酔っ払いの作法
2010/11/26 Fri
m25
離れようと厚い胸板を押し返すが、酔っ払っているとは思えないくらい力強い。
ビクともしない胸板を拳で叩くと、顎を掴む指に力が掛けられ、口を強引にこじ開けられた。
酒に濡れた滑った舌が口腔を這い回り、わざとらしい水音を立てる。
「なっ、…閣下! ジェネラル!!」
顔を逸らし、思わぬ行動に大声をあげた。ジェネラルの体温は高く、口付けは酒の味がした。
まさかこんなに酒癖が悪いとは思わず、危険信号が脳内で鳴り響く。
酔って、むしろ加減がきかない最強の尖兵に叶うはずがない。
何とか奪うようなキスから逃げつつ声をあげ続ける。
「何を寝ぼけているんですか、閣下…っ! 私が誰だか分からないんですか!?」
「……分かっているさ、オズワルドだろう」
「ああ…! 起きて…! 何はともあれ起きてください…!」
会話すらまともに成立しないらしい。名前を口にしてはいるが絶望的なまでにまともではない。
それでも抵抗しようと細身の体をよじり、足を跳ね上げさせる。
しかしジェネラルはまるで意に介さず、オズワルドの唇を塞いだまま身を反転させて、痩躯を押し倒した。
視界がひっくり返り、ジェネラルの顔を下から見上げる形になる。
オズワルドはその状況にサァ…っと血の気が引く音を聞いた。
誰と勘違いしているのかは知らないが、確実に貞操の危機だ。
やんわりと視界を揺らしていた酔いなどとうに吹き飛び、冷や汗が頬を伝う。
「閣下ともあろう方がこんなやんちゃを…っっ!?」
何とか説得を試みても頬をゆっくりと舐めあげられて首の裏に鳥肌が立つ。
まるで言う事を聞いてくれないジェネラルは非常に始末が悪かった。
「いい加減に…っ、―――ッ!」
説得の声に怒気を混ぜてみるも、不意にジェネラルの大きな掌がシャツの裾から忍び込んで、無防備な素足を撫でた。
必要最低限鍛えてはいるが、それだけの老いた男の足だ、触って楽しいはずがない。
それでもジェネラルの手は腿を辿ってなで上げ、足の付け根に向かう。
触っても気付かないジェネラルを正気に戻すすべなどあるのだろうかと気が遠くなる。
いっそ気絶してしまおうかと楽な方へ思考が逃げかけた。
無論、世の中そんなに上手くいくはずもなく、ジェネラルの手がオズワルドの中心を握りこむと同時に、逃避しかけていた現実が音速で戻ってきた。
[7] << [9] >>
-
-
<< Cry Me to the Moon
Macademia Nut >>
[0] [top]