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秘色の糸

2010/11/10 Wed
m25


鍛えられた体躯を持つジェネラルは体温が高いものの、寒いのが苦手ならば辛い日だろう。
しかも、早朝からトーナメントへの出場が決まっている。
あと小一時間もしたら出かけなければならない片割れを気遣うと、短い沈黙の後、首肯された。
その様子が酷く可愛らしく、片手で口元を隠して笑気を漏らす。

『手袋も冬用を出しておきますね』
『……すまない』

照れくさそうに言ったジェネラルに、オズワルドは温かい紅茶を入れて笑みを深めた。
その後、朝食を済ませ、オズワルドが用意したコートと手袋を装備したジェネラルは、足早に会場へと向かって行った。
寒そうな背中を見送りながら、完璧な恋人に対するささやかなサプライズは立案され、オズワルドの中で決行された。
仕事は休日、トーナメントの出場もなく、何の予定も用事もないオズワルドは、ジェネラルの姿が見えなくなるとすぐさまコートを羽織り、家を出た。
北国出身のオズワルドには見慣れて、なおかつ身近なものを買い込むと、そのまま真っ直ぐに帰宅して、今へと至る。

「―――意外と覚えているものですね…」

呟きは、紅茶の湯気を僅かに揺らして室内へと消える。
オズワルドが、毛糸を長い指へと掛けて、慣れた手つきで編んでいるのはマフラーだった。
趣味の一環としてやってた時期もあるものの、最近はボトルシップの方へ興味が移ってしまい、針と毛糸を弄るのは久しぶりだった。
けれど、手つきはそんなタイムラグを感じさせず、何の迷いもなく毛糸をマフラーへと変えていく。
明るい色合いのグレーの毛糸は、絶妙な力加減で編まれていて見た目にも温かさが伝わってくるようだ。
最初は代名詞とも言える緑にしようかとも思ったのだが、色が埋もれてしまうのは残念なので却下した。
次いで候補として上がったのは黒だが、どうにも色が重過ぎる。
熟考の果てに買ってきた毛糸は、温かみのある明るいグレー。
軍の支給品であるアーミーコートを羽織るジェネラルにも、きっと似合う色だと確信を持って選び取った。

「……コートと手袋だけでは、寒いですしね」

ふふ、と小さく笑みを零して、オズワルドは二つ目の毛糸玉を手に取った。
一目見て手作りだと分かるものでは面白くないし、何よりも軍で上位に位置するジェネラルに贈るのも憚られる。

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[Serene Bach 2.23R]