私を抱いて。あの人みたいに 

 休日、遅目の朝食。Tシャツにスェットのズボン姿でトーストを齧る俺に明乃が声を かける。 「恭ちゃん、それじゃ、えーと、役所に書類を取りに行って、銀行に行って、それから 入院してる友達のお見舞いに行って……くるね」  結婚して半年経ったっていうのに相変わらず明乃は頼りない。 「やっぱり、役所と銀行は俺が行ってこようか」  明乃は必死にぶんぶんと首を横に振る。 「ううん、子供じゃないんだからそれぐらい。それよりもお母さん、お願いね。大丈夫 と思うけど」 「ああ、わかってるよ」  俺は明乃と結婚し、義母の志乃さんと同居している。  岸田の一件の後、志乃さんは長い間、入院していた。肉体よりもむしろ精神的不安の 問題で。  今は日常生活を送る分には問題はないという診断を下され、自宅療養中。 「やだ、なんか引っ掛かったー!」  玄関口で明乃がわめく。 「おいおい……」  俺は席を立ち、玄関に向かおうとすると。 「待って」  囁く声。背後から俺の腰に手を回し、行くのをやめさせようとする人。 「志乃さん起きてきたんですか」  俺も小声で答える。 「ええ、だから」  俺の腰を抱く手に力を入れてくる。志乃さんの胸が俺の背に押し当てられているのを シャツ越しに感じる。 「じゃあ、行ってくるね」  明乃の声。少し遅れてドアの閉まる音、それから鍵のかけられる音。  二人の間にどこかほっとしたような空気が流れる。志乃さんが少し音量を上げる。 「恭介君、お願い。抱いてよ」 「明乃がいなくなった途端にもうそれですか」  誰が問題がないなんて診断したんだ、藪医者か? 「コンビニにでも行ってきます。その間に頭を冷やして」  「待って」  外に出ようと玄関口の廊下に出た所で、志乃さんに立ち塞がれる。 「いい加減に……」 「ねえ、岸田を殺したのは貴方なのでしょう?」  それは事実だ、だけど。 「貴方が責任を取ってくれなきゃ……ほてりを鎮めてよ、ねえ」  俺が返事もなく立っていると。 「いいでしょ? 私が脱がしてあげるから」  跪き、俺のズボンをトランクスごと引き下ろす。  志乃さんの慣れた仕草から引き起こされるのは、マンネリ感ではなく……悔しいけれど 期待感で。  理性とは逆に本能はいつものあの快楽を待ちわびて、下半身の物に血を集中させる。 「もう、こんなになってる……」  嬉しそうに舌を突き出すと裏の筋に沿って舐め上げる。それにつれて、俺の物は更に 反り上がっていく。 「くっ……」  思わず漏らした吐息に目を細め、先端の部分を咥え込む。 「志乃さんこそ」  俺は無理に彼女を立たせると薄い布地の下着の上から秘所を指でなぞる。 「ほら、こんなにわかるぐらい濡れて」  そのまま下着をずり下げ指を潜り込ませる。  そこは熱く、充血し。 「ああ、もう、駄目」  彼女の腰が砕け、へたり込む。 「こっちに尻を向けなきゃ入れてやれないんだけど」  俺の言葉に慌てて四つんばいになる。  丸みをもった尻。程よい肉付き、柔らかさ。欲情が一気に高まる。  一瞬、俺はこの女を抱くために恵じゃなく明乃と結婚したんじゃないかと錯覚す る……一瞬だけだ。  俺は志乃さんの腰を掴むと、言葉もなく真っ赤に熟れ切った秘裂に一気に自分の肉棒を 差し入れる。 「んんっ!」 「ほら、もっと背を反らして」  不意の快感に背を丸めそうになる彼女に、俺は強引に腰を掴んだ手で彼女の背を反らさ せ、更に突き入れる。 「あん!」  湿った音を響かせながら、俺は志乃さんをバックから犯す。  「もっと、もっと、奥まで来ていいの、抉って欲しいの」 「淫乱女が」  吐き捨てた言葉に。 「そうよ、そうよ……だって、私は岸田に狂わされたから……でも」 「でも?」 「あ、の、人より、素敵……恭介君の気持ちいいの!」  律動は止めないまま、初めて聞く言葉に俺は僅かに片眉を上げる。 「どうせ、お世辞だ」  子供がいやいやとするように彼女は首を横に振る。 「違うの、今は恭介君に抱かれたいの! いじめて欲しいの! 貴方にイカされたいの!」 「な……」  見知らぬ他人を犯すあいつが狂った獣だとしたら、目の前の女を妻の母親と知って犯す 男はなんなんだろう。  つい動きを止めた俺を気にして彼女が振り返る。  俺の複雑な表情を見て取ったのか。ヌポ。音を立て、俺の肉棒を引き抜くと膝を突いた まま俺の方に向き直り。 「ねえ、信じて」  そう言いながら俺を押し倒し。 「今度は私がしてあげるから」  仰向けになった俺の腰にまたがった。  「ん……ん……ああっ……」  ゆっくりと味わうように蜜壷に肉棒を咥え込む。 「じゃあ、してくれよ」  俺の言葉に頷くと、彼女は動き出す。自分の感じる所を探りながら    ぐちゅぐちゅと粘膜を蠢かし、俺の物を包み込むように擦り上げるように。  俺は堪らず、自分でも腰を使い出す。 「そう、腰を突き上げて、私を壊しちゃっていいの」  絶頂が近づく。  かすれた声で囁く。 「……お望み通りに……俺の子種を注いで上げましょうか」 「ねえ出して出して。妊娠しちゃってもいいの」  彼女は俺に覆い被さる。乳を口元に押し付けられ、俺は存分にほおばる。 「あん、もっと吸って」  玄関の靴箱の上に何かあるのに気づく。僅かに上半身を上げる。恐らくお見舞いに持って いくつもりだった菓子折り。相変わらず明乃は……。  彼女の腰の動きが激しく速くなる。俺のも、だ。 「イク、いっち……ゃう」  家の前、小走りな足音が聞こえる。破滅の足音? 構うものか。  足音は俺のうちの前で止まり、それから。カチャ。鍵を開ける音が聞こえた。

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