狂 気 の 行 方結論から言おう。 岸田は確かに死んだ。だが船内の空気は最悪だった、俺とちはやにとって。 殺ったのは――友則だ。 岸田が、丁度、弄ぶのに飽きた虫けらをひねりつぶすように、友則を殺 そうとして、逆にやられた、らしい。 とにかく俺たち皆が見たのは、血の海に沈む岸田を前に、自身も血塗れに なってへらへら笑う友則だった。 それから、皆はめいめいに刃物を手にとり、岸田の死体を更に殺し続けて いった。 生き返らないように呪詛をこめて、あるいは純粋に恨みを込めて、あるい は、ここに居る者全てが共犯者となるために、皆は刃物を振るった。後で 友則が笑いながら言っていた。 『なぁ、あいつ、どこを一番刺されてたと思う?』 『さぁな』 『そこだけ見たら、女かと思うぐらいだったぜ』 ちはやは刺すことが出来なかった。直接、岸田に襲われなかったからかも しれないし、たとえ、犯られていたにせよ、人を刺すなどちはやには無理な 事だったのかもしれない。 肉に刃が突き刺さる音に耐えられず、ちはやはロビーから逃げ出した。 俺はその後を追いかけた―――こうして俺とちはやは、共犯者にもなれ ない卑怯者へと成り下がった。 少女達が泣き叫ぶのを、ただ黙って見ていた俺は卑怯者。そして友則は 英雄、所業は全て赦された。ちはやとの一件すら!処女を奪われたわけ ではないのだから、いいのではないかと。 俺たち二人は船内で息を潜めるように暮らし、救援を待ち焦がれた。 漂流生活6日目の事。珠美考案の釣竿で俺は釣りをしていた。何かしら 食糧の足しになるように。そんな時、友則が声をかけてきた。 「恭介、ちはやちゃんが呼んでるぞ」 「え、どこだ」 「こっちだ」 友則の後をついて行く。そして、重い扉の前に立つ。 「ウインチルーム?何だってこんな所」 「お前の事驚かせたいみたいだぜ、開けてみろよ」 扉を開ける。薄暗い中、誰かが台の上に横たわっているのが見える。女、 下着姿で、まさか。 「ちはや!―――グァア!」 部屋に飛び込もうとした瞬間、後頭部を激痛が走った。 「どうだい、まさにサプライズだったろ」 友則の声が遠くに聞こえ、俺は意識を失った。 「起きろよ、おい!」 乱暴に脛を蹴られる。その脛の痛みと後頭部の鈍痛を感じながら、俺は目を開ける。 台の上には、下着姿で寝かせられた少女。 手は紐で縛られ、動けないようにされ、口にはガムテープ。 おびえきり、体を震わせる少女は俺を見ると、それでも、健気に必死に目で訴え かけてきた。 ――助けて……おにいちゃん。 「ちはや!ん、何ぃ!?」 後ろ手を何か金具で固定されてる…手錠か?あげくに柱に通されていて、くそっ ……動けない。 思わずしゃがみこんだ俺を、満足げに友則が見下ろす。 「よぉ、おにいさま。お目覚めはいかが?俺はこれから、ちはやちゃんを女にさせて もらうぜ」 友則はちはやに近寄り、気ぜわしげにベルトを外しながら、俺の方を向き言う。 「大体よ、お前ら生意気なんだよ、いつも寄り添ってこそこそしやがって、軽蔑 したような目で見やがってよ!聞けよ、恭介。今からこの女を犯す。たっぷり精液 を注ぎ込んでやる。よがり狂わせ服従させる。お前はその一部始終を見るんだ。 目を逸らしたりなんかするんじゃねぇぞ」 「おい、何言ってるかわかってんのか」 今度は、友則はちはやに言った。 「安心しろよ、痛いのなんて最初のうちだけだ、じきにしたくて、たまらなくなるぜ。 そうすりゃ、お前らも諦めるだろ、認めるだろ、この群れのリーダーは俺だと、オス は俺一人なんだと!」 「……おい、お前、岸田にでもなったつもりか」 自分の言葉に酔いしれ、興奮する友則に、俺の声は届かない。トランクスを脱ぎ捨 て、怒張する男根を露にさせる。 「悦びさえ知ってしまえば、女なんて自然に強い男を選ぶんだよ」 無造作に口のガムテープを外す。 「いやぁ――――――っ!!!!」 ちはやの叫び声。満足げに、友則が口の端を持ち上げ、笑う。 「く、く、く、さぁ、契りを結ぼうぜ。立会人はお兄ちゃんだ」 「友則ぃ!!」 ガシ――ン、ガシッ!手錠と柱が打ち合う音が響く。 「悔しいか、悔しいか?壊してみるか、手錠をよ、緑色の化け物みたいに、ほら、 見ろよ、愛する妹の女の部分を」 友則がちはやのブラをめくり上げる。俺以外の異性には、ろくに見せたことが ないはずの乳房が、薄汚い手で揉みほぐされる。舌で乳首を舐め上げられ、本人の 意思にかかわらず、いやらしく、乳首が尖りを見せていく。 「いやあ!おにいちゃん、おにいちゃんっ!」 こちらを向くちはや、涙顔で頬を赤らませる、羞恥からくるものだろう、わかっ ているのに俺はそんなちはやの表情に色香を感じる。 「さぁ、いくらなんでも、こっちまでは恭介に見せたことねぇだろう。初のお披露目 だ。ちはやちゃんの処女の、未開通のおまんこだ!」 「やだ、お兄ちゃん。見ちゃ駄目!今の私のなんて、綺麗じゃないの!」 目をそらせない。いや、むしろ凝視してしまう。子供の時、ふざけてみせっこ していた頃とは違う、大人になったちはやのそれ。俺が何度も妄想したそれと 同じように、控えめで柔らかそうな茂み。 その奥に潜む、男だったら誰でも引き寄せられずにはいられない、蜜壺。ほの 赤く、わずかに濡れ光るそれは、なんとも言えず、綺麗で卑猥で。 友則の頭の中も真っ白になっているのだろう。愛撫すら忘れ、挿入を試みる。 「やめろ、友則…」 怒りの中に欲情が混じる。股間を見れば俺のものも友則と同じように、いや、 それ以上に激しく主張しているのがわかる。 「くっそ―――!!」 さまざまな怒りの感情が混ざり合う。俺は叫び、ただ、あがく。 ガチャ、ガチャ、カチッ、カチッ―――あれ?手錠が…もしかして、外れる…俺の 表情の変化は友則に気付かれずにすんだ。今の奴の頭の中には自分自身をちはやに 突っ込むことしかない。 「畜生、ここだろ、ここでいいんだろ?動くなよ」 友則自身のあせり、ましてや相手が死ぬ気で抵抗しているのだ、そう、うまくいく ものか。 「少しはおとなしくしろよ、終いには殴るぞ」 ガツンッ! 俺は今度は自分が後頭部を殴られ、気絶する友則に向かって言った。 「誰が、誰を殴るって?ほら、お返しするぜ、お前が気付かず使ってたおもちゃの手錠」 友則を台から落とすと、急いでちはやの縛めを解いてやる。 「お兄ちゃん、怖かったよぉ」 泣き声と共に胸に飛び込んでくる。俺は、布切れ一つまとわない、裸のちはやを 受け止める。ちはやは言う。 「怖かったよ。あのまま、襲われてたら、お兄ちゃんの前で…」 更にぎゅうっと抱きしめる腕に力を入れてくるちはや。Tシャツ一枚ごしの俺の肌に ちはやの胸が感じられてしまうのに気付きもせずに。いや、もしかしたら逆に……。 そして、ちはやは天使のような唇から、悪魔の言葉を俺の耳元で響かせた。 「ねぇ、お兄ちゃん……私のことを抱いて」 「え?」 「あんな奴にやられるぐらいなら、私の処女を奪って」 「待てよ、ちはや」 「だって見たでしょ!このままでいたら私、又、襲われる。そしたら今度こそ」 そんなことは無いだろう、皆にも気をつけてくれるよう頼めばいいだけの話だ。 だが、ちはやは訴えを続ける。 「知ってた?私たち本当はきょうだいじゃないんだよ。血が繋がってないの。 入学の書類提出するとき戸籍を調べたんだ。だからね…」 「そんなこと……」 嘘に決まっていた。俺もかつて戸籍を調べたことがあるのだから。ちはやも 恐らく同じようにしたのだろう。そして、俺と同じ眠れぬ夜を過ごしたのだろ う。だから、俺は答える。 「――とっくに知ってたさ」 互いの嘘に騙されていく。 腕に巻きついた見えない鎖を絡めあい、二人は距離を近づけていく。 二人の唇が近づいていく。ライトなキスは、ほんの一時で、すぐに濃厚な ものへと移っていった。互いが互いの舌を味わう。競い合うように、相手の 口中を探り合う。何年もの間、積み重ねてきた密かな、それでいて激しい思いを 二人はぶつけ合う。 「お兄ちゃんも脱いで」 もどかしげに俺は脱いでいく。すでに勃起しているので、ジーンズが引っ掛かる。 俺の裸を恥ずかしそうに、それでも目を逸らす事なく、見るちはや。そそり立つ 股間のものを見て息を呑む。 「すごい、大きくなってる、こんなになっちゃうの?」 「あぁ、ちはやの裸を見せ付けられてたから」 上に覆い被さり、抱きしめ、胸元にキスをする。 秘所を中指で探る。そこはすでに溢れるほどに、濡れ、熱い。 「ちはやだって、友則に触られて感じてたの?こんなに…」 うろたえながらも、俺に誤解されたくなくて、ちはやは必死に言う。 「違うもん、私だって、お兄ちゃんに見られてたから、ちはやの全部見られ ちゃってたから……」 「それだけで濡れちゃったんだ。エッチだな、ちはやは」 「でも、きっともっとエッチになっちゃう、お兄ちゃんがしてくれると思っ ただけで、もう、私」 「かわいいよ」 欲望のままに、ちはやに入れてしまいたくなる気持ちを押さえ込む。 ちはやをもっと感じさせたい、乱れさせたいから。 壊れやすいガラス細工に触れるように慎重に、ちはやの太ももを両手で掬い上げ、 広げていく。案の定、拒まれる。 「やだ、足を広げたら見えちゃうよぉ」 「いいだろ、俺になら」 「……」 答える代わりに、ちはやはわずかに太ももの力を緩める。俺はゆっくりと広げていく。 じらすように、本音を言えば、自身のはやる気持ちをなだめるために。 さっきと違い、間近でちはやの秘所を見る。 「あ、あ、見られちゃうの、お兄ちゃんに」 ちはやがきゅっと目を閉じる。 両手の親指で、割れ目を軽く広げる。それだけで、ちはやはビクリと体を震わせる。 「ここの尖ってる所が感じやすいんだろ?」 人差し指の腹でやわらかくさする。そこがますます熱を帯びる。 「あ!……そんなのわからないもん」 「ほら、ちょっと触れるだけでピクってなってる。自分で触ったりもしてるんだろ」 「や、ん…触ったりなんて、して、な、い」 ちはやが陰唇を擦られるのにあわせ、身をくねらせる。 「嘘だよ。きっと、そのかわいい指でいじってたんだろ、クリトリスを、襞を。 自分で慰めてたんだろ、体の火照りを」 「意地悪なこと言っちゃ駄目…」 「――俺はしてたよ」 「え?」 「毎夜のように妄想の中でちはやとセックスしてた、いろんなやり方で。犯す ようにしたこともある、それで、いつも一人で果ててた」 ちはやも俺の告白につられて言う。 「私も、一人でエッチなことしてた…お兄ちゃんのこと考えると、どうしようも なくなって…だって、もう、子供のころとは違うもん、心も体も」 「本当だね、ちはやのここも、凄く襞がビラビラしててやらしくなってる」 「うぅ……言っちゃ駄目ぇ」 俺は両手の指でちはやの襞を広げる。奥がうごめく。俺を求めて。 「ぐちょぐちょだよ、広げるだけで、汁が流れてきちゃってるよ」 「恥ずかしいのに……」 軽く、指で秘所を愛撫しながら囁く。 「キスしちゃおうかな、ここに」 ちはやは額を汗でにじませ、息も荒くさせながら、それでも、半泣きの表情で言う。 「…汚いよぉそんなところ」 言われて、逆に欲望が高まっていく。 ちはやの弱々しい声に、俺は優しく太ももの辺にキスをしながら答える。 「見てるだけで我慢なんかできないよ、こんなにおいしそうなのに」 舌先が入り口の襞をなぞる。 「あ!ぅ――ん」 少し驚いたような声。 くちゅくちゅと音を立てて、舌を入り口にもぐりこませる。 「あ、あ、そんな、だ、め……」 ちはやが俺の両肩に手をおき、うめくように言う。 「おいしいよ、ちはやのおまんこ、ほら、指も入っちゃうよ。もっと、とろけてく」 「ん、あーん、ん、ん、やだぁ感じちゃうの」 出し入れさせてみたり、中でくねらせてみたり、指の動きに思わずちはやは背を のけぞらせる。 「指なんてだめぇ……恥ずかしい」 「なめられるほうが好きなの?」 俺は再び口でちはやに奉仕する、夢中でちはやの秘所をむさぼる。舌で秘唇を広げる。 愛液を掬い取る。 「ん…あ、恥ずかしいのに…感じちゃうよぉ」 ちはやの手が俺の肩から離れ、俺の頭の上に置かれる。 俺は、敏感な尖りを口に含み、そっと吸い上げながら、舌で、尖りの中の敏感な 果実を刺激する。 「ひゃぅん!あぁ…ん、だ、め、お兄ちゃんの前でこんな、声出ちゃって、 濡れちゃって…おかしくなっちゃって…」 言葉では抗いながらも、体は快感に支配され、ちはやは俺の頭を狂おしげに 撫ぜてくる。時折、体をピクン、ピクンと震わせながら。 「こ、ん、な……や、じんじんしちゃうの…奥まで…お兄ちゃんに、こんなになっ てるの…見られて…」 俺は顔を上げ、わざと耳元で囁くように言う。 「エロくてかわいいよ、ちはや」 「わたしだって、お兄ちゃんの……したい」 目を潤ませながら、ちはやは俺の首筋に左手を巻きつける。 俺の胸元を右手の指でなぞり、かるく、乳首を刺激させる。思わず、体を震わせ、 吐息を漏らしてしまう。 そんな俺の反応を楽しみながら、更に下へと移っていく。その手をそっと抑える。 「嫌なの?私にされるの」 不安そうな顔で俺に尋ねる。俺は首を横に振って答える。 「違う。今そんなことされたら、それだけで出ちゃいそうだから」 ちはやは誘う目で、微笑みながら言った。 「うん、それなら…お兄ちゃん、もう、来て…ちはやの中に」 俺は台から降り、ちはやの膝を掴み、開かせる。 「あっ……」 散々愛撫された後でも、恥ずかしげな戸惑いを見せ、声をあげるちはや。 俺はキスをしながら、ちはやの腰を持ち、自分の方に引き寄せる。 「ん…ん…あぁ、あたってる。お兄ちゃんの、かたいのが…」 「…早く入りたがってる、いい?」 これから始まるであろう痛みへの恐怖を押し殺すように、答える。 「うん、わたしも入れてほしいもん」 そう言って、ちはやは俺の両手首を掴んだ。 力の加減も分からぬまま、できる限り穏やかに俺は自分のものを、ちはやの中に潜り 込ませようとする。 先端にぬめりと熱さを感じる。俺の手に力が入り、ちはやの身体はこわばる。 「あ、おにいちゃん!」 結ばれるのを望むちはやの心。しかし、身体はそれに反し、健気にも処女を守ろ うと、柔らかくも弾力を持って、抵抗してみせる。 そんなちはやの処女膜を、俺の敏感な先端が感じとる。 「ん…ん、ん…!」 息を止め、痛みに耐える顔。ちはやを本気で泣かせないように。いつもそれ ばかり考えてた俺は、自分がちはやに苦しみを与えているという事実に、少し怯む。 「つらいか?ちはや、どうする」 目尻に涙を浮かべながら、それでも、ちはやは必死に首を横に振る。 俺の両腕を握り締める、俺の腕が爪で傷つくほどに強く。 そして、俺の目を見て、ちはやは言う。 「やだ、やめたら……痛いけど。ずっと、夢見てたんだから、おにいちゃんと こうなるの」 「…俺だって…わかった。しっかり、俺の事を捕まえてな」 「うん、離さない…」 痛いだろうに、ちはやは微笑んで見せる。俺にできるのは、多分、ためらわない事だけだ。 「いくぞ、くっ!」 押し返そうとする、ちはやの中の襞、純潔を奪おうとする俺を否定するように。 それでも、俺は、更に力を入れ、互いの腰をひきつける。 ちはやの手のひらの汗まで感じながらも。苦しげなちはやの眉根を見つめながらも。 本当に、ちはやを俺のものにしてしまうために。 「あ、お兄ちゃんはいってくる、ん……!」 「ああ、俺も感じてる、ちはやを…全部入るよ…」 ちはやは痛みのあまり無意識にそらしていた背筋を懸命に戻し、こちらに向き、囁く。 手は俺の腕を掴んだままで。 「動いていいよ。もうちはや、お兄ちゃんのものなの、ちはやの中で気持ちよくなって…」 「じゃあ、動くよ、痛いかもしれないけど」 くちゅくちゅという湿った音と、二人の息づかいを感じながら、俺は腰を振り続ける。 最初は、ちはやを気遣いながら動かしていたはずだったのに、段々リズミカルな動きに なっていく。膣の中のあまりの気持ちよさに負けて。 「…はぁ…はぁ……ちはや、ちはや…愛してるよ…」 無意識のうちに、しっかり、ちはやの顔を俺の胸に押し付け、抱きしめる。ちはやが 動けないように、俺自身の欲望が果たせるように。 ちはやは懸命に、俺の背に手を回す。自分が痛みのために逃げてしまわぬように、健気に 自分の足を俺の足に絡ませてくる。 俺は自分の男根で、ちはやの膣を蹂躙しつづける。 「…くっ…あ…ちはや、俺止まらない、すげぇ、気持ちいい」 うわ言のような俺の呟き。 今にも、射精してしまいそうになる。 「いいの?気持ちいいんだ…お兄ちゃん」 艶やかに、そして優しく響く声、 俺は隠すことなどできず、ちはやに言う。 「…ん、俺を締め付けてくるよ、もう、出しちゃいそうだよ」 「うん…だして…中に欲しいの、お兄ちゃんの精液」 素直な、けれど、欲情の色を残したお願いの声に、抗う術などなかった。 「あ、出すよ、全部、ちはやの中に!」 ドビュ、ドクッ、ドクッ、ドクン! 「あ、来てる、一杯来ちゃうのぉ!」 「ちはや、すごい、俺の出てる、とまらないっ」 俺の精液が吐き出される。今までの思いとともに。ちはやの膣は俺のものを 放さない。すべて搾り尽くそうとするように、それでも。 「ちはや、俺、まだ、おさまらないよ、もっとしたい」 「私も、まだ、熱いの、もっと欲しいの。おちんちん…」 どれくらい経っただろう。 「……う、いてえ」 友則の呻き声。俺は、仰向けになっていた自分の体を少し起こした。 見ると、 奴はぼんやりと目をこちらに向けている。口元をだらしなく緩めて。もしかしたら 自分がちはやとやってる気にでもなっているんだろうか。が、ふと友則は正気の 眼に戻り、そして、叫んだ。 「お、お前ら、何やってんだよ!」 ちはやが友則の方を見もせずに答える。 「見てわからない?」 友則がまた喚く。 「みんな呼んで来るぞ、お前らの変態振りを見せてやる!」 「好きにすれば」 ちはやは冷たく言い放つ。背を向けたまま。 俺にまたがり、自分の中に俺のものを出し入れさせる事の方が重要だとばかりに。 「あ、ん、お兄ちゃん、そんなに突き上げたら、ちはや、また、いっちゃう」 ちはやは尻を後方に突き出し、くねらせ、精液や淫汁でてからせている、 二人が繋がっている箇所をわざと友則に見せつけながら続ける。 「それでどうするの。お兄ちゃんのこんなに立派な、おちんちんとあなたの粗末な ものを見比べてもらうの?」 友則ははっとして、丸出しになった自分の股間に目をやり、慌てて服を着る。 「ぐっ、勝手にしやがれ、このキチガイ兄妹」 憤怒に顔を灼熱させ、友則は飛び出していった。俺は立ち上がり、扉を閉め、 鍵を掛けようとして、手を止める。 「ちはや、行こうか」 「…もう、やめちゃうの、やっとよくなってきたのに」 「ああ、友則に報いを受けさせようと思ってね――ちはやを2度も襲った報いを ――大丈夫だよ」 ちはやの方へ腰をかがめ、そのおでこにそっとキスをして、囁く。 「大丈夫。続きはちゃんとしてあげるから」 ロビーに行くと、みんなが集まっていた。友則が呼んだのだろう。しかし、何をどう 話せばいいかわからず戸惑っているようだ。相変わらずパニックに弱い奴。友則や、 他のメンバーが俺たちに気付く。 「よぉ、全員いるみたいだな」 振り返る友則は、ほっとした表情を浮かべる、まるで援軍が来たかのような。笑わ せてくれる。 「お、おまえらのことを言ってやろうと思ってたんだよ。な、何してたか、こいつら はさっきまで、ウインチルームで……」 俺は、友則の言葉をひったくり、言う。 「慰めていたんだよ、ちはやを」 「なぁ、みんな聞いたか、こいつら……あれ?」 友則は皆のほうを振り返り、冷たい視線に気付き、こちらの方をを向く。 ちはやは目を真っ赤にして震えている。破けた服。自身をしっかり抱きしめて。 まるで強姦された後のように。 俺は、ちはやの両肩に後ろから手を置き、みんなの方に顔を上げ、ゆっくり言う。 「やってしまえば、こっちのものと思ったんだろうな」 「な、しょ、証拠は、あるのかよ……」 友則の反論の声は小さい。半ば真実だから。 「ちはやは襲われても従わなかった、作戦失敗だ。先手必勝でどうにかみんなを 集めて、嘘で丸め込もうとしたんだろう。俺たちの立場が弱いのをいいことにな」 俺は優しくちはやの肩を抱き、みんなに宣言する。 「ちはやは今日から俺と同じ部屋だ――まだ怖がっているから。友則、荷物は 適当に出しとくから、後は自分でどうにかしろ」 ロビーのざわめき――友則を詰問する声――を背に俺たちは出て行く。 岸田よ、友則よ、教えてやろう。狂気は、剥き出しの刃と一緒で、いかに脅威的で あれ、強力なものであれ、ただ、振り回しているのでは、いつかは破滅の道を歩む。 狂気は自らで操るものだ、そう、猫が自在に爪を出し入れするように。 俺はちはやの肩を抱いたまま、部屋に向かって歩いていく。そっとちはやが 俺の耳元に頬を寄せ、囁いた。 「今夜もいっぱい抱いてね、お兄ちゃん」 ―― 終 ――
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