温泉郷へようこそ
2010/10/13 Wed
m25
「社長とこれから言い逃れできない既成事実をつくるところなんだから、邪魔しないでくれる!?」
「止さないか、ジルくん!というかレディがそんなことを馬乗りになりながら言うものじゃない!」
「馬乗りじゃなければ、私の求婚を受け入れてくれんですか!社長!」
「相変わらず、すっごいポジティブ!? た、助けたほうが良いんだよな…?」
「当たり前だ!タイラントさえなんとかしれくれれば、後は脱出できる!」
どうやらタイラントの体重が手足を押さえつけているせいでジルを振りほどけないらしい。
実力者であるルガールを無理やり押し倒し、既成事実を作ってしまおうとするアクティブさにどこか関心しながら、
ヨハンは貞操の危機である友人を助けるため、群がってくるゾンビごと吹き飛ばそうと構えを取った。
「よ、よし。じゃあ、シャドウドラ……」
「ラキーーーー!!」
「ギャァアアアア!?」
腰を引いたところで後ろから思い切り突き飛ばされ、畳の上に前のめりで倒れこむ。
倒れたヨハンを乗り越えて御幣を振り回す羅将ミヅキがルガールの前に躍り出でた。
白い紙飾りで空を切り、ルガールの上に乗るジルに向かい御幣をビシッと突き出した。
「き、貴様っ!こんな夜更けにルガール殿の上でなにをしておるのじゃ!」
「見て分からないの!?夜這いに決まっているじゃない!」
「ジルくん、開き直るな。そしてそろそろ退いてくれ!」
「退いたら逃げるじゃないですか。こんな絶好のチャンス、もうないかもしれないのに!」
「何が絶好のチャンスじゃ!貴様、そこに名折れ!」
「貴方こそ、こんな夜更けに社長の部屋に何のようなの!?」
「う……、そ、それは、昼間に世話になったし、礼の一つも言うておかねばならんと…ってルガール殿の服を脱がせようとするでない!」
図星を刺されたミズキは頬を赤らめながら、もじもじと少女のように言い訳を口にするもジルの大胆な行動に怒声を上げる。
倒れたままのヨハンは女性二人に迫られるルガールを見ながら、やっぱりモテるんだなぁ…。と妙な納得をしていた。
ルガールだけは疲れたように口角を引きつらせて蕎麦殻の枕に頬を沈めている。どうやら持病の胃痛に苛められているらしい。
突拍子のない行動と言動にさえ目を瞑れば、美女二人に迫られるというのは悪い話ではないはずなのに。
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