だんだん強く
2010/10/08 Fri
m25
ダージリンに、アッサム、ニルギリにセイロン、アールグレイ、手を変え、品を変え、
暗殺者とターゲットの不思議な関係を保ったまま、ティータイムを楽しんだ。
それが可笑しいことだとは理解していたが、だんだんと居心地が良くなってくるのだから現金なものだった。
数十分前に殺そうとした相手と、同じ席で紅茶を飲むことに徐々に慣れていく。
会話らしい会話は交わさなかったが、お互いに相手を牽制していると言うよりも、
言葉を持ち入らずに、穏やかな時間を共有できると言う理由の方が大きかった。
慣れ親しんでいくというよりも、絆されていく感覚に近い。
「ところで、オズワルド」
「―――…はい?」
不意に声をかけられて、ウバのメンソール・フレーバーを飲み込んでから応じた。
ゴールデン・リングを湛えるカップをソーサーに戻し、オズワルドは軽く首を捻ってみせる。
毎度ながら一戦やらかした後なのでオズワルドのスーツは若干皺が寄っていたが、
回数を重ねるごとに致命傷も出血も減り、一見、気の置けない友人同士にも見えた。
サングラスの買い替え記録も七回で止まったままだ。
オズワルドが促すと、ジェネラルは言葉を選ぶような沈黙を挟んでから、
疑問の色を隠さずに顔に乗せ、青い瞳にオズワルドを映した。
「……何故、今日も来たのだろうか」
ジェネラルの言葉に、特に驚きもしなかった。
ソーサーからカップを持ち上げ、花のように甘い香気で喉を潤し、何食わぬ顔で頭を振る。
「………ご存知でしたか」
ジェネラルが知らないはずはないと思ってはいた。
つい三日前、ジェネラル暗殺をオズワルドに依頼したクライアントの組織が壊滅したのだ。
無論、ジェネラルの属する軍部の仕業だった。
元から危険因子として視野に入れていたのだろう手際の良さで、残党も残らず壊滅させていた。
本国直下である武装部隊が丁寧に食い殺したのだ、おかげでオズワルドへの依頼も宙ぶらりんとなった。
いや、むしろ、軍部に睨まれていたからこそ、背水の陣としてオズワルドへ暗殺を依頼してきたのかもしれない。
その辺りの事情はオズワルドのあずかり知るところではない、目の前にいる尖兵の方が詳しいだろう。
だが、そんなことに然したる興味は湧かない。
[7] << [9] >>
-
-
<< 貴方と視線の争奪戦
ラウンド・コールは高らかに >>
[0] [top]