パンドラの切り札
2010/12/15 Wed
m25
朝から何をやっているんですか。と突っ込まずにはいられない巧妙さである。
「―――…本当に、何なのでしょうね」
ぽつりと呟いて、オズワルドは道が別れて久しい元弟子に思いを馳せる。
グスタフとは恋人などという甘ったるく柔らかな関係ではない。
単にお互い、都合が良いので利用しているだけの腐れ縁だ。
どだい、元々はグスタフが幼い頃に気まぐれで暗殺術の基礎だけを教えたことがあると言う程度の間柄でしかない。
それ以下でもなければそれ以上でもない。
再会してから何故か身体を重ねる関係になってしまっていたり、何故かお互いの家の鍵を持っていたりするが、それに深い意味は何もない。
本当はお互い、気づかないあたりで意味を持っているのかもしれないが、それを追及するにはオズワルドもグスタフもポーカーフェイスが上手過ぎた。
オズワルドは言わずもがな、グスタフのポーカーフェイスも完璧だった。
昨夜、肌を重ねたばかりだと言うのに、既に何を考えているか分からなくなっている。何がしたいかなどさっぱりわからない。
オズワルドは見つけ出した二枚のカードをすり合わせ、テーブルの上に広げられている五十枚のカードに視線を落とした。
「………足りないと困るのですが」
やれやれと言わんばかりに首を振って、一枚だけ足りないカードを掻き集め、胸に収める。
後一枚だけがどうしても見つからない、が、既にタイムリミットは目前まで迫っている。
やることは妙に手が込んでいるが、グスタフのことだ。
家の外には持ち出していないだろうと踏んでいたが、一枚だけ外へ持ち出したのかもしれないと、考えを改める。
仮にそうだとするなら、探すエリアは一気に拡大し、オズワルドの手に負えるものではない。
しかし―――、明確なルールなど決めていないが、グスタフがそんなことをするだろうかと言う先入観が思考にストップを掛ける。
鞄の中もクロゼットの中も机の中も探したけれど見つからない現実と、グスタフの性格が天秤の上で揺れている。
「………ヒントもなしとは、フェアではないですよ」
此処にはいない元凶に向かって独り言を漏らし、カードを仕舞い込んだスーツの上から手を添える。
せめて持ち出したかどうかのヒントくらいは欲しい、と言うかそれがなければ幾らオズワルドでも見つけられない。
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