だんだん強く
2010/10/08 Fri
m25
「閣下は随分と物好きですね」
「君ほどではない」
「ご謙遜を」
「私が君の立場ならそろそろ依頼を断るな」
顎を引いて笑うジェネラルは額に掛かった金髪を自らの掌で撫で付けた。
確かにオズワルドとジェネラルの間には絶対的な力量差がある。
だが、不意さえ突ければジェネラルを仕留めることが出来ないわけではない。
ジェネラルは常に前線へと配属される尖兵だが、オズワルドは夜の深さの中で命を刈り取る暗殺者なのだ。
それでも仕留め切れないのは、オズワルドが自分の力を過信しているのではなく、ジェネラルが油断してくれないだけだろう。
常に真っ向勝負に持ち込まれては手も足も出せず、今回と同じく叩きのめされるだけだ。
「―――…そう、出来れば簡単なのですがね」
「難しいことなのか?」
「私の手は血だらけですから」
さらりと返して、自分の言葉に思った以上のダメージを受ける。
こうして呑気に会話をしているジェネラルも、本来はターゲットの一人でしかない。
行く行くはどちらかが死の洗礼を受けねばならない。
しかし、ジェネラルはまたも楽しそうに笑って喉を震わせた。
闊達な笑い声は密やかだが、よく響く。
「――…私は手と言わず、全身傷だらけだぞ」
手にかけた命の数だけならジェネラルの方が上だろう。
ジェネラルは単に事実を口にしただけだろうが、オズワルドは胸が詰まった気がした。
力だけでなく、精神面でもジェネラルはパーフェクトな戦士なのだ。
おかげで血だらけの手で、傷だらけの手に触れて良いような気になってしまう。
妙な感傷を抱えてしまったオズワルドは自らを取り戻すために頭を緩々と振って、世間話に少しだけ揶揄を混ぜる。
「……今日は医者を呼んではくれないのですか?」
「随分、手加減をしたつもりだが」
「そうですか、それにしては―――」
まるで、心臓を直接弄られたかのように疼くのだが。
到底、言葉に出来ないことを続けそうになって、オズワルドは語尾を濁した。
オズワルドが語尾を四散させたためか、二人の間に沈黙が落ちる。
その沈黙に耐え切れず、オズワルドは重力に任せて瞼を下ろす。
このまま気を失ってしまうのも良いかもしれない、とオズワルドの視界が闇に閉ざされた時、ジェネラルの気配が動いた。
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