Little by little
2010/10/26 Tue
m25
我ながら何と言う稚拙な恋だと思わざるを得ないが、相手が海より深く敬愛している祭祀様が相手なのだ。
今までの戯れのように無理やり押し進め、力に任せて奪って良いものではない。
そんな葛藤を知ってか知らずか、ヨハンはグスタフの用意した手製クッキーに手を伸ばし口に放り込む。
「しかしな、」
さくさくと歯触りの良いクッキーは恐らく渦中の牧師のために研究したのだろう。
ほんのりと甘く、後を引かない繊細な味わいが癖になる。
一つ食べ終えると、ヨハンは次の言葉を続けながらもう一つ手に取った。
「付き合い始めて何カ月目だ? キスの一つくらいすませんと奴も不安になるだろう」
私にとっては如何でも良いことだが。とチームメイト甲斐の無い言葉を此処にいないゲーニッツに向かって吐き出す。
そもそもグスタフが話を聞いてくれ、と控え室に押し掛けてきたのを了承したのもティーセットを持参したからだ。
で、なければ、人の恋話などヨハンにとっては酷く興味の湧かない話題であったし、
たまたま組む機会が多いと言うだけで、ゲーニッツとは偶に酒を飲み交わす程度の仲でしかない。
「………二年だ」
「……ん?」
「祭祀様と付き合って二年だと言っている」
ヨハンは思わず、口に含んだ茶を二枚目のクッキー諸共噴き出しそうになった。
寧ろ噴き出さなかったことが不思議なくらいの衝撃だった。
驚愕がヨハンの顔を染め上げて、直後にラスボスにあるまじき憐れみと同情が込み上げてくる。
無論、相談に乗ったことに対する後悔がありありと浮かんでいた。
「そんな顔をするな…!どだい、そうでなければ貴様に相談などせん!」
「…………奴への愛は本物だろうが、流石にそれは引くぞ」
至極一般的な突っ込みを入れるも、グスタフは射殺さんばかりの視線で返してくる。
視線で人が殺せるなら、ヨハンは幾度グスタフに殺されているのだろうかと思う。
「祭祀様の唇に触れるなど、そんな恐れ多い事が出来る訳ないだろう!」
グスタフは大声を上げるが、ヨハンはうんざりと眉を潜めてみせる。
四十路も超えた中年に三十路もこえた中年がキス出来ないなど、笑い話にもならない。
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祭祀様は甘くない >>
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