抜粋

 その時、リューンはちょうどそばに置いていた夜仕えの少年を街へ返したところだった。ならばワヤンにその代わりをさせるかと思い立ちはしたが、彼はその時までうまれてからの数年をのぞいてずっとリューンのもとで、同年代の子供のいない状態でたった一人で生きてきていた。夜仕えの少年がいったい何をする仕事かなどと言う事は、到底分かりはしない。下手をすると、男女の営みでさえ知っているかどうかが疑問だった。
 だからリューンは、ワヤンを好みに仕立て上げる事にした。きっとそのためにあの雪の中で足を止めたのだと勝手に解釈して、どんな風にしようかと楽し気に計画を練る。
 そう、いろんな体験をさせてやりたい。だがもちろん、手を出すのは自分が最初にしたかった。どうしても最初にこだわるわけではないが、出来るのならその楽しみはぜひ味わいたいと思うものだ。その矛盾を抱き合わせるために、しばらくリューンは瞑目してアイデアを練った。そうして目を開いた時には、なにやらいたずらを思いついたような表情になっている。