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深夜過ぎたら逢いましょう

2010/10/21 Thu
m25


ベッドヘッドに背を預け、静けさに満たされる寝室に険を孕んだ視線を向ける。
いつもより早い時間帯ではあるが、意識は完全に覚醒し、冷たい朝の空気を肺に満たす。

「―――…」

無言のまま自らの身体を見やり、次いでシーツを撫ぜる。
ゲーニッツの身体を包む夜着は昨夜寝入ったままの状態を保ち、シーツも寝乱れているが何の痕跡も残っていない。
無論、身体にも異変は感じられず、ゲーニッツは緩々と息をついた。
心中で昨夜のあれは夢だったのだ。と何度も呟くも、卑猥な光景が脳裏に焼きついてその納得を飲み込めない。
もやもやと淀む心中を持て余し、昨夜に戒められていた手を撫でていると、静かに寝室の扉が叩かれた。

「―――どうぞ」

一瞬すくんでしまった自分を嗜めるように低い声で入室を許せば、躊躇うような逡巡の後、扉が開かれる。
常の黒いスーツを纏ったグスタフが、何処か困惑しながら寝室へと足を踏み入れた。
座位を保ちながら、顔だけを扉へと向けるゲーニッツに、手入れされた黒髪を揺らして頭を下げる。

「おはよう御座います、祭祀様」
「……ええ」
「………何処かお加減が悪いのでしょうか?」
「いえ?」

心配顔のグスタフの問いに、感情の篭らない瞳で切り捨てると、困ったように眉が下がった。
確かに、いつもならまだ眠りの海を漂っているゲーニッツがしっかりと覚醒していれば心配もするだろう。
そうは思うものの、その言葉に何か裏があるのではないかと邪推するのは昨夜のことが記憶に残っているからだ。
だから、視線に咎めるような色を乗せて口を開いた。

「………起きていては可笑しいですか?」
「いえ、決して、そのようなことは…」

慌てたように否定の言葉を紡ぐグスタフは、常の部下の顔と何ら変わりない。
何か不敬をしただろうか、何か気に障ることをしただろうか、と主人に叱られた忠犬さながらに困惑を滲ませている姿に、ゲーニッツは小さく息を吐いた。
身体に何の痕跡も残っていない上に、グスタフからも昨夜の行為を示唆するような変化は微塵もない。
自分が酷く不条理にグスタフに当たっている気がして、ゲーニッツは眉間に皺を寄せた。
それにさえ、傷ついたように目を細めるグスタフが、一層居た堪れなかった。


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[Serene Bach 2.23R]