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だんだん強く

2010/10/08 Fri
m25


更に視線を動かせば、よく磨かれた軍靴が見えた。
視界を上にずらそうとして、首を僅かに持ち上げると嫌な音が肩から聞こえる。
こちらは折れていないが、外れているのかもしれない。
こんなに満身創痍だというのに、こんな目に合わせてくれた最強の尖兵は、
優雅にも肩についた埃を指先で軽く払っていた。
皮肉の一つでも言いたくなって、口を開いたが喉に血塊が詰まって咳き込んだ。
折れた肋骨に程よく響いて、老体には厳しい激痛が駆け巡る。
その様を見ていたのか、低音の笑い声がオズワルドの鼓膜を擽った。

「老人が戦いとは感心しませんな、最近の暗殺者はやんちゃで困る」

舌打ちしそうになる剣呑な本質をグッとこらえて、重い瞼をゆっくり伏せ、
静かに息を吐き出すと努めて穏やかな声を返す。

「――…暗殺などと言うのは、……元からやんちゃなものだと思いますが」

険悪な色を眼差しに乗せて、青い瞳を覗き込むと、ジェネラルは楽しげに唇を歪ませて笑った。
乱れもしていない軍帽の縁を摘んで、被りなおすと失礼、と呟いてオズワルドに向き直る。

「暗殺か……、紳士な君には似つかわしくないな」
「―――…おや、私をご存知でしたか」
「君は軍部でも有名人だからな」

血が足りない頭で、貴方ほどでは、と相槌を打つも、
“有名な”暗殺者だと言い切られたオズワルドがそれを言葉に変えることは出来なかった。
せめて肩を竦める振りをして、スーツの肩で床をなじる。

「煩わしい虫は払っておきますか?」

オズワルドは不意にジェネラルへ問いかけた。
おそらく処分されるのだろうなと漠然と考えながらも、ジェネラルの答えが気になる。
しかし、意外にもジェネラルは首を左右に振った。
オズワルドの瞳に明らかな疑問の色が走る。

「私は無益な殺生はしない、医者を呼んでやるから帰りたまえ」

更に念を押すように告げられて、オズワルドは切れ長の瞳を見開いた。
見逃すだけなら未だしも、医者まで呼ばれるとは流石に考えていなかった。
けれど、直ぐに驚きは別の感情に摩り替わり、視線を更に冷たいものに変える。

「………それは、私にとって生き恥を晒すことだとは思いませんか?」
「君の言い分はもっともだが、依頼を遂行せずに舌を噛むほど慎ましくあるまい」

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[Serene Bach 2.23R]