オールイン
2010/10/02 Sat
m25
そして、何が楽しいのか本当に分からないのだが、今では顔を合わせるたびに必ず抱き寄せられて唇を奪われる日が続いている。
「―――……はぁ……」
ジェネラルは臓腑に淀む蟠りを吐き出すように重く息を吐いた。
本当に、何が楽しいのか分からない。
そして、口付けされる度に上がる熱の意味も理由も。
訳の分からない疑問ばかりが溢れかえり、ジェネラルは親指の腹で唇をなぞった。
ほんの数時間前にそこを伝った熱を思い出したのか、ジェネラルの指先に僅かな熱が移った。
「……近頃の紳士はやんちゃで困る……」
「――――………?」
ジェネラルは微かな違和感を覚えて歩みを止めた。
身体を反転するようにして、今まで歩いてきたトーナメント会場の廊下を振り向く。
時間帯のせいなのか、ジェネラルが通ってきたルートのせいなのか、見通しの良い廊下に人通りはない。
それを確認して、ジェネラルは再度首を傾げた。
視覚で確認するまでもなく、ジェネラルは気配を探れば大体の状況は把握することが出来る。
今とて、ジェネラルの察知圏内には無機物・有機物の気配はない。
だから、振り向く必要もなく、廊下は完全にジェネラル一人なのだと感覚では知っていた。
「……何だ……?」
それなのに、だ。
ジェネラルが感じた違和感は拭われることなく、未だ腹に溜まる。
顎に手を添えて、掌で口元を隠すと疑問の声を漏らす。
感覚が収まらず、ひたすらに違和感ばかりが溢れてはジェネラルの心中を乱してきた。
収まることのない違和感をジェネラルは溜息一つで押さえ込むと、止まっていた歩みを会場へと向けた。
試合後の控え室で、ジェネラルは一人でティー・タイムを愉しんで―――
「……はぁ……」
いなかった。
試合は上々で、己の能力も最大限に引き出せたし、決して悪いものでもなかった。
けれど、試合前に感じた違和感は今尚消えることなく紅茶の芳醇な香りを愉しむことすら出来ない。
薄く口を開いて招き入れたセイロンの微かな渋みさえ、少しも舌に馴染まない。
ジェネラルは豊かな味を感じられないまま、諾々と紅茶を飲み干していく。
「―――……」
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