カタストロフィ
2010/08/27 Fri
m25
彼の実力は本物だ。事実、光の矢に狙われて、絶対的な干渉力に舌を巻いた。
だが、それが堪らなく楽しかったのだ。
それはオロチの方も同じだったようで、オニワルドとオロチとは友人になった。
お互い切磋琢磨する強敵(とも)と言う名の近しい存在に。
――…そう、ずっと友人だと思っていたのだ。
彼も、私も、掛け替えのない友人であると。
チラ、とモニターに視線を向ければ、そこにはオロチが愛する妻が楽しそうに樽を降らせていた。
彼女とオロチが出逢ったのは、オニワルドとオロチが出逢って暫く経った後。
大会の優勝者であるオロチと、同じ主催者により開催された大会で優勝したイグのんが、
どんなふうに知り合ったのか、詳しい経緯をオニワルドは知らない。
オニワルドが知っているのはイグのんに逢う度にどこか苦しそうに、切なそうにしていたオロチの姿だけだ。
恐らく初めて出逢ったときから強く惹かれていたのだろう。
ただ、人ではないオロチがそれを上手く理解できず、苦しんでいたのだ。
オロチは思念体であり、人ではない。人の持つ感情とは縁遠い存在であった。
だから、その頃は毎夜のように酒に付き合わされた。
詳しくも強くも無い癖に酒を浴びて、グダを巻き続けるオロチが、
段々と感情を理解し始めていたのは分かっていた。
このままいけば、イグのんとオロチは思いを通じ合わせるだろうとも思っていた。
ただ、目の前で袋小路に陥るオロチは痛ましくオニワルドの介抱は苦行だった。
色恋の経験が全くないわけではないが、友人の悩みは色恋以前の問題だ。
相手のイグのんも人間ではないせいか、傍目から見ていればお似合いだとしか見えなくても、
お互いに溜まっていく澱があったらしい。
しかし、二人に必要なのは時間だろうと考えていたオニワルドに出来ることなどたかが知れている。
例え、神と呼ばれても、やはり心だけは如何にもならないものなのだ。
生まれて初めて感じた己の感情に振り回されている彼を見ていると、
自分も左胸がやけに疼いたが、それは初めて出来た強敵(とも)への戸惑いだろうと結論付けていた。
だから、ある日オロチが自分を押し倒した時も、限界が来たのだとしか思わなかった。
あの感情の無い眼差しに明らかな焦燥が浮かんでいて、
持て余したものを何処にも吐き出せなかったかのように、オニワルドを手荒く抱いた。
[7] << [9] >>
-
-
<< 祭祀様は眠らない
保健室へようこそ >>
[0] [top]