祭祀様は甘くない
2010/10/27 Wed
m25
硬質の何の熱もない靴先に詰られても、それをゲーニッツのものだと認識してしまうと込み上げて来る疼きが止められない。
ク、と靴裏で浅く踏まれると自分でもそれと分かるほどに熱が集まって滾る。
てっきり、口での奉仕で終わりだと思っていたグスタフはあからさまな接触に激しく狼狽した。
「さ…っ、祭祀様…!?」
「私だけと言うのも気が引けますからね、貴方もしたければどうぞ?」
「……………、…………は?」
奉仕だけで終わらないのも見当違いだったが、それ以上に続けられた言葉が理解できなかった。
静かに足を引いて、グスタフの下肢から離れた靴先はグスタフの目の前でゆっくりと宙を舞い、長い脚を組む。
間抜けな声を出したまま、ゲーニッツの顔を見ているも、その顔は意味深に笑みを浮かべるだけで、助け舟は全て欠航のようだった。
「やりたくなければ、やらなくても良いのですよ」
唆す声がグスタフの耳を擽る。
そこでようやく、グスタフは自分で慰めろと言われているのだと理解した。
いや、理解自体はなんとなくしていたが、自覚してしまうと眦から耳がカッと赤く染まる。
確かに口淫を行い、ゲーニッツの靴裏に弄ばれた下肢は緩やかな熱を持ってしまっている。
しかし出来れば、この場は納めたかった。
神聖なる上司の職場で、そんな不埒な姿を晒すなど耐え難い。
ゲーニッツ自身の欲を満たすなら未だしも、グスタフが自慰に耽るなど恐れ多いにも程がある。
グスタフがゲーニッツを崇拝するように、信仰も忠信も全て一族の長であるオロチに捧げているのはゲーニッツも同じで、
だからこそ、神の家たる教会で猥褻な行為をしても何の感傷も抱かないし、抱けない。
けれど、ゲーニッツの職場であると認識しているグスタフにとっては別の意味を持ち、教会を自らの欲気で汚すことなど考えられなかった。
「―――…おや、やらないのですか?」
「……………祭、祀様…」
それでも唆してくるゲーニッツの甘い誘惑に心臓がざわつく。
まるで聖人然として笑うゲーニッツの微笑みの裏には、獲物を嬲って遊ぶ獣の本性が見える。
そして、グスタフが罠に掛かるのを心待ちにしているのだ。
無論、この場でぴしゃりと断り、身を引いて職場の神性と我が身を守ることもできる。
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