カタストロフィ
2010/08/27 Fri
m25
闘う姿には見惚れ、名を呼ばれれば心が躍る。
それでも、オロチの隣にいるべきなのはイグのんただ一人。
オニワルドは眼を細めて、やんわりと口元に笑みを乗せる。
「……思い出し笑いか?」
此方を見もせずに表情を読んでくるオロチに、もう一度無音で笑い、
いいえ。と言葉をつづけた。
「幸せと言うのは、目に見えるものなのだと思いまして」
「……ああ」
少しだけ間を空けて口角を持ち上げるオロチの優しい顔に、オニワルドは更に笑みを深めた。
こんなにも丸くなってしまって、最初の硬質が削げて、透明度が増したオロチは確かに幸せそうだった。
そして、それを隣で見て居られる自分も、十分に幸せなのではないかと思う。
「お前もいるからな」
遠くから駆けてくる軽い音がする。
きっと勝利を誰より早く旦那に伝えたい幼くも可愛らしい少女のものだろう。
それに気がついたのか、オロチも顔を上げて、扉へ視線を向けながら立ち上がる。
オロチが動くたびに白い光が零れて、ほんの少し眩しくて目を細めた。
その瞬間、ふと思いついたようにオロチが振り返り、オニワルドへ和やかな声を掛けた。
「こんな幸せが続くと良い」
扉が勢いよく開かれる音を聞きながら、自分はなんて幸せな恋をしているのだろう。と、
オニワルドは瞳を伏せながら口元に笑みを浮かべた。
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