祭祀様は甘くない
2010/10/27 Wed
m25
料理と違い、分量や手順を一つでも間違えれば味を損ない失敗してしまうのがお菓子作りの醍醐味であり難関である。
作業そのものにはどんな情熱も沸かなかったが、敬愛する祭祀様から譲り受けた仕事である以上、グスタフには手を抜く気は一切なかった。
生地を型へと入れ終わると、オーブンが図ったように鳴いて、お菓子の完成を告げた。
オーブンを開き、慎重に天板を取り出すと、代わりに今用意したばかりの天板を入れてスイッチを押す。
取り出した天板からお菓子をケーキクーラーの上に並べ、荒熱を取る。
「…これだけ作ればとりあえずは良い、か…」
同じことを何度か繰り返したことにより、作業台の上には所狭しとお菓子が並べられている。
先ほどオーブンに入れたのを最後にしよう、とグスタフはボウルをシンクへと移動させた。
軽く手を洗うと、次は包装作業だ。ある意味、お菓子作りよりも数段こちらの方が手間で、神経を使う。
透明なセロファンを束ごと取出し、お菓子を形が崩れないよう細心の注意を払って一つ一つ入れていく。
口を閉じる前に、もう一度熱が取れたかを確認し、色とりどりのリボンを結び、ハロウィンに合わせたシールを貼ってようやく完成する。
元来、手先の頗る器用なグスタフが、妥協を加えずに丁寧に作り上げたお菓子は整然とした外観を保ち、まるで既製品のような完璧さを誇っていた。
しかし、ラッピングを待つお菓子も、未だ熱を持ち冷えるのを待つお菓子も、今まさにオーブンの中で焼かれているお菓子もまだまだ大量にある。
グスタフはずっしりと重くなった肩と腕を持て余しながらも、呼気の一つで気合を入れ直して、作業に没頭していった。
日も暮れ、夜の匂いがキッチンを満たしていた甘い香りを払拭すると、ようやくグスタフは肩から力を抜いた。
グスタフの働きによって作られた大量のマドレーヌはトーナメントから帰宅したゲーニッツとレアスの手によって教会へと運ばれていき、ここには一つも残されていない。
正直、必要な個数を聞いた瞬間は作りきれるかどうか不安ではあったが、なんとか予定時間までには完成することが出来て心中で安堵の息を吐く。
流石に無関係者であるグスタフが、配布の手伝いまでするのは出過ぎた真似と判断して、催事中はキッチンの掃除に終始していた。
幸い週末であったから、グスタフの仕事を圧迫することなくゲーニッツの手伝いが出来る。
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