だんだん強く
2010/10/08 Fri
m25
「…………」
確かに、プロを貫くならこの手の矜持は捨てなければいけない。
失敗の一つ二つで舌を噛んでいては、この年まで現役の暗殺者ではいられなかっただろう。
何もかも、パーフェクトなジェネラルに見透かされている気がして居心地が悪い。
そんな意思を込めて、片眉を顰めるとジェネラルの喉が緩やかに揺れる。
低い笑い声は余裕ある勝者のそれだ。
「ポーカーフェイスも結構だが、君は目を隠していないほうが良い」
「私に、……道化になれとおっしゃいますか?」
裸眼では人相の悪さが露呈するため、サングラスは大切な商売道具だ。
まるでそれすら否定されたようで、オズワルドはジリ、と身を捩る。
明らかに敵意を増したオズワルドにジェネラルは、少し考えてから顎に手を当て、口を開いた。
「いいや、―――…単なる私の好みだ」
告げられた瞬間、意味を把握できなかった。
意外な言葉に、ポカンと薄く唇を開いてしまう。
聞き間違いかとも思ったが、生憎オズワルドの五感は正常だ。
おかげで続いた洋々とした声はやけにクリアに聞こえた。
「それに、私はこれからティータイムなのでね。失礼させてもらうよ」
高らかに響く軍靴の音色をBGMに言われた言葉の意味を考える。
オズワルドにとっては駆け寄ってくる白衣の男すら、意識の外へ追いやるほど、不可解な言葉だった。
紅茶の香りがする。甘く、爽やかな淹れたての紅茶の香りが。
幾度か嗅いだことのあるその香りは、己が淹れるものとは違う。
記憶にはあるが、それが何のものであるのか、誰から香っていたのか、よく思い出せない。
いや、思い出せないはずはない。現に今も微かながらオズワルドの鼻腔を擽っている。
薄暗い室内で、一瞬気を失っていたオズワルドは聞き覚えのある低音に起こされた。
「君も懲りないな」
「………、……年を取るとしつこくなるものですよ」
最初の会話はうつ伏せだったが、今回は仰向けだ。
目の前が真っ白になって宙を舞ったところまでは覚えているが、それ以降の記憶がない。
無論、着地した覚えもないからこんなに無様に倒れているのだろう。
幾度か目を瞬いて、やはり何処かへ吹き飛んでしまったサングラスを視線で探す。
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ラウンド・コールは高らかに >>
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