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だんだん強く

2010/10/08 Fri
m25


クライアントが消滅しても尚、ターゲットを狙うほど愚直ではなかったし、
現実的なことを言えば、前金は既に口座に振り込まれている。
更に云えば、自分にジェネラルが殺せるとは到底思えなかった。
実力の面から見ても、――――心情的な面から見ても。

「知っていたのに、今日も真っ向から投げてくださるとは流石、閣下ですね」
「…………」

珍しくジェネラルが黙って紅茶を啜った。
クライアントと音信不通になってから今日で三日、おそらく依頼は立ち消えたのだろうと想像が付いたが、
オズワルドはそれでもジェネラルの元へと足を運んだ。
ジェネラルも当然のように、暗殺者を撃退し、今こうして茶を共にしている。
元々歪だったティータイムに更なる歪みが生まれた気がした。
押し黙ってしまったジェネラルを一度見やってから、隠すように口腔で深呼吸をし、
静かに加速し始める心臓に理性と言う名の重石を落とす。
あらかじめ用意してきた言葉を、声が震えぬように細心の注意を払いながら紡いだ。

「閣下に会いに来た、と言うのが一番近いかもしれません」

事も無げに告げた後は、カップで口元を隠す。
視線はジェネラルの反応を伺うように盗み見る形になる。
ジェネラルは意外そうな顔を刹那だけ露わにして、ふむ。と声を出しながら顎を撫でた。

「……貴方にしては分かりやすいブラフだと笑うべきかな?」
「いいえ、私が切ったのはジョーカーのつもりですから」

これもしれっと言ってみせる。
もしや、本当にブラフだと思われていたりはしないだろうが、
こんな出来損ないのポーカーフェイスを無理やり作るのは何年ぶりだろうか。
言葉以上の勇気を以ってジェネラルに差し出したのは確かにオズワルドのジョーカー(切り札)だった。
自分の手がどれだけ赤いか知りながらも、傷だらけの手に触れたくなったのだ。
傷だらけの指を包み込み、ジェネラルの齎してくれる体温と同じものを返したいと。
ジェネラルがカップをソーサーに置いて、腕を組む。
何事か考えるように顎を引いて、小さい唸り声を上げたので、思わず冗談ですよ。と喉まで出かける。
例え踏み込まずとも、ターゲットと暗殺者としての関係が消えた現状、冗談にしても何も変わらない。
それでも、ジェネラルを悩ませているのだと自覚すれば唇の裏を噛み切りたくなった。

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[Serene Bach 2.23R]