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Little by little

2010/10/26 Tue
m25



ヨハンは語尾を濁す事を許さず、顎をしゃくって続きを促す。
ゆったりと組んでいた足を組みかえて、グスタフの続きを待った。
グスタフは一度足元に視線を落としたが、言い淀む事こそ不敬であると結論付け、再び口を開く。

「…………私は、」

それはグスタフが自分を呪いながらも、毎夜、夢にみた願望だった。
ゲーニッツの隣に居られると言うだけで天にも昇る心地だったのに、それ以上を望む己の愚かしさだった。
そっと枕元に置いて積み重ねられていく言葉ばかりの交換日記だけではダメだったのか、なぜその先を望んでしまうのか。

「……祭祀様に、」

これではまるで祭祀様が――引いてはオロチ一族である己も――忌み嫌う人間どもと同じではないか。
最上にあって、なお貪欲になる。求めても求めても、求め足りない感情を無視できない。
心に鍵を掛け、欲の蓋を押さえつけ、ひた隠しにしてみても、それでも想わずには居られないのだ。

「……口付けたい」

溜息のように、独り言のように、吐き出された言葉はゆっくりと床に落ちた。
フン、とそれを一蹴するようにヨハンは鼻を慣らして、片目を歪める。
歪めた視線をツイ、と固く閉ざされた扉に向けた。

「――…そうか、……では、」

ヨハンはおもむろに足を組み換え、頬杖を付きながら、空の片腕を伸ばし、
指先から掌に掛けて、意識を高めて青白い黒龍の力を集め出す。
突然の行動にグスタフが疑問の色を抱えるより、早くヨハンは高濃度な力を解き放った。

「シャドウ・ドラゴン!」
「!?」

逞しい声と共に光が走り、凝縮された力が真っ直ぐ扉へ向かっていく。
グスタフは驚くよりも早く、扉に視線が向かう。
力がぶつかり、扉が木端微塵に砕ける瞬間、良く知る気配を感じたのだ。
反射的に足を踏み出して、近づこうとするも、それより早くヒュ、と小さく風をきる音がして、
シャドウドラゴンを高速移動技であるひょうがでかわした青の牧師が室内へ着地した。

「……ッ! 祭祀様!? お怪我はありませんか?――…貴様、如何いう心算だッ!」

さしたるダメージを受けたようにも見えないゲーニッツは肩を軽く払いながら起きあがる。
けれど、ゲーニッツを慮るグスタフの声は、同時にヨハンの暴挙へ対する怒号へとなった。

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祭祀様は甘くない >>
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[Serene Bach 2.23R]