ラウンド・コールは高らかに
2010/10/09 Sat
m25
性格や気質が、いくら気弱であろうがヘタレであろうが、
己に害なす存在に対してまでその姿を見せる必要も価値もないだろうに。
「嫌ですよ」
誰彼かまわず、あるがままの状態で居て欲しくない。
理不尽といわれようが、不愉快になってしまうではないか。
「やめろ……っ」
決死の覚悟で言った言葉を一刀両断されたヨハンは、頬を嬲る手を強く掴む。
眉を顰め、口を引き結び、睨みつける矜持の高さは、なるほど、
黒龍を奉じる教祖と思えなくはないが、涙を零した状態では威厳など何処にもない。
「………ヨハン」
むしろ、至近距離で、手を掴み、真っ直ぐに見つめるこの状態は危険だ。
主に、ヨハンの身が、という意味合いで。
ゲーニッツは一瞬の沈黙の後、ヨハンの顔を覗きこみ。
ヨハンの唇を舌で舐め上げた。
「なっ!!」
余りのことにゲーニッツの手を掴む力が緩む。
その気を逃さず、頬を嬲る手を顎に、もう片方は腰に回し、ヨハンの逃げ道を封鎖する。
狼狽するヨハンを眼だけで笑い、無防備な唇をもう一度奪う。
角度を変え、舌を入れ、歯列をなぞり、咥内の酸素を根こそぎ奪う。
眼も閉じず見つめるゲーニッツの視線に、ヨハンは強く眼を閉じることで拒絶し、
渾身の力でゲーニッツの肩を押すことで抵抗した。
それでも、ゲーニッツは貪ることを止めない。
「……ぅ………んっ…………やめっ………っ………」
合間に言葉を紡ぐが、声の弱さに羞恥が募る。
恐怖ではない涙がヨハンの眦に光るのを眺めながら、ゲーニッツはヨハンの味を堪能する。
顎を掴んでいた手が滑り、ヨハンの服にかかる。
それに気付いたヨハンの目が驚愕で開かれると、口付けたままの距離で、視線がぶつかった。
羞恥と恐怖と未知の何かへの不安で、ヨハンが硬直すると、散々好き勝手した唇が音を立てて離れる。
互いの呼吸さえ感じられるほどの距離。
「ヨハン、私は『ピンポンパンポーン』
ゲーニッツの声に被さる館内放送。思わず二人は息を呑んだ。
『チームのお呼び出しを申し上げます。お別れですチーム、お別れですチーム、至急Cブロック会場へお越しください。午後のトーナメントが開始されます』
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