抜粋
「さっき三原に相談されてねぇ」
正確には相談させた、だったが。
「三原さ、すきなやつがいるけど、告白しようかどうしようかって……」
正確には誰もそんな相談をされていない。口からでまかせだったが、どんな手でも使ってやろうと決心してしまった本多に、遠慮の二字はなかった。
「俺がそいつと仲いいの知ってて、そういうことに偏見がありそうかって聞いてきた」
これは半分は本当。八木がそう言うことに偏見があるかどうか、正確には告白されても今まで通り友達付き合いをしてくれるかどうか。分かっているとはいっても三原は気にしていた。告白するつもりなど更々無いというのに。
それに八木と本多の仲がいいのは、紛れもない事実だ。
「……相手、知ってるのかよ、お前は」
三原は言わなかったけどね、と本多がうなずくと、八木は掴み掛からんばかりの勢いで迫ってきた。名前を明かすことなくどうややればその相手が偏見を持つかどうかが分かるというのか? 話の矛盾に、八木は気付きもしない。
「誰だよ、それは!」
本多が黙っていると、八木は本当に掴み掛かり、グラグラと本多を揺する。
「言えよ。誰だ、その相手!」
「言えるか、ぼけ。聞きたきゃ自分で直接聞きやがれ」
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