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オールイン

2010/10/02 Sat
m25


視界一杯をオズワルドに占領されたジェネラルはあの夜のようにまずは凍結し、次いで両腕を突っ撥ねて痩躯を押し返した。

『何をやっているのかね…ッ!』
『いえ。閣下が嫌ではないと仰って下さったので』

ニコニコと笑みを返してくる老獪さはジェネラルの知るオズワルドと相違ない。
しかし、幾らなんでもあの酒席から十二時間以上経っている上に、
オズワルドほどの使い手が酒の名残を纏ったまま試合に臨むとは到底思えない。
極自然に行われた今の行為とて、ただの友人である二人の関係では不自然かつ不可解だ。
酒のせいだと言い張るにしても度が越している。
つま先から脳天まで突き抜けるような羞恥に苛まれながら思考が疑問と狼狽で満ちる。
ジェネラルは奪われた唇に手背を押し付けて頬に上がる熱を誤魔化そうと試みるが、
何の前触れなく洒落で済まされないことをやってのけたオズワルドに責める言葉が口をついた。

『アレは酔った貴方の悪戯だったろう!』
『やはり覚えて下さったんですね。光栄です』
『はぐらかすなオズワルド!』

忘れたフリをしていたことすら忘れていたジェネラルが墓穴を掘ったと悔やむより早く、オズワルドは本当に嬉しそうに微笑んだ。
その笑みを見た途端、心臓が嫌な収縮をしたが、それよりも現状打破を優先させたかった。
苦し紛れの怒声は聞き流されるかと思ったが、オズワルドが乗ってきた。

『確かに酔ってはおりました。ですが、酔ったら誰彼構わず口付ける訳ではありませんよ』
『昨夜の今では信憑性は薄いがね』
『これは手厳しい』
『……今までの良好な関係に免じて、忘れて差し上げよう』
『いえ、それには及びません』

言うが早いか、オズワルドはジェネラルの腕を引き、軍帽に隠れた額に口付けた。
触れると同時にジェネラルが全霊を脚に込め瞬時に身体を起こすと、絶妙なタイミングで団体が廊下を曲がってきた。
もしも少しでも離れるのが遅かったら、と僅かに冷や汗を滲ませるジェネラルに、オズワルドは口元を隠して笑った。

『―――忘れないで下さい』

私も忘れませんから。

口だけを動かしてそう告げたオズワルドの目に笑気はなく。
否が応でも本気なのだと気付いてしまったジェネラルは声も出せずに棒立ちになるより他なかった。

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[Serene Bach 2.23R]