抜粋

「……煙いよ、この部屋」
 コンコンと扉をたたく音がして、結局返事を出来ずに固唾をのんで待っていた武史の目の前にひかるが表れた。
「悪い」
「一体何本吸ったの? 控えなって言ってるのに。しかもベッドの上で」
 ぶつぶつと文句を言いながらもひかるは部屋に入り、扉を閉めた。ゆっくりと歩いて、座る武史の目の前に立つ。
「意味、分かってるよな?」
「分かってる」
 目の前の少年の手を取って目を見つめれば、微かに震える声が帰ってきた。そして、握った手も微かに震えている。やはり怖いだろうかと少し気の毒な気持ちにもなって、そっと腕を引いて自分の隣に座らせた。
「今まで悪かった」
 良いながら、隣に座る少年の肩を抱き、唇を重ねる。ゆるりと舌が唇をわって少年の中を探るように動き、逃げようとする腰をとらえ、舌を絡め取る。そんなほんの数分の口づけから解放された少年は、相手の方に額を預けるようにして熱い息をつくと、ぼそりとこぼした。
「…………たばこ臭い……」