第10話
災いを呼ぶ写真

「楠瀬先輩!!」
 つばめはつぶらな瞳に涙を浮かべながら、一番大切な人の名前を叫んだ。
「どうして……そんなことをなさるんですか!?どうして!?」
「仕方ないんだよ、つばめ。もう、俺にはどうすることも出来ないんだ」
 慎一は力なく首を横に振り、相手を見つめる。
「つばめ、君にはすまないと思っている。でも……」
「言わないで!!」
 つばめは最後の言葉を拒絶した。
 大粒の雫が、慎一を見据える瞳からポタポタと零れ落ちてくる。
「楠瀬先輩、こうなってしまった以上、貴方には『対ERICO法』を適用させていただきます」
「対ERICO法?な、なんだいそれは?」
 慎一は表情を強張らせた。脂汗が全身から噴出してくる。
 つばめはまるで感情を押し殺すかのように、涙声で言った。
「第一条。『エンジェルショップERICO』に関係する悪巧みに関与したものは、いかなる場合でも令状なしに犯人を逮捕することができる」
「えっ?」
「第二条。相手が『エンジェルショップERICO』の関係者と認めた場合、かつ何かしらの計略が張り巡らされている可能性がある場合は、自らの判断で犯人を処罰することができる」
「はぃ!?」
「第二条補足。場合によっては、抹殺することも許される」
「ま、抹殺だぁ!?」
「第三条。『エンジェルショップERICO』討伐隊は、人間の生命を最優先とし、これを顧みないあらゆる命令を排除することができる」
「は、排除って……」
「第六条。子どもの夢を奪い、その心を傷つけた罪は特に重い」
「俺はそんなつもりは……」
「第九条。『エンジェルショップERICO』討伐隊は、あらゆる生命体の平和を破壊する者を、自らの判断で抹殺することができる」
「……第三条と第九条、矛盾してないか?」
「楠瀬先輩っ!!」
「はい!!」
 つばめの一喝に、慎一はビクッと身を竦め、背筋を正した。
 つばめは竹刀を身構える。
「私……楠瀬先輩のこと信じてたのに……信じてたのに!!」
「うわああああっ!!」
 慎一は無我夢中で駆け出した。
 右手に、恵理子が盗み撮りした着替え中のつばめの盗撮写真を握り締めながら……


トップへ