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サンバ・テンペラード

2010/10/14 Thu
m25



今で穏やかだった夜風が突風となって雲を動かし、辺りを漆黒の闇へと転じさせたのだ。

夜風で月光が遮られ、オズワルドの姿も瞬きの間で闇に飲まれる。
今まで比較的明るい場所にいたオズワルドの目は、その闇に視界が慣れるまで数瞬の間を要した。
無論、その状況を銀糸が逃すはずもなく、攻勢は続く。
闇に慣れていない視界では避け続けることは難しいが、銀糸の狙う場所は急所ばかりで、
その場所に気を張っていれば不可能ではない。
僅かの間さえ持ちこたえれば、雲が風に浚われて、また女帝がオズワルドに微笑みかけるだろう。
喉笛を銀糸が狙った気配がして、オズワルドは軽いステップで後方に退いた。

「――――ッ」

途端。
右足に痛烈な痛みが走り、オズワルドの顔が歪む。
咄嗟に懐に仕舞ったままだったカードを指で挟み、足を捕らえた銀糸を切り刻む。
それは、オズワルドを同じ場所に数秒とはいえ留まらせることになった。
今まで縦横無尽に闇を切り裂いていた銀糸が、無慈悲にオズワルドに襲い掛かる。

「……これは…中々…ッ」

カードを駆使して迎撃するも、未だ闇に視界は慣れない。
気配だけを辿って切り刻むが、そもそも何の感情も伴わない武器の攻撃だ。
僅かな音だけでしかその存在を認識できず、捕らえ損ねた銀糸がオズワルドのスーツに赤い模様を刻んだ。
体勢を立て直そうと大きく後ろに跳ぶと、唐突に雲が晴れて月が辺りを照らす。

その月光に、歪な影が映る。

オズワルドが身構えるより早く。
まるで銀の雨のように降り注いだ銀糸が、オズワルドの身体を地面へと串刺した。






聞くに堪えない無様な喘息を聞きながら、オズワルドは仰向けになって地面に転がっていた。
視線の先には夜の女帝がその姿を尊大に見下ろしている。
いくつの屍をその目の前に晒してきたか自覚のあるオズワルドは苦笑に似た笑みを顔に張り付かせる。
そして、笑みそのままに、未だ姿を現せない相手に向かって口を開いた。

「―――大きくなりましたねぇ…」

呟いた声は自分で思っていた以上にか細く、自らの老いを否が応にも自覚する。
喉に血が溜まり、随分と話しづらい。

「試験は合格ですよ。一族とやらに身を捧げるのも、人を殺し尽くすのも貴方の自由。好きにおやりなさい」

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[Serene Bach 2.23R]