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秘色の糸

2010/11/10 Wed
m25


名残惜しげにクローゼットの戸に手を掛けると、不意に寝室の扉が開いた。

「オズワルド、」

ばたん。

声を掛けられた瞬間、オズワルドは咄嗟にクローゼットの戸を閉めた。
その音は静かな寝室に大きく響き、ジェネラルの目が丸くなる。
オズワルドは露骨な所作を誤魔化すように笑みを浮かべると、首を傾げて見せた。

「何でしょう、閣下?」
「…バケットナイフが見当たらないんだが」
「ああ、仕舞う場所を変えましたからね」

言って、ジェネラルの肩を軽く押してリビングへと進もうと試みる。
オズワルドとしては、リビングに行くというよりも、寝室から距離を取りたかった。
けれど、ジェネラルはそれを良しとせず、オズワルドの細い顎を手に取って視線を合わせてきた。
青い瞳がオズワルドの瞳を覗き込んでくると、心臓が跳ねる。

「…閣下?」
「何を隠した?」
「クローゼットに閣下のコートを仕舞っただけですが…?」
「ほう?」

何かある、と確信を持って問うてくる青い瞳から、何のことだか分からない、という体裁を作って逃げを打つ。
これで騙せた例はないのだが、騙されてくれたことなら何度かあった。
勝率の低い綱渡りだと自覚しながら、ポーカーフェイスを駆使して全力で知らばっくれる。

「食事が冷めてしまいますよ」
「それは困るな」
「でしょう?なら…」
「けれど、このまま疑問を残しておくのも性に合わん」

つい、と、青い瞳が細くなる。どうやら、今回は騙されてくれる気はないらしい。
オズワルドは心外だと言わんばかりに、眉間に皺を寄せて見せた。

「私の言葉が信用ならないとでも仰いますか」
「貴方を信頼しているのと同じくらい、自分の感覚も信用しているだけだ」
「閣下、」

尚も不毛な口論を続けようとするオズワルドの唇に、ジェネラルの指が当る。
言葉を封じるように人差し指を立てられ、思わずオズワルドの言葉が詰まる。
恨めしそうに見上げるオズワルドの額に取り成すようにキスを落とすと、ジェネラルが寝室に足を踏み入れた。
止めなければお互いに気まずい思いをすると理解していながら、結局オズワルドはジェネラルに負けてしまう。
ジェネラルの意向や意思を跳ね除けることが如何しても出来ないのは、惚れた弱みだと額を押さえた。

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[Serene Bach 2.23R]