『 手  紙 』  

 お兄様へ    忙しい日々を送っています。   自分が多くを(全てとは言いません)見聞きし、判断し、行動に移して。  毎日が新しく、繰り返しなど一つもありません。    私は虐殺者の名を背負い、生き抜く事。それだけで充分な罰だと思っていました。  でも、お兄様はそれだけで許してはくれませんでした。  私に明日を託し、私に生きてご自分の見ることの無い未来を見届けよと。  お兄様のいない世界で。  厳しいなとも思います。  私はお兄様の作ってくれる繭の中で安らいでいるべきだったのでしょうか ……言ってみただけです。  私は以前は見えないままでも色々な事がわかると思っていました。  実際、見えるようになった今、かえって目に入る物で惑わされる事も多いです。  それでも頭で考えるだけでなく、実際に現場に赴き、多くの人に会い、あらためて 思います。  やはり世界は広いのですね。  お兄様は当り前だと笑ってくれるでしょうか。    この手紙は心の中だけで記します。形に残せば面倒な事が起きる恐れがありますから。  その代わり、私はけして忘れません。  お兄様の願いを、大きな秘密を。

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