかは定かではないが、豊富な種類を取り揃えている棚を見る限り相当好きなのだろうと想像はつく。
だからこそ、それこそ『夢』のような能力を得られたのなら喜ぶのが筋ではないだろうか。
[7] << [9] >>
-
-
<< 1231/0101
バレンタイン・キッス >>
[0] [top]