抜粋
「どっちって、何が?」
うっとりと、子供騙しの口付けだけで酔うことの出来る幸には過ぎた質問だったかもしれない。そう思っても弘人はその疑問を引っ込める気にはならなかった。この夢見る乙女(?)に現実を突き付けてやるのは、思いのほか楽しいのが分かったから。
「そりゃ、セックスの時。無駄に重ねた年令でいきゃお前が男役だけど、性格でいくと、絶対にあのガキが男や……ったー。何するんだよ、てめぇはっ」
幸の友人として弘人は大地に会ったことがある。子供っぽさの少ない、年令を感じさせない大人びた子供。それが大地の印象で、あまり可愛いとは思えなかったが、骨はあると思った。そんな幸の相手を知っているからこそ出てくる予測だったのだが、最後まで口にはさせてもらえない。言いかけたところで幸が、真っ赤になって弘人を殴り飛ばしたのだ。みなまで言わせるわけには行かない、とその必死の形相が語っていた。
「そんなっ……そんなの、まだ早いっ」
大くんはまだ小学生なのに、とぱくぱくと口をひらく。せめてあと少し、そんな色事は大地が中学生になってから、なんて思っていたことは心の隅に押し隠して。
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