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温泉郷へようこそ

2010/10/13 Wed
m25


―――無論、ヨハンから見ても全然羨ましくないが。
何はともあれ、ルガールを放っておくわけにはいかない。
畳に手を付いて身体を起こすと、再びタイラントに向けて構えを取る。
今度はジルやゾンビたちの注意が全てミヅキに向いているおかげで確実に仕留められる。

「シャドウドラゴ……」
「ここですか!!」
「うわぁああああああ!?」

右手に溜めていた黒龍の気が風により四散して、ヨハンは再び前のめりにつんのめった。
数歩、踏鞴をふんだだけで持ちこたえたものの、追跡者に追いつかれて既に引け腰になっていた。

「よりにもよって、あの男の部屋に逃げ込むとは、よほど我が身が可愛くないようですね。ヨハン!」
「いや、我が身が可愛いから逃げたんだろうが!」

避けたよのかぜがゾンビたちの群れに命中した気がしたが、それどころではなかった。
むしろ、よのかぜにより自由になれたらしいルガールが見えたので、ヨハンは目の前のゲーニッツに集中する。
「気分はゲジマユ!」とかジルの不穏な声が聞こえたが、ルガールとミヅキがいれば大丈夫だろう、と自分を無理やり納得させた。

「大体、自分の部屋に女性を何人も連れ込む男の何処が良いのですか!?」
「激しく誤解だ!この状況を見てわからんのか!?ルガールは被害者だろう!」
「……まさか、女性が夜這いとは……恥じらいがないですね」
「お前が言うな、激しくお前が言うな!」

大事なことなので二度言って突っ込むと、ゲーニッツの縦長の瞳孔がきらりと光る。
反射的にヒッと喉を鳴らすが、いきなり襲い掛かってくるような真似はしなかった。
それでもルガールの方にも気を配って警戒しているのが分かる。
ヨハンもその空気に圧されて、ジリッ、と素足で畳をにじり、逃げ道を模索しはじめた。
出来ればルガールの加勢に向かいたいが、ここでゲーニッツがジル側に付かれるのは避けたい。
ゲジマユ状態のタッグなど嫌過ぎる。ヨハンはそう考えると素早く方向転換して、弾かれたように再び走り出した。
去り際にルガールへアイコンタクトを送ったが、あちらも激戦らしく視線が交わることはなかった。
心の中で盛大にエールを送り、その場から離れようとする。
けれど、その行為はゲーニッツの逆鱗に触れたらしい、すぐさまあちらもひょうがで追いかけてきた。

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[Serene Bach 2.23R]