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酔っ払いの作法

2010/11/26 Fri
m25



「……まぁ、酔っ払いの言う事ですからね」

考えれば考えるほどに惨めになる自分を誤魔化すように頭を振る。
シャツの前を掻き合わせ、冷たいフローリングの上に足を乗せると、少しだけ頭が冴えてきた。
もう、あまり深く考えるのは止めようと思いながらも、友情すらも壊れてしまったのだと自覚すると、無意識のうちに気が沈む。
覚束ない足取りで扉に向かい、ドアノブを握りこんだ手で身体を支えるようにしながら、扉を開ける。
年若いお嬢さんでもないのだし、数日経てば、心身の傷も癒えるだろう。
――――そうすれば全てを忘れれば良い。

しかし、扉を開けたオズワルドを出迎えたのは空虚なリビングでは無く、聞き慣れた声だった。

「………起きたのか。おはよう、オズワルド」
「………………………」

ドアノブを握りこむ指先に力が篭る。いっそ壊れそうなほど強く。
声はリビングとカウンターを挟んで続いているキッチンスペースからで、そこに立つ眩しいほどの金髪が振り返る。
下ろした前髪とラフな姿に一瞬、認識が遅れるが、振り向いたのは間違いなく諸悪の根源、ジェネラル閣下だった。
状況を把握出来ないオズワルドは、呆けた顔のまま、抑揚のない声で問いかけた。

「……何をしているんですか…?」
「目玉焼きを焼いている」
「スクランブルエッグの間違いではなく、ですか…?」
「…………確かに火を通し過ぎた。既に煎り卵だよ」

苦笑しながら片手に持つフライパンの中身を見せてくれる。
そこにはこんがりとキツネ…いや、タヌキ色に焼けた煎り卵があった。
視線を巡らせれば、テーブルの上にはトーストと簡単なサラダ、それにミルクティーが用意されていた。
オズワルドは不器用なジェネラルの態度に、じわりと胸の内に広がる暖かいものを感じた。
未だ呆けた思考は戻ってこないが、唇が僅かに撓んで、ぎこちない笑みが零れる。
目玉焼きも満足に焼けないくせに、オズワルドよりも早起きをして朝食を用意していたのだ。
一気に身体から力が抜けて、オズワルドは背中を壁に凭れるように預ける。
次の一言を考えながら、わざとらしく肩を竦めて見せて緩慢に腕を組んだ。

「………着替えてくれば、モーニングにありつけますかね?」

茶化すように声を掛ければ、ジェネラルに緊張が走り、フライパンをコンロに戻して咳払いを挟む。

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[Serene Bach 2.23R]