Sleeping Baby
2010/11/01 Mon
m25
「眠いのは分かりますが、一度起きてください」
「……………、」
グスタフの重みと、冷たい体温がオズワルドに伝わる。
眠っても体温が中々上がらないのは種族所以の特性だろう。
グスタフは薄く瞳を開き、眠たそうな眼差しでオズワルドの瞳を覗きこむ。
一瞬だけ、二人の間で沈黙が流れ、オズワルドが口を開くより先にグスタフが呟いた。
「………なんだ、貴様か」
実の師匠を貴様扱いする弟子を叱れないのは、オズワルドの鷹揚さではなくただの身内贔屓だった。
今まで以上にずっしりとオズワルドの身体に体重を預け、指先でスーツを手繰って鼻先を埋める。
「もう少し寝かせろ」
不遜な物言いは他人に言うよりもう少し強くて、対立者に言うよりもう少し柔らかい。
その癖、抱き寄せる腕は力強く、子供らしくない。
オズワルドは中腰のまま、眠りに落ちていくグスタフの横顔を見て小さく喉を振わせた。
「あれだけ、しっかりと教えたのに、人気のある場所で眠れるなんて弟子失格ですね」
「知った口を聞かないでもらおうか。……もう、子供でもなければ弟子でもない」
語尾に混ざる苛立ちを正確に感じ取り、今度こそオズワルドは隠さずに笑みを漏らした。
グスタフの片眉がピクリと跳ねた気がしたが、それ以上の追従はなかった。
人の気配に敏感なくせに、それがオズワルドのものと分かれば大人しく腕に落ち、憎まれ口を叩いて牙を剥く。
警戒しながら安全圏だと判断するそのグスタフの機微は、オズワルドには分からない。
(けれど、ああ―――…、)
やはり弟子など取るものではないな、と吐息の笑みを零す。
勝手に飛び出して、勝手に甘えて、親の心子知らずと言うが正にその通りだ。
既に師弟の関係でもないのに、この我儘で尊大で言う事を聞かない男が、世界中で誰より可愛いなんて、口が裂けても言えるわけがない。
やはり、弟子など取るものではない、と何年も前の己の行いを悔いながら、オズワルドはグスタフの身体が冷えないように強く強く抱きしめた。
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