絶 倫 丸 Z  

 放課後、はずむは一人、昇降口で靴を出そうとしていた。と、そこに。 「元・少年、緊急事態だ。すぐ、生物準備室まで来てくれたまえ」  だしぬけに目の前の空間が急に歪んだかと思うと、そこから宇宙仁が顔を出して言った。 「わっ。宇宙人さんどうしたの!びっくりするじゃないかぁ!」  はずむの文句に動じずに宇宙仁は続ける。 「君の親友である、曽呂明日太君に関することだ、急いで」 「え、何だかわかんないけど、わかったよ、今行く」  はずむが生物準備室に着くと、仮眠にも使えるソファベッドがベッドの形になっており、その上に くの字に横たわっている明日太がいた。 「どうしたのっ!明日太!」  はずむが明日太の両肩に手を置き、自分のほうに向かせる。  どこか遠くを彷徨う様な視線を見せながら明日太が呟いた。 「お…さ、まら、ないんだ…」 「え、何が?発作?持病の癪とか?」 「ち…がう…」  明日太ははずむの手をとり、握り締める。相変わらずの視線、しかし、よく見るとその眼は血走っても いるようだ。  背後から宇宙仁が声を掛ける。 「手短に説明しよう。明日太君の股間を見てみたまえ」 「え…こか…うわぁっ!…何、それ明日太」  宇宙仁の言葉につられ、はずむが視線を移し、目を丸くする。明日太が喘ぐような声で答える。 「お前だって……わからない、訳じゃ…ないだろ…」 「いや、でも…それって……おっきすぎ…ない?」 「……ハハ…自己ベスト、更新したよ」  明日太が乾いた笑いで返す。  彼の股間は激しく勃起していた。   ズボンの上からもそれは輪郭をはっきりとさせ、いかに張り詰めているかはずむの目にも見てとれた。 そして、その先端はベルトの下にもぐりこみ、ズボンから顔を出さんばかりの勢いと大きさとなって いる。  まさに怒張というにふさわしい姿だ。 「うちゅ…先生、明日太に何したの」  はずむが宇宙仁の方を向いて言う。  宇宙仁は何程の事も無いといった様子で答える。 「彼が『近頃疲れ気味だ』というので肉体疲労時のドリンクをあげたのだが、うっかり違うものを渡し てしまったようだ」 「違うものって、もしかして精力増強剤ってやつ?」 「その通りっ!私の星で開発された自信を持ってお勧めできる逸品だ。あえてこの星の言葉で名づける なら『絶倫丸Z』あたりが適当だろう」 「名づけなくていいよっ!」  はずむはふと何かを思いつき、小声で宇宙仁に言う。 「…あのさ、この薬使ったら、宇宙人さんの星の問題って解決するんじゃない?」  宇宙仁も小声で答える。  「…本人の意志を無視しての交合は間違っているという結論から、現在はこの薬の所有も使用も禁止に なっている」 「……何でそんな薬持ってるんですか」  胸を張って、宇宙仁が答える。 「私は科学者だからな、権限があるのだ」 「そこ、誇らしげに言わない!」  密談している二人に明日太が声を掛ける。 「俺はどうすれば……」  宇宙仁が明日太の方を見やって言う。 「中和剤を作れなくも無い」  ほっとしたようにはずむが言う。 「じゃそうしてよ」  宇宙仁は手をあごに当て、思案するような顔で言葉を続ける。 「三日ほどかかるが」 「う゛え、そんな、の…む…り…で…すぅ…」 「わぁっ、明日太ぁ、気をしっかり持って」  眼鏡の位置を中指で整えながら宇宙仁は言う。 「まぁ、彼がひとたび射精すれば薬の効力も切れるのだが」  はずむはホッとしたような表情を見せる。 「なんだ、それでいいんだ。自分で何とかなるじゃない。明日太、あのね…」  そこに宇宙仁が声を掛ける。 「元・少年、君の考えは恐らく間違っている」 「へっ?」 「細かい説明は省くが、彼が服用した薬は脳波に作用して、自分の手では絶対目標に達する事が出来な い様に成分を調整している。もっと言うなら恐らく異性によって導かれなければ、彼の射精はままなら ないだろう」 「えぇっ!それじゃあ!?」  再び、くいっと右手で眼鏡のフレームの位置を整えながら、宇宙仁が言う。 「つまり精液放出の手伝いを君に頼もうと思って呼んだのだよ、元・少年」  無意識のうちに、じりっと宇宙仁から一歩後ずさりながら、はずむが言う。 「なんだって、そんな凝った真似を……」  不敵な笑みを浮かべ宇宙仁が言う。 「わが星の科学力を見くびってもらっては困るな」 「だから、そこ、胸を張って言わないっ!!」 「…は、ず…む」  はずむの背後から弱々しい声が届く。振り向くと、涙目の明日太と目が合った。 「え、と、明日太……」 「何だか知らないけど…自分じゃ駄目なんだってさ…このまま3日間も過ごせないよぉ…なぁ、頼むよ …はずむぅ」  その潤んだ瞳はさしずめ捨てられた子犬をはずむに連想させた。そしてはずむは子犬と目が合って、 放って置けるような性格でもなく……。明日太の目を覗き込み、不安な気持ちを隠さずに言う。 「…上手く出来ないかもしれないよ、こんなの初めてなんだから」  明日太は荒い息をこらえながら言う。 「…だけど、男の…感じるところなら……知ってる、だろ…?」  一瞬ではずむは顔を灼熱させ、俯いて呟く。 「…それはそうだけど、さ」    *   *   *   *   *   *   *   *   *  カチャ、カチャ……。  気ぜわしげにベルトを外す音が室内に響く。  宇宙仁は流石に別室へと移っていた。今、生物準備室は明日太とはずむ、二人きりだ。  明日太はクッションを枕に横たわったまま、ファスナーを下ろし、わずかの間も惜しいかのように、 乱暴に自分のズボンとトランクスを一緒に下ろし、床に投げ捨てる。  限界まで充血し切った明日太自身が晒される。それは雄雄しく反り返り、裏側に浮かぶ血管を、 傍らにいるはずむに見せ付けている。それに触れなくても鼓動が伝わってくるかのようだ。  他人のこんな状態の――しかも、明らかに尋常でないほどのサイズのものを見せられて、無意識の内 に、はずむはごくんと唾を飲んだ。  音が聞こえたとも思えないが、それに合わせたように明日太が言う。 「凄い…だろ、今の俺の」 「え、えと、そうだね…」 「興奮する?」 「――お、怒るよ」  はずむは顔を赤らめて握り拳を上げる。そんな仕草を見て明日太は少し和み、余裕も出てくる。  「謝るよ…だからさ、してくれよ…」 「う、うん」   横から手を伸ばそうとするはずむに明日太が言う。 「ベッドの上に来いよ、正面からの方がしやすいだろ?」 「――そ、そうなのかな…じゃあ、一寸…ごめんね」  はずむは上靴を脱ぎ、軽く膝を立てて、開いている明日太の脚を跨ぐようにして、自分の身体を割り 込ませる。明日太の太腿に、はずむの手がそっと触れる。  ビクン、ビクン。  明日太は、まともに見られている緊張感とはずむと直接触れ合った事に、思わず自分の怒張を大きく 上下させる。小首を傾げるようにしてはずむの目を見つめながら明日太が言う。 「…早く、して欲しいって……せがんでるよ、俺のが…」 「そんな言い方しなくたって……」  恐る恐るはずむが手を伸ばしていく。  思春期の明日太のそれに、初めて異性の繊細な指先が絡む。ふぅ、と小さく明日太が息を吐く。  「…熱いぐらいになってる」 思わずそんなことを呟いてしまった恥ずかしさを誤魔化すためか、はずむは明日太の物を擦り始める。 あえて、感情を込めずに機械的に。  すると明日太が呻き声を上げる。 「うぅ、いて、乾いてるから、そんなに乱暴にしたら、擦れて…痛いよ、はずむ」 「わ、わ、ごめん…どうすればいい?」  明日太が少し、恥ずかしそうに答える。 「滑りをよくしてほしい…唾液とかで」 「明日太の?」 「お前、俺の唾液まみれのに…触りたい?」  ウッとはずむが少し怯み、呟いた。 「自分のでしたほうがいいかもね…」  はずむは口を閉じたまま二、三度くちゅくちゅとうがいするようにした。  恥ずかしいのか目を細めて、それでもちゃんと明日太の物にかかるように、その箇所を見つめる。  そうしてから、はずむはゆっくりと口を開ける。涎が伝い、明日太の陰茎に中ほどにあたり、根元へ と垂れていく。 「うっ」  明日太がうめき、陰茎をピクピクと震わせた。  驚いたはずむが視線を上げると明日太と視線がかちあう。  明日太は、直接股間に感じた快感だけでなく、はずむの仕草を見ながら、感じていた事もばれてし まったのではないかと動揺した。  そんな明日太の心中にまるで気付かぬ様子ではずむが尋ねる。すこし不安げな様子さえ見せて。 「これぐらい濡れればいいのかな」  「すこし、さすってみてくれよ」 「…こう?」 「うあっ…ぬるぬるして気持ちいい」 「…じゃ、じゃあ、このままするね」   はずむは5本の指を丁寧に使い、上下に滑らせ、愛撫を続ける。 「う…気持ち…いいよ、はずむの…もっと、して」  明日太は初めての経験に身をゆだねる。素直な感想を洩らす。 「あれ?」   はずむの呟き。  目線を下に向け、手の動きも続けたまま、はずむが少し怒ったような声で明日太に言う。 「……ずるいよ、先っちょのところ…透明のが、もう出てるじゃない。僕がわざわざ濡らさなくても よかったんじゃないかな」 「わ、わるい」  明日太はただ謝る。ついでにそっと、はずむの髪を指で梳いてみる。思っていたとおり、滑らかに心 地よいぐらいに指が通っていく。  はずむが顔をあげ、不思議そうな表情で明日太の方を見た。 「あ、ごめん…気が散る?」 「…別にいいけど」  少しはずむは頬を赤くしたように、明日太には思えた。    *   *   *   *   *   *   *   *   *  くちゅくちゅと湿った音と、明日太の吐息だけが聞こえる。  より明日太が感じてくれるよう、空いている手でそっと明日太のフクロに下から掬うように触れ、そ れから揉みはじめる。  その手に確かな重さを感じながら、はずむは思う。ここに、明日太の精液が…きっと、すごく、いっ ぱい、入ってる……だって、こんなに重い……僕、何考えてるんだろ、こんなエッチなこと。 「……はぁ…そこも…してくれるんだ」  明日太の言葉に、返事も出来ないままにはずむは愛撫を続ける。  右手を使った陰茎への上下の愛撫は段々速さを、強さを増し、リズミカルなものになってていく。  時折、さも偶然のようにはずむの人差し指が、すっと、亀頭の割れ目をなぞる。  いとおしいものに触れているような優しさで、はずむが自分の掌のうちにタマの部分を転がす。  そんなイレギュラーな快感を加えられるたびに、明日太は腰を震わせ、声を洩らす。  それでもまだ明日太のものは張り詰めたまま、血管を浮かび上がらせている。 「まだ、駄目そう?」 「あぁ、すごい気持ちいいんだけど…もどかしいぐらいに出ないんだ」  はずむの脳裏に宇宙仁との先程の会話が浮かぶ。 「…そう言えば…絶倫丸Zって言ってた…」 「今、何か言ったか?」 「な、何でもないよっ……でも、もっとするって言っても…どうすればいいんだろ」  明日太は肘でゆっくりと自分の上半身を起こしながら、話し掛ける。 「なぁ…はずむ…」  とまどいの表情を浮かべながらはずむが明日太の方に顔を向ける。 「え、何?」 「……なぁ…はずむの…胸に触っていいか」  はずむは一瞬、明日太が冗談を言っているのかと思った。けれども、明日太は真剣で、女の子を見る 目ではずむの事を見つめている。 「そんな…だめ…だよ」  明日太が穏やかな声で続ける。 「俺に触られるのは、嫌か」  顔を俯かせ、もじもじと呟くようにはずむは答える。 「――だって、前にとまりちゃんが」  はずむの言葉の上から被せるように明日太が言う。 「俺の言葉は……とまりのより軽いか?」 「え――」 明日太の言葉にはずむは固まる。  その不意をついて、明日太がはずむを抱き寄せ、髪を撫ぜる。それから、耳元で囁く。 「知りたいんだ、女の子に触れたいんだ…俺をもっと興奮させてくれよ」  いつもと違う明日太の口調にはずむは逆らえずにいた。 「……」 「答えがないのは…いいって事だよな」  勝手な解釈であることを自覚しながらも、明日太は自分の衝動を押える事はできなかった。 明日太の腕の中にはずむがすっぽりと収まる。  はずむの 背中に手を伸ばし、ジャンパースカートのファスナーに触れる。  シャーという静かな音と共に、ファスナーはゆっくりと下ろされていく。 スカートの背中がはらりと開いた。  明日太は髪に触れていたほうの手を放し、はずむのうなじをなぞり、スカートの右側の肩口に手を伸 ばし、脱がせる。それから、逆の手で、もう片側へも触れた。 「…あっ…」  はずむの弱々しい驚きの声と共に、すとんとスカートが落ちる。 「ブラウスも、脱がなきゃな」  明日太はそう呟いて、右手でボタンを丁寧に外しながら、左手の指先ではブラのホックを探し、背中 をなぞる。  そんな指の動きに、目をぎゅっと閉じ、背筋を震わせながらはずむは言う。 「……くすぐったい…明日太…」  その言葉は、はずむが今出来る精一杯の抵抗なのかもしれなかった。  明日太はそれでも手を止める事もなく、ブラウスを脱がせながら呟く。 「女の子って柔らかいんだな、こんなに……」 「……んっ…」  背中の愛撫と、耳元への囁きという刺激に、はずむはつい、吐息を洩らす。  ホックが外され、胸が露わになる。 「……っ!…」  それでもはずむは慌てて胸を隠そうとしたが、明日太の手が両胸を掴む方が早かった。  軽く手に力を込めながら明日太が呟く。 「思ってたとおりだ、はずむの胸、綺麗で、それで柔らかくて、でも、それだけじゃなくて」  両の手で優しく揉みはじめる。 「こうやって揉んでるだけで俺、気持ちよくなりそ…」  呟きながら時折、指を滑らせ、明日太ははずむのきめ細かな肌の滑りを楽しむ。  はずむは自分が乳房への愛撫に感じてしまいそうな予感に怯え、明日太に小さい声で訴える。 「……だ、駄目…だって…ば…」  その言葉に気付かない振りをして明日太が言う。 「続けて、はずむ」 「えっ?」  明日太は乳房を掴んだままの姿勢でベッドに再び倒れこむ。 「俺のも、してくれるだろ?」 「…うん」  はずむが再び愛撫を始める。更に細やかな指の動きで。  乳房を揉まれ、恥ずかしそうに、赤い顔で薄目を開ける姿が明日太にはよりエロティックに映る。  明日太は自分の快感だけでなく、はずむの事も意識した指の動きを見せ始める。  優しく、時に強く、胸を揉みながら、人差し指でくりくりと乳首を責める。 「……あ…ん…」  控えめな喘ぎ声が、きゅっと口を閉じているはずの、はずむの口の端から漏れる。 「駄目、そんなに乳首いじったりしたら…」  そこまで言って、はずむは目を閉じ、俯く。言葉には出さなくても、熱い吐息、わずかにくねらせる 腰、切なげな表情、それら全てから、どんなに感じてしまっているかがわかる。  はずむが乱れゆく姿を、目を細めて明日太は見つめる。 「気持ちよくなっちゃう?はずむも、一緒に感じてくれるのかな」 「駄目…だってば…」  口ではそう言いながらも、自分が感じていることを伝えるかのようにはずむの指の動きが速くなる。  俯く胸元に汗を伝わせるはずむを見ながら明日太が言う。 「……はずむ、騎乗位ってこんな感じなんだろうな」  半ば胸を愛撫される快感に陶然となりつつあったはずむが、明日太の言葉に我に返り、答える。 「――そんなの、知らないよ…」  素っ気無い言い方とは裏腹に、まだ目を潤ませ、頬を上気させるはずむを見て明日太は更に昂ぶる。 「はずむ…今日のお前…すげえ可愛い」  明日太は胸から今度ははずむの太腿に触れると、そのままスカートの中へと自分の手をなぞり上げて いく。指先を下着の中へもぐりこませようとしながら、明日太はもう我慢できないといった調子で言葉 を吐き出す。  「なぁ、俺、お前の中に入れたい…思いっきり、中で動かしたいよ、それで…」  指先にショリっとした毛の手触りを感じる。なおも秘所を求めるように明日太は指を動かす。 「そうしたら…俺、いけそうな気が……」 「――駄目、だよ」  はずむは愛撫していた手を止め、明日太の両手に重ねる。悲しげな表情を見せながら、言う。 「……セックスまでしちゃったら、僕たち、戻れなくなっちゃうよ…そんなのはやだよ…」  明日太は『そんなことぐらい』と言おうとして、口をつぐむ。はずむの真剣な瞳を見てしまったから だ。 「はずむにそんな顔されたら、俺は何にも言えないよ」  いつだってはずむの本気には結局、俺は逆らえないんだな、と明日太は思う。 「ごめんね、明日太…」 「じゃあさ――」  明日太はそっと手をはずむの頬に触れ、そのまま親指で唇をなぞりながら、言う。 「こっちでしてくれないか」 「それって……」 「――口でして欲しい…」  困ったようにはずむは俯く。せかす事無く、明日太はただはずむの顔を見つめる。  ゆっくりとはずむは顔をあげ、少し困ったような眉の形のまま、それでもきっぱりと言った。 「わかった、…してあげる」 「本当か?」  はずむはコクリと頷いた。それから息がかかるほど近くまで自分の顔を明日太のほうに寄せると、小 さな声で言った。 「でもね――誰にもないしょだよ…二人だけの秘密だからね…」  ゾクリ。  普通に言ったに違いないはずむの囁きに艶っぽさを感じ、明日太は背筋を震わせる。 「……明日太?」 「あ…あぁ。勿論誰にも言わない。だから、はずむ、俺のをしゃぶって…」 「――しゃぶってなんて、そんな言い方しないでよ…」 文句をつけながらも、はずむは右手で明日太の物を軽く握り、自分のほうへ引き寄せるようにし、自 身もまた顔を近づけていく。頬にかかってくる自分の髪を耳にかける。  明日太がはずむの頬に触れながら言う。 「はずむ…その髪を耳にかける仕草、エロくていい」 「…恥ずかしい事言わないで」  唇を開く。鮮やかな桃色の舌が姿を見せる。まるでなめらかな生き物のような。  明日太はそれを見ただけで、息をなお荒くする。 「……あすた…ほんとうに…しちゃうよ?」  はずむの息もまた整わないのは、羞恥のためばかりではないのかもしれない。 「ん……」  はずむは舌をなおも突き出す。それから……ピトッ。陰茎の根元に当たる。 「…あ……!」 今まで経験の無い快感に、明日太は声をあげる。と、同時に陰茎が元の位置に跳ね上がろうとする。  しかし、はずむはそれを許さず、しっかりと手に捕らえたまま先端の方まで、ゆっくり舐めていく。 「は、はずむっ…」 「逃げてたら…駄目だよ、明日太…それじゃ…イケないでしょ?」  上目遣いにはずむが吐息交じりに囁く。その色気ある表情に明日太の鼓動は高鳴る。 「あ…あぁ…でも…」  はずむの五指に絡め取られたまま、裏筋から舐め上げられていく。  明日太が声を洩らすより早く、はずむの舌の先端はカリの周囲をなぞる。 「…く…うぁ…」  再び亀頭がはずむの唾液で湿らせられる。尖らせた舌が亀頭の先に滲む液を舐め取り、そのまま割れ 目に潜り込んでいく。明日太は喘ぎながらつぶやく。 「…お前の、フェラ……凄い、凄い上手いよ」  はずむの指で、舌で思うままに自分のものを弄ばれ、快感を与えられる。そんなマゾ的な歓びに抗え ない。明日太は更なる快感をねだる。 「…このまま、俺の吸って……唇で、しごいて…はずむ」  ハァッと一つ甘い溜息をついてから、はずむは答える。 「う…んっ」  キスをするように明日太の亀頭の先端に近づき、柔らかな唇が触れる。  それから、はずむはゆっくりと唇を開き、それにつれて陰茎が口中へ飲み込まれていく。 「本当に、はずむの口に、俺のが……」  明日太の言葉が終わらぬ内にはずむが上下運動を始める。  しっかりと閉じた唇が陰茎を締め上げ、ほどよく表皮を刺激する。  けれど、明日太が受ける快感はそれだけではなかった。  はずむは頭を上下に動かすたびに、口の中で自在に舌も動かしてみせる。くりゅくりゅと陰茎を丁 寧にねぶらせる。  口一杯に明日太のものを含むとフクロに感覚が伝わるほどに激しく陰茎を吸い上げる。 「ん…くっ…こんなに」   もう限界ぐらいに張り詰めていたはずの明日太のものが更に膨らみ、勢いを増す。 「ん、ぐっ!」  明日太が思わず声を上げる。と、同時にはずむが口を明日太からはずし、驚いたように言う。  「うそっ……もっと大きくなるの?明日太の」 「それだけ、気持ちいいんだ、俺…もう出ちゃうかも」  はずむは目を細めて明日太には妖艶ともとれる笑みで言う。 「――うん、出して…」  再びはずむがフェラチオを始める。懸命にする姿を明日太はじっと見つめる。 「はずむ…」  明日太の手がはずむの頬に触れ、そのまま顔にかかった髪を耳に掛けてやる。  はずむが目だけ明日太のほうへ向け、又、先程見せた笑みを浮かべる。   不意に明日太の頭の中に火花が走る。ただ、この口の中にぶちまけてやりたい、そんな欲望に明日太 は支配される。はずむの頭を両手で挟みこむ。腰をはずむの方に突き出す。 「……ん!」  慌てて、はずむは明日太の手首を掴むが、その手は頑として外れず、明日太はそのまま腰の動きを 止めることは無い。  「…はずむの口が、気持ちいいから…」  荒い息を吐きながら明日太は言う。その言葉が乱暴な行為の免罪符になるかのように。 明日太は恐らくは本能のままに、はずむの頭を掴んだまま喉の奥へと自分のものを激しく突き続ける。 「んっ!……ん!…んーっ!…」  声にならないまま、はずむは訴える。ぎゅうっと明日太の手首を握り締める。  そんな最中でも、はずむは必死に唇で陰茎を庇うように包む、歯を立ててしまわぬように。 「はずむ、俺…もう、出る…このまま…いい…よな」 「ン…グ…」  肯定とも思えないくぐもった声がはずむから漏れる。 「…グッ…精液出すよ…はずむの口に……ぐっ…うぁ…でるっ!」  ドクン、ビュクッ!ビュクッ!ビュクッ!……! 「う……んーっ!」  堰を切ったように勢いよくはずむの喉に熱い精液が溢れ、同時に、激しい明日太の脈動を口の中全部 で感じる。  口の中で明日太が暴れる。反射的に口を外そうとするはずむの頭をを明日太はしっかりと上から押 さえ込む。 「ん、う…う…ん…」  まるで自分も一緒にイっているかのようにはずむの背筋から尾底骨までにかけて、快感が走り抜けて 行く。体の力が抜ける。  はずむは奥に注ぎ込まれる精液の勢いに、吐き出すことなど考える余裕も無いまま、ただ必死に喉に へばり付いてくる精液を飲み下していく、時折、塊に感じるほどの濃さを感じながら。  ドクドクと精液がはずむの口内に注ぎ込まれていく。明日太の全身の震えはとまらない。 「すごい……はずむ…こんなに…いっぱい、お前の中に…でてる、よ――」  そんな呟きの後、ふっと明日太の手の力が緩む。  はずむは急いで手を振りほどき顔をあげ、目尻に涙を溜めて訴える。 「ひどいよ、明日太ぁ。僕、ほとんど飲んじゃっ…明日太?ちょっ……」 「……すぅ…くぅ…くぅ……」  明日太は安らかな寝顔を見せていた。 「……もうっ」  ぼやきながら、はずむはなんとなしに自分の喉に手を当てる。まだ残る白濁液の余韻。  舌の根にかすかな塩味を感じる。僕、明日太の味を知っちゃったんだ……どこか痺れたような頭で                   ぼんやりとはずむは考えた。 「ふむ、放出しきって、緊張が解けたようだな」  はずむはギクリと振り返った。  いつのまにか、部屋に入ってきた宇宙仁が二人の様子を眺めていた。 「……まさか、見てた?」 「いや、別所で計器の反応のみ見させてもらった。流石にこちらの落ち度の事で観察までさせてもらう のはまずいかと思ったのでな」 「…なら、いいけど」  はずむは明日太の方を見て言う。 「もう、明日太ったら、あんなに僕に無理させて……」  口元を緩め、何とも幸せそうな寝顔。  怒った顔をしようとしたが、その顔を見ると、つい、はずむは笑ってしまった。   宇宙仁が腕組みをして言う。 「彼には夢でも見たと思ってもらおう」    *   *   *   *   *   *   *   *   *    「おはよ!はずむ」  翌日。学校へ向かうはずむの背後から、妙に元気な声が届く。 「おはよう、明日太」  今にもスキップでもしそうな勢いの明日太を横目で見ながら、はずむが言う。 「何か機嫌よさそうだね」 「そう見えるか♪」 「――夢見でも、良かったとか」  僕は昨日、眠れなかったけどね、心の中ではずむは呟く。  精一杯の皮肉がこもったはずむの言葉に、うかれる明日太が気付けるはずも無く。 「え、いやぁそんなところかな。ほら行こうぜ」  何気なく肩に回してきた手を、はずむは思いっきりつねり、ついでに明日太の足を体重を かけて踏んづける。 「い、いで〜っ!」  足を抱えて跳ねる明日太にはずむは言う。 「ほら、学校遅れるよっ!」  明日太は自分のほうを振り向きもせず、すたすた歩くはずむを慌てて追いながら。 「おっかしーなー。俺、顔に出てたかな」  首を傾げ、右手で軽く顔を拭いつつ呟いた。

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