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パンドラの切り札

2010/12/15 Wed
m25


露骨なグスタフの態度を無視して、オズワルドはソファの側へと歩を進めながら口を開いた。

「―――…一体、どこへ隠したんですか?」

オズワルドが投げかけた疑問の声をたっぷり一拍聞き流してから緩慢に足を組み換え、徐に対戦表から顔をあげた。
グスタフの顔は昨夜の淫蕩さの気配を微塵も感じさせない、完璧なポーカーフェイスに彩られている。

「見つけられなかったのか」
「52枚は見つけました」
「老いたな、オズワルド」
「貴方はいつまで若いつもりですか、グスタフ」

問い詰めてもグスタフはどこ吹く風で応じようともしない。
オズワルドは呆れたように頭をかぶり振り、一歩踏み出してさらに強く問い詰めた。

「返していただかないと、困るのですが」
「困らせるために隠したと分からん貴様ではあるまい」
「相変わらず、意地が悪いですねぇ」
「何せ、貴様の元弟子だ」

皮肉の応酬は軽快で、お互い飲みなれた毒で喉を潤す。
オズワルドは懐に指を差し込み、ゆっくりと52枚のカードを取り出した。
ジョーカーまで揃っているのに決定的なカードが一枚足りない。
慣れた手つきでグスタフにスートを向け、指を滑らせ扇状に開いた。
グスタフはやんわりと瞳を細めて、無表情ながら、眩しそうにカードを見やる。

「――…ハートのAを何処へ隠したんですか?」

感情の見えない縦長の瞳孔は、昨夜と一線を画しており、鋭く澄んでいた。
グスタフは詰まらなさそうにしばし、オズワルドを眺めた後、鼻を鳴らして小さく笑う。

「……本当に見つけられなかったのか?」
「心当たりがなくはないのですが、何分ベタなので」
「……………」

オズワルドをからかっていたグスタフは、言葉を止めて緩慢に足を組み直した。
その姿を見れば、僅かに胸が晴れて、思わず笑みを零すとグスタフの鋭い視線が突き刺さる。

「仕方のない弟子を持つと苦労しますね」
「――…いつまで師匠面をする気だ」

吐き捨てるように告げてくるグスタフは、まるで子供のようだった。
こんなところだけ似ているのはどう言うことか、弟子は師に似ると言うより類は友を呼ぶと言うのだろう。

「先ほど自分で弟子だと言ったでしょう」

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[Serene Bach 2.23R]