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だんだん強く

2010/10/08 Fri
m25


寝台から腰を上げたのか、スプリングが僅かに軋む音色が室内に響く。
静かな足音が鼓膜を数度打ち、ジェネラルの声がすぐ傍から聞こえた。

「オズ、」

それは意外にも、さながら十年来の友人へ呼びかけるような気安い声色だった。
落としていた瞼を重たそうに少しだけ持ち上げると、つるりとした材質の天井が視界に入る。
その前にはジェネラルの姿があった。
ジェネラルはオズワルドの傍らに立っていて、殺意は何時もどおり感じられない。
そういえば、最初に負けときから、ジェネラルに対して恐怖というものを感じていなかったことに気付く。
自嘲気味に片眉を震わせて、続きを促すようにジェネラルの青い瞳を覗き込んだ。

「……今日はカップを二つ用意してある。起きられたら、一緒に如何だね?」
「…………」

返答に窮する。
不快感からではない、胸が締め付けられるほど痛んだからだ。
せめてもの矜持で眉間に皺を刻んでみるも、自分の顔を想像すれば、
今にも泣きそうな、情けない顔をしているのではないだろうかと思う。

「……私は暗殺者ですが」
「殺人鬼ではないだろう、目を見れば分かる。君は無害だ」
「命を狙っている相手に、そう言われると、ちょっと傷つくんですがねぇ…」

茶化すように相槌を打つが、語尾が微かに震えてしまった。
そして、ジェネラルはそれを見逃すような相手ではない。
何事か紡ごうとして、ジェネラルが薄く唇を開いたのを見て、遮るように言葉を吐き出した。

「閣下、ミルクはありますか?」
「今日はダージリンの予定だが……」

最高級のマスカテルを孕む茶葉は、ミルクのまろやかさが混じると香りが壊れてしまう。
香りも味も繊細な琥珀色は、白が混じることすら許さない。
けれど、ジェネラルはゆっくりと唇を円弧に描き、笑みを湛えながら続きを口にした。

「――…今度、貴方が来るときはアッサムを用意しておこう」

アッサムの色は濃紅、コクの深い茶葉はミルクと合わさると最上のミルクティーに変わる。
オズワルドの好みを尊重しながら、笑って差し出された掌は何時もの手袋を纏ったものでなく、素手だった。
本人の言葉を裏付けるようにジェネラルの手は大小様々な傷が走っている。

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[Serene Bach 2.23R]