オールイン
2010/10/02 Sat
m25
「……………………」
未だ思考は混濁し、まともな思慮など出来もしない。
それでも、混乱の中であっても、心中で叫んだ声は消えることなく脳に刻まれている。
腹にすとん、と落ちた理解に、全身の体温が上昇する。
キスされるたびに上がる熱の意味も、接触が不快でなかった理由も全てそれに付随するのだと、気づいてしまえば容易い。
「………………もう、…………」
ジェネラルは嫌だったのだ。
酒の戯れでしかないキスが、からかいでしかないキスが。
同じ思いを持たずに触れ合う口付けが、堪らなく嫌だったのだ。
触れれば胸は高鳴り、息が止まるくらい切なくなるから。
優しいキスに酔って、勘違いをしてしまいそうになるから。
それが―――それだけが―――本当に嫌で仕方なかったのだ。
「……………私の負けで、構わない………」
気づいてしまった極論に、軍帽を落とした金髪をぐしゃりと掻き混ぜた。
オズワルドは疲れていた。
傍目にはそうとは見えず、常と同じ笑みを湛えていたが、実際はまっすぐ帰宅したいくらいに疲れていた。
原因はいたって単純で、奔放かついい加減な運送会社の社長が、行き先も告げずに数週間もの間行方を眩ましたのだ。
社長が居なくなること自体は最早ルーチン・ワークの一環になっているが、今回は時期が悪かった。
オズワルド自身もトーナメントに出場が決まっており、会社と会場の往復する日程と
運悪く―――もしくは、狙ったかのように―――重なってしまったのだ。
運送会社において、別段役員でも重役でもないが、
一番の年長であり古株でもあるオズワルドは社長が消えてからというもの各部署に引っ張りだこだった。
それでも、仕事に手を抜くことを良しとしないオズワルドは、
今日も予定通りにトーナメントに出場し、今しがた試合を片付けてきたところである。
身体が本調子であれば、などと言う気は一切ないが、それでも腹に溜まった鬱憤は淀みになって胃を圧迫した。
「―――本当に…どうしようもない人ですねぇ……」
呼気交じりの呟きに、うっすらと殺意が滲む。
今回の騒動で一体何日社泊したかすら覚えてない。
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