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パンドラの切り札

2010/12/15 Wed
m25


脳裏に整った顔立ちの元弟子を思い描いて、胸に手を宛がったまま逡巡する。
誘発されて脳裏に甦るのは、薄暗い褥での睦言。

『―――ッ、…は…ぁ、』

自分から誘ってきたくせに抱けばいつも抵抗する可愛げの足りない可愛い弟子。
安らかな眠りを邪魔されたことと、何時も通りのグスタフについ攻め手は強くなった。
決して自分にそんな趣味はないが、グスタフの啜り泣くような声は嫌いではない。

『……く…ぅ…、…オズ、ワ…、ッ、やめ…っ』

決して零れはしない涙を、切れ長の瞳に目いっぱい溜めて耐える姿は見物だった。
本意ではないだろうが、自ら腰を揺らしてきては何の説得力もなかった。
そんなグスタフがいじらしくて、つい口が過ぎてしまったのも良く覚えている。
紳士的とは到底言えない底意地の悪さが滲み出て、そっとグスタフの耳元で囁いてしまったのだ。

――――そうして、『祭祀様』も誘うんですか?と。

当たり前のように間髪いれず殴りかかってきたグスタフを押さえつけるのは流石に骨が折れた。
オズワルドを射抜く瞳は怒りに燃えており、今にも喰い殺されそうだった。
グスタフにとって侵してはならない聖域だと知っていながら踏み荒らしてしまったのだ、当然だろう。
ただ、心の底からワイヤーを早々に寝台の外へ投げ出しておいて本当に良かったと思った。
ふと、その睨み付けてきた視線の強さ―――久しぶりに見た人外の色に染まった蛇の眼が脳裏に引っ掛かった。
まるで怒りも憤りも蔑みも全て孕んで、何か薄布のようなものを掛けた、複雑な視線。
消えてしまったカードをその記憶に重ねれば、グスタフの顔が一層鮮明になる。
物言いたげな視線と、薄く開いた唇。

「………………ああ、」

もしかして、と閃いたままに声を出す。
一つだけ泡沫のように浮かんで出来た心当たりを確かめるため、オズワルドは家での捜索を打ち切り、コートを羽織って、家を後にした。




何とかギリギリに会場入りをして、試合スケジュールを確かめるとオズワルドは早速グスタフの控え室に押し掛けた。
グスタフはソファで長い足を持て余すように組んでおり、配布されている対戦表に視線を落としていた。
オズワルドがノックを二度鳴らしただけで部屋に足を踏み入れても、チラと視線を向けただけで出迎える。

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[Serene Bach 2.23R]