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推敲と投下済みの方

取り敢えず投下が終わってホッとしていますのでざっくりと。

推敲って言うか色々綿パンツとかそういうのを追加前の文章は前日の日記にもありますので比較してみたい方はどうぞ。
まとめさんにタイトルを付けて貰ってから当店にも収納します。
時系列的には君とのリゾナンスの数か月後、もう6月ですのでまあ今からだと…今年の年末位のお話だと思いねぇ(謎設定乙)

…あっ、リゾナントの方も纏めないとorz

全てが希望通りなものが出来るかどうかは別として。
心を乱さないように大人なのよ!系の作品を作れてる間はCPヲタとしてきっと問題ない。
忙しいのは自分にとってはきっと良い事だと思う事にしています。
それでは推敲と追加後の全文をどうぞ。
前後の投下時コメントも含めたら22,000字もあって流石に草不可避。
アフォか。

あ、安定のみやもも(R-18)ですが切な甘いのが苦手な方はお気を付けて。まあ、最後甘ければどうでも良いよね派です。

※ちなみに作中に出てくるCDの『The Flame』は実際に存在する洋楽のタイトルです。Cheap Trick の The Flameってやつです。

https://youtu.be/muhFxXce6nA

直訳だとただの炎って事なのですが、意味を持たせた和訳だと永遠の愛の炎もしくは恋人って意味ですんで。内容も女々しいけども。
……まあ雅ちゃんったらロマンチストって貰った時のももちゃんに思われてれば良いのにって思って付け足して書きました。
その辺も誰か書いて!ってまぁ、自分で書くしかないんだけどさw

尚、熱い感想を掲示板でのレスやコメント等で頂くと次回作にもやる気が出ます。あ、本スレ内で誤字脱字してた所は直しました。


「おーい、みやー」

一人暮らしだしいつでも来て良いからと以前言っていた住人の名を呼び、三度目のインターホンを押す。
しかし相変わらず反応は一切無い。

お仕事終わりに寄ってみただけだし、
そもそも借りっぱなしのCDを返しに行くからねって事前連絡もしていない。
折角美味しそうなプリンも見つけたのに、な。
タイミングが悪かったかなと出直そうかとも思った。

しかし、ふと何気なしにドアノブを握って回してみると、それはなんの抵抗も示さなかった。
それをそのまま引っ張ってみても、同様に抵抗はなく、すんなりと開いた。

なにを思ったか、桃子は一度振られたはずの相手の家に勝手に踏み込もうとしていた。
自分の意思に関わらず足が勝手に動いているような気もした。
だがこの足を動かしているのは自分の未練にほかならない事ぐらい、わかっている。
それでも、屋内へと進もうとする足を止めることは、できなかった。

「みやー……いないの?」

すこし遠慮気味に、もう一度呼びかけてみる。
だがやはり反応はない。
いないの、かな?とも思ったが、桃子が来る時はいつも雅が居る時で、決まって鍵が掛かっていない。
家の中から物音もしないし寝るには明らかに早い時間だが、昼夜が逆転してる時もあるし既に寝ている可能性も高い。

桃子が脳内で採用したのは、後者の可能性であった。
――それは、このプリンとCDと一緒だ。部屋に入る口実を、みやに会う口実を作る為じゃないのか――
素直になれないらしくもない良心にそう指摘されるも、それでもゆっくりと寝室へ足を進めた。


おそるおそる、一番奥に位置している寝室のドアを開ける。
人の気配はなく、ベッドを確認してみてもやはり誰もいない。

はぁ、と桃子は落胆したようなため息をつく。
どうもみやはタイミング悪く出かけているらしい。
それが分かると、桃子は買って来たプリンを置いてすぐそばのベッドに腰掛け、しばしぼんやりとしていた。

出直すべきか。というより、出直すべきだろう。
そういう考えはあったが、おろした腰を再び上げる気にはなれなかった。

そうしてみやに会って果たす要件はと言えば、借りっぱなしだったCDを返すだけなのだから、
そのままメモでも書いてCDとプリンを置いて出て行けば済む話であることも、理解していた。
それでも尚、桃子は動けなかった。

住人が居ないのに鍵が開けっぱなし、折角プリンも持って来たし、
一人暮らしなのにみやが不用心だから仕方なく待ってた、うん、これで行こう。

「……はぁ」

勝手な理論で自分を納得させた所でもう一度ため息を付いて、そのまま仰向けに倒れる。
静かな部屋の中に、時計の針の音がやけに響いている。
その数を数えてみたが、なんだか虚しくなってやめた。

「……あ」

桃子は、ふと気がついて身を起こす。
そして、しばらくベッドを見つめた後、赤面する。

「……よく考えたら、なんで私みやのベッドで勝手に寝てるの!?」

雅が桃子の物を私物化すること、そして逆も。今に始まったことではなかった。
『ももの物は私の物』なんてことを平然と言っていた事もあったぐらいだ。

だが、今は事情が違う。
桃子と雅の関係はある日を境に変わってしまっていた。
それに、そのことを差し引いても、
桃子には『勝手に雅のベッドで眠る』という行為が大変『いけない』ことだと感じられた。

「えーと……」

思わず、あたりに誰も居ないのに意味もなくつぶやいてしまう。
雅のベッドに眼をやると、さっきまでは綺麗にベッドメイクされていたことが伺える。
だが、桃子がベッドでいつもの様に寝転がったという証拠は、しっかりと残ってしまっていた。
これを何事も無かったような状態に桃子が今から戻す、というのは無謀な事に思えた。

「えーい、もういいや!」

今日は覚悟を決めて来たんだから。
半ばやけくそ気味にそう言うと、桃子は再び布団へ飛び込んだ。



その、十数分後。

マンションの階下でのちょっとした用事を終え、雅が自分の家へ帰ってきた。
いつものようにドアノブに手をかけ、ドアを開ける。


そういえばなぜ、このドアの鍵は開けっ放しになっていたのか。
そもそも最初からこの部屋には鍵と呼べる固形物はこの世に存在していないのだ。


雅は、何事もなかったかのように、自然に静まり返った屋内へと足を踏み入れた。
昼間だというのにどこか薄暗い部屋で、愁いを帯びた顔をしたままの雅は一息つく。
それと同時に、ふと違和感を覚えた。
その原因である少しだけ開いている寝室のドアに、すぐに気がついた。
確かにさっきまでの記憶の中ではちゃんと閉めてあったはず。

ただの記憶違いで最初から閉め忘れていたのか、それとも泥棒にでも入られたか。
しかし泥棒なら家に入った時点で何かしら物が散乱しているはずである。
そもそもセキュリティはしっかりしろと言われて、指紋認証のオートロックにしてある。
通常の装備の泥棒では外から窓でも割らない限り入ることはおろか、
そもそも侵入者に対しては警報が鳴るらしいし、即座に出る事もまず無理だろう。

あれこれ考えていたが、部屋を確認すれば少なくとも泥棒かどうかは分かると、
万が一の為にと掃除用のモップを手に、雅は開きかかっていた寝室のドアを開けた。

そして、既視感と驚きとともに慌ててドアを元に戻した。

そこには、傍に来なくなって久しいはずの、よく見知った女性の姿があった。
例え何年経ったとしても見間違えるはずもない。
雅は、とりあえず気付かれないようにゆっくりとドアを閉めた。

ゆっくりと、大きく深呼吸をする。
鼓動が早くなるのを、少しでも鎮めようとした。
そして、今の状態に頭の理解を追いつかせようとする。

しかしこれで、オートロックの扉が開いていたのも寝室のドアが開いていたのも合点がいった。
住人である雅は勿論だが、桃子に対しても開錠するようにしていたままだったのだから。

しばらく雅は扉の前で佇む。
そして、これからの行動、展開に思いを巡らせていた。

桃子が一人で、自分の意志で、雅の元へ再びやってくるとは、思いもしていなかった。
一度、恋人関係を打ち切った相手と顔をあわせるのは、少々辛い。
だがそれは、決して桃子のことが嫌いなわけではなかった。

少しだけドアを開けて、部屋の中をのぞき込む。
桃子は、雅の方向から背を向けて寝転んでいた。

桃子の方からは、今のところ何の音も無い。
ドアをそのまま開いて、中へ侵入する。
雅は耳を澄ましながら、ゆっくりとベッドへと歩を進める。

桃子は無防備に寝息を立てている。
その無邪気な寝顔は、雅が以前から知っているそのままであった。

どうしたものかと、しばらく雅は思案していたが、
どうもこうも、起こすしかないかと考え至った。

だが起こすまでもなく、桃子は起きそうな素振りを見せた。
少し雅は身を離し、桃子を見つめる。

目を覚ましかけた桃子は、雅の存在に気づき目を向ける。

「おはよう、もも」

おはよう、と、寝ぼけた声で言ったのが聞き取れた。
そのぼんやりした反応と可愛い声には少しも変わりが無くて胸の奥がざわついた。

桃子が飛び起きたのは、その数秒後だった。

「あ、みや……えと、その、これは……」

ももの顔は、真っ赤になるかなと雅は思っていたのだが、
それを通り越したか、真っ青だった。

「ごっ、ごめん、その、CDを……返しに来ただけだったのに……」

「……なにをそんなに慌ててるの?」

ごく自然に、雅は言葉を返した。
確かに一時的に恋人関係だった相手との話であるとはいえ、
桃子がただ寝ていただけでここまで慌てなくてはいけない理由が、雅には見当たらない。
やはり何かやましいことがあるのかとさえ思ってしまう。

「まさか、何か変なことでもしてた?」

「へ、変なこと?いや、ももは寝てただけだよ?」

訊いた雅の方が恥ずかしくなるような、全く素の返し方であった。
桃子の口ぶりから、本当に寝ていただけだということがはっきり伺える。
実際、桃子の服装は、せいぜい寝ていたためについた皺ぐらいの乱れしか無い。

「あ、その、ごめん、みやのベットなのに、勝手に寝ちゃって……」

「……ああー、そんな事?別に気にして無いから。
 というか、いつも疲れ果ててはここで寝てたのに、何を今更」

「え、ああ……そんなもん?」

「……なに?他になんかあった?」

しばらく、二人の間に沈黙が流れる。
その沈黙にすぐ音を上げて、桃子は何かを喋ろうとするも、
それがはっきり言葉になるには数秒ほどかかった。

「……あ、いや、絶対嫌われたんだと思ってたから、ちょっと、拍子抜けしちゃって……」

桃子は苦笑いとも照れ笑いともつかない笑いを浮かべて、弁明する。
雅はそれを、複雑な心境で見ていた。

「あ、それとも……もう、ももの事なんて、みやはなんとも思って…」

「そんなことない」

唐突に眉を落としはじめる桃子に、雅は即答する。
自分でも驚くぐらいに、すっとその言葉が出てきた。
当然、桃子も驚いたのか、声も出ない様子だった。

再び、沈黙が場を支配する。
それを破ったのは、今度は雅だった。

「あ、その……確かに、恋人関係を打ち切ったのはみやだけど……。
 でもあの時も言ったけど、別にももを嫌いになったって訳じゃないから。
 ももは何も悪くなんてないし、…自分勝手なみやがいけないだけだから」

「……そ、そう」

だがそれも一時のことで、またすぐに気まずい沈黙に引き戻される。
もう耐えられないと言う感じに、桃子は机の上に置いたCDと紙袋を手にとる。

「あ、あのさ、返しに来ただけだから。…これ、ありがと。
 あと、プリン美味しそうだったから、ついで!折角だし、食べてみてよ!
 ……じゃ、じゃあ、確かに渡したから!」

そう早口でまくし立てて雅の両手に押し付けるように渡すと、
桃子は自分の鞄をひっつかみ、ドアへ向けて歩き出そうとした。

「あ……待って!もも!」

雅は、思わず呼び止めていた。

「……お茶ぐらい、飲んで行きなよ。……プリン、2個あるし。みや1人で2個も食べられないから」

「……え、……あ。でも」

「良いから。さっさとその辺に座りなよ」

これ以上の沈黙と桃子との終わりの見えない押し問答を避けるように、
有無を言わさず雅は背を向けて、キッチンへと消えていった。
残された桃子も、しばらくなにやら沈んでいたが、
その後に目をキュッと瞑ると、リビングへと足を向けた。


雅がお茶の準備をする、カチャカチャと言う音だけが聞こえてくる。
それもいずれ止み、代わりに雅の足音が近づいてきた。

「はい、どうぞ?お砂糖は2つで良かったよね?」

「あ、うん、ありがとう」

紅茶とプリンが机に並んでからは、味の感想と感謝を言う位でまた沈黙の時間であった。
雅は、桃子の様子を伺いながら、少しずつ紅茶を飲んでいた。
桃子は、雅の方をじっと見たり、かと思えば視線をそらしてそわそわしたりと、落ち着かない様子であった。

雅は、この先のことに思いを巡らせていた。

この紅茶を飲み終わったら、この溶ける様に甘いプリンをももが食べ終わってしまったら。
もう二度とももはこの家には来ないような気がした。
気がするだけでなく、考えが進むにつれてそれは確信めいたものに変わっていった。

見ると、ももの紅茶もプリンも三分の一も減っていなかった。
甘い物が大好きで、普段は我慢していてもいざとなったら食いしん坊なはずのあのももが。
ももの心情は、それから簡単に推し量れた。

だが、雅の胸中は複雑だった。
ももに早く帰って欲しくもあり、このままずっと帰らないでいて欲しくもあった。

雅の相反する思いは相殺し、その結果特に大したことは喋れずにいた。
そんな雅の雰囲気が、桃子の言葉も押しとどめていたのだろう。
天気の話や、食事の話、最近どう?元気?とかいった、何でもない会話がぎこちなく続く。
そしてそれらの殆どが、一言二言、多くても三回程度で打ち切られた。

間が持たずに、お互いに何度かプリンを載せたスプーンと紅茶を口に運ぶが、
その頻度は目に見えて減っていき、しまいには紅茶を飲むふりさえしていた。

その間、雅は二人が恋人であった時のことを思い出していた。

体を重ねることはおろか、唇に深くキスすることもなかった。
撮影やらLIVE中のどさくさ紛れだったり、皆と一緒のおふざけの延長線で、
肩や腰を抱いたり隣に居たり、目線を合わせたりすることは誰よりも多かったけれど。
2人だけの時に手を繋いだことも抱きしめたことさえも数えるほどの、本当にプラトニックなものだった。
それでも、ただ一緒に居れるだけで、笑い合えるだけでこの上なく幸せだった。
雅は、そう記憶している。

アイドルを追及するももがそれらの行為を求めていないと勝手に判断していたからというのもあったが、
最後までそんな関係で、ももは不満ではなかったのだろうか。
そんなことが、雅の脳裏をよぎる。

すこし唐突なその考えの原因は、雅自身がそうだったからか。
実際雅は、桃子を思っての一人での行為にふけることが今でも少なくなかった。
立場が逆ならそうしてしまうかもしれない、と言う考えは否定できなかった。

実は、CDを返すなんて口実で、
未練を晴らしに、納得をしに来たのかもしれない――

そんな考えが、無いでもなかった。
だが、ももの事だ。それはないだろうとすぐに振り払っていた。

そのまま何もなければ、それはちょっとした気の迷いで済まされ、
すぐに脳内の混沌の彼方へ追いやられる程度の話だ。

そんな時だった。

ももが、突然、ゆっくりと立ち上がった。
何事かと思っていると、ももは雅の方へとゆっくりと歩いてくる。

まさか、と、雅は思った。
馬鹿馬鹿しいとさえ自分で思っていたような考えが、急に現実味を帯びてきた。

そうしている間にも、ももはテーブルを回り、雅の目の前にまで近づいてきていた。
自分の頬が急激に紅潮するのを、雅は感じていた。


どうしよう、まだ、心の準備が出来ていない。


などと考えるうちに、ももは雅の頭に両手を伸ばし、顔を自分の方へと向けさせる。
そして、雅の目をじっと見つめた。

「……みや」


ももの瞳の中に、自分の顔が映っている。
それは、自分とももの物理的な距離を示していた。

「あっ、な、な、何、もも!?」

動揺が明らかに声に出ているのを、雅自身感じていた。
情けない声だったが、取り繕っている余裕は無かった。

「……期待、させないで」
「え?」

そう一言告げて、ももは雅から手を離す。
また少しだけ、ふたりの距離が離れる。
だが桃子は変わらず、じっと雅を見つめていた。

「……多分、だけど。みやはももとはやっぱり友達でいたいんでしょ?」

泣きそうな声で、ももは告げる。
その声が、雅をひるませた。

「……だよね。恋人じゃなくなっても、即絶縁とは限らないよね。どこまでいってもメンバーだし。
 ……本当、昔から誰にでも優しいもんね、みやってば」

雅が何かを切り返す間もなく、ももの震えた声がそのまま続く。

「……でも、私には無理。どうしても、みやと友達にはなれないや」

ももの目から、一粒、涙がこぼれた。

「……やっぱり、わたしは、みやが、好き、なんだ」

それを皮切りに、ぼろぼろと、涙がとめどなく溢れる。

「やっぱり、どうにも出来ないよ……こんな気持ちを忘れろなんて無理だよ。……みやが大好き、なの」

搾り出すように言うと、それきりももは沈黙してしまった。

雅は、一瞬で胸がつまるような感覚に襲われた。
それは頭にまで昇り、冷静な思考を阻害する。

そして、

「っ……そんなの、みやだって大好きだよ!」

その感情は、言葉となって考えるよりも先に口に出た。
それだけではなく、目にも涙となって現れた。

その言葉には、言った雅自身が驚愕していた。
言われた桃子はというと、言葉の意味を理解するのに、脳が追いついていなかった。

しまった、と雅が思っている間に、桃子はようやく言われたことを理解する。

「じゃ、じゃあ……どうして」

言うまでもなく、桃子の言葉は理解できた。
雅は背を向けて、少しの沈黙ののち、口を開いた。

「だって……単純なことじゃない」

雅の声は、どこか弱々しかった。

「今はいいよ?でも、ももは。子供が欲しいっていつも言ってたじゃない……」

そこまで言って、雅の言葉は自身の涙に遮られる。
それでも桃子は理解したらしく、俯いてしまった。

こらえきれない雅の嗚咽が、しばらく響いた。
桃子はそれを見ながら、ただただ佇んでいた。

「……そっか、なるほど。……単純な話だったわ」

そう呟いて、桃子は机の上に置いてあったCDを手に取った。

「……みや、悪いけどやっぱりこのCD、もう少し借りておくね」

その声に、雅は顔をあげる。
その表情は、既に涙でぐちゃぐちゃだった。
だがそれにも構わず急に立ち上がり、桃子に詰め寄る。

「……もも、は」

「え?」

突然のことに驚く桃子に、雅はそのまま言葉を続ける。

「ももは、どれだけ単純で鈍いの!?
 なんでみやが別れてって言った理由を隠してたか、分かんないの!?」

「ちょ、ちょっと!」

詰め寄られた拍子に、桃子はCDを取り落とす。
そのCDのタイトルには『The Flame』――

「みやのために無理してまで一生添い遂げろなんてこと、ももにして欲しくなかったから……」

「あ……」

桃子はすぐには言い返せず、視線を落とした。
それと同時に、目頭が熱くなるのを自分で感じていた。

「……別に、みやのためなんかじゃないし、無理なんてしてない」

雅を直視することのできないまま、桃子はつぶやく。
雅に届かずにそのまま地面に落ちてしまいそうな、小さな声だった。

「はっ、そんなお情けみたいなバレバレの嘘はやめてよ。ももからみやに触れてもくれなかったのに?
 じゃあなんで、今更になって返しに来たの?それに……それは、あげるって言ったはずだよ」

「……い……、うそじゃ、ない」

桃子はうつむいたまま、ぽろぽろと涙を流していた。
涙を袖で拭ってから、再び言葉を続ける。

「……それこそ、単純な話だもん。
 ももにとってはみやが最初の恋人で最後の恋人、なんだもん。
 そのつもりで、あの時のみやがこれをももにくれたんだって分かってた!
 でも、どうして良いかなんて!みやにどこまで触れて良いのか、なんてももには全然分かんないよ。
 みやはいつも優しいから。ももの事をただ受け止めてくれてるだけなんだなって思ってたから。
 だって、一人になって……人生最期の時、『その時』に。やっぱりみやと別れたくなかった、
 ずっと一緒に居たかったって、なっても。みやの事、好きなのにって想ってても……遅いじゃない」

『その時』を想像してしまったか、桃子の目からは再び涙が溢れる。
最後の方は、完全に涙声だった。

「私は……自分自身が選んだ人生を諦めたくもないし、否定も後悔も、したくないっ……!」

「でも……」

ももの悲しい声に胸を痛めながも、雅は言葉を返す。

「……ずっと考えてたの。本当に、ももはこれでよかったのかなって、
 ももは男の人と結婚して、可愛い子供を産んで。可愛い奥さんになって、可愛いお婆ちゃんになって。
 ももが心の底から幸せになって生きて行くって選択肢もあるんじゃないか、って。
 このまま関係を続けて。みやが、もものこの先の未来を奪ってしまって本当に良いの、かなって」

桃子の涙につられたか、自分で言っていて悲しくなったのか。
一度止まりかけた雅の涙は、再び溢れ始めていた。
それを抑えながら、雅はどうにか言葉を続ける。

「……特に、ももを好きになってから、ももと付き合うようになってからもっと深く後悔した。
 それと同時に、ももには……そんな思いをして欲しくない、と思った。
 だから、ももの心と身体がみやの我儘で取り返しがつかなくなる前にって、ももの気持ちが。
 ううん…違う、みやの自分勝手なももへの欲求が、落ち着くまで離れていようって思ってたのに」

雅の言葉を聞いて、桃子まで胸が痛くなる。

「……そんなの……みや、そんな風に……」

二人の言葉は少しの間止まり、いろいろな、複雑な思いの涙に濡れながら、
二人して、ポロポロと泣いていた。

少しだけ、涙が引いたところで、桃子が先に口を開いた。

「でも……さ」

もう一度涙をぬぐって、桃子は続ける。

「そりゃ、絶対後悔しないなんてお互い言い切れないかもしれないけど……
 ……でも、それ以上に……当然、こんなにみやが好きなのに。
 生きてるのに、みやとお別れなんて絶対に嫌だし……」

「…………」

「それを抜きにしたって、このままバラバラに生きてって、この先いざ死ぬってなって、
 まだあれやってなかった、ああ、これもやりたかった……って思う方が。
 ……みやがこれから先、隣に居ないって方がももは嫌だよ」

「…………」

「それに……最初に言ったはずだよ、みやと一緒じゃなきゃ、ももは幸せになんてなれないって」

雅は、もうなにも反論できなかった。
ただ黙って、桃子の言葉を、告白を、聞いていた。

「だから……その、これ以上みやをこのまま泣かせたくない……てのも、なんか変かな」

「……そっか、ももはそういう風に考えてたの……」

そう答える雅の表情は、暗いままだった。
それを感じた桃子は、軽く息を吸った。

「そんな暗い顔しないでよ!
 みやの恐れているような選択肢には、未来にはならないし。
 ももはみや以外を選ばないし!選べるはずもない!」

これまでの空気を打ち破ろうとして、桃子は少し大きな声を出す。


『なっちゃんが仕事以外で心の底から笑わなくなった。絶対もものせいだから、早い所どうにかして』

言いながらそう佐紀ちゃんに言われた事を桃子は思い出していた。
何度もあった事じゃないけれど、しょっちゅう喧嘩しても仲直り出来ていた幼い日の懐かしい記憶と、
丁度雅から訳も告げられずただ別れてと一方的に言われて一ヶ月が過ぎた、昨日の事を。
ただ、雅には明るくいつも通りに笑っていて欲しい。
その気持ちは一緒なのに。ももだから任せるんだからね!って思いっきり背中を叩かれた時のあの笑顔を。

「なぜならこのももちさんは、いずれ大魔法使いになって、
 皆をシーンとさせるあのとびっきりの魔法以外にも一杯使えるようになって!
 みやがどう頑張ってももを拒否しようとも、何があろうとも傍に居てやるんだから!
 食らえ!みやはももの事をもっともーっと好きにナール!」

「な、なにそれ……ふふっ…あは、あっははは」

雅は、思わず笑みをこぼしていた。
さっき自分で、後悔しないとは言いきれないと言ったばかりなのに。全力で伝えてくる。
桃子の言葉に、根拠なんておそらく無いのだろう。でも、それでいい。
いつだって挫けそうな周りの人達をとびっきりの笑顔にして心を暖かくする為。ただそれだけだ。

桃子の気持ちは、十分過ぎる程雅に伝わった。
そして、雅の気持ちが、急に、僅かではあるが明るくなってきた。
もしかすると本当にももは魔法使いなのかもしれない、なんて思える程には笑う事が出来た。

それと同時に、雅はこんなことが以前にもあったと気づいた。
それも、二度や三度ではなく、数え切れるようなものでもなかった。
緊張し過ぎてどうしようもなくなった時、外部仕事で上手く返せなくて困ってしまった時。
そして一人でいると訳もなく寂しくなってしまう雅は、
いつも桃子の聡明さ、素直さ、強引さ、明るさに救われていた。

「ももには、みやが必要なんだよ?」

桃子を振ってからというもの、雅の心はずっと沈んでいた。
そしてそれは、深い場所まで触れられない桃子をあの手この手でようやく懐かせたのに、
突然一方的に突き放した罪悪感と勝手な未来への絶望からだけではなかった。

雅は落ちたCDを拾い、桃子に差し出す。

「……もも、このCDは今度こそあげるから」

「えっ?あ、えっと、良いの?」

「だって皆のアイドルの次は。みやの為に大魔法使いさんに、なってくれるんでしょ?」

「そ…そうだよ!任せてよ!」

CDを受け取って、桃子は軽くガッツポーズのようなものをして見せる。
涙の跡こそ残っているが、だんだんいつもの桃子の姿を取り戻しつつあった。
雅の心も、そこから元気を貰うように明るくなっていった。

しかし、突然桃子は真面目な表情になる。
かと思えば、急に桃子は赤面し、恥じらいの様子を見せた。
どうしたのか、と思って雅が顔を覗き込むと、少し桃子は目を逸らす。
少しの間ののち、桃子は再び雅に目を合わせ、口を開いた。

「…ねぇ、みや」

目を合わせて、少しふたりとも言葉が止まる。
だがそれは先程までのような気まずい沈黙ではなく、どこか甘さのあるものであった。

「その……さっき、大好き、って言ってくれたよね?」

「えっ!あ、ああ……た、確かに言った、ね……」

今度は、雅までもが赤くなった。

本来はももへ二度と言うつもりも無かった言葉を、勢いで言ってしまった。
そんな言葉を思い返すと、流石に恥ずかしかった。

「あ、あのさ……そ、それじゃあ……みや」

「…………」

あー、だとか、うー、だとか、言葉未満な、怪獣の子供の様な唸り声を上げる桃子を前に、
雅は愛おしそうに微笑んだまま黙って待っていた。
桃子の視線が助けを求めるようなものに変わっていったが、
それをじっと、雅は見守っていた。

「ももと、……ちゃんと、つきあって、ください」

「……本当に、みやで良いの?ももを一度傷つけたのに?……後悔しない?」

「しない!…みやじゃなきゃ嫌だ。……ももが好きなのは、
 何度考えたって、例え何度生まれ変わったって。いつだって、みやなんだもの」

「……ありがとう、もも。みやだって、ももの事が大好き、だから」

桃子の表情が、またパッと明るくなる。
それとほぼ同時に、雅が、そっと桃子を抱き寄せた。

「あっ、みや……」

「……本当はね、ずっと寂しかった」

少しだけ、抱きしめる腕に力を入れて、雅は、桃子の目を見た。

「ももの為だから、って思って強がってたけど、やっぱりももといないと元気が出ないの」

「そ、そうなの……?」

雅の言葉に照れ笑いを浮かべた桃子は、
それを隠すかのように雅を自分の方へ引き寄せ、逆に顔が見えないようにした。

「……もも、ちょっと、体温高い?」

「そ、そりゃ、そんな照れくさいこと言われたら……」

「ももの方こそ、……かなり凄い事言ってたけど」

これは顔どころか耳まで赤くなってるな、と雅は思ったが、
このままでは桃子の顔が見えない。

顔を見られまいと自分に張り付く桃子を、雅は引き剥がした。
桃子は表情を見られるのが少し嫌そうだったが、拒むこともできずにいた。
幾つになってもそんな風に可愛らしく恥ずかしがる桃子が、雅はどうしようもなく愛しくなった。

当然、我慢し続けた上にこんな状況で至近距離にありながら、
本当の意味で恋人になれた桃子の顔を見るだけで満足が出来るはずも無かった。

「――!?」

それは一瞬のことだった。
後は互いの唇に、感覚が残るのみ。

「あ……あ、あ、…………」

状況から、みや? と問いかけたいのだろうと思われるが、いかんせん言葉にならない。
桃子は、ただ金魚のように口をぱくぱくさせるのみであった。

一方雅は、してやったり、と言う表情を浮かべている。
桃子とは少し違っていたが、やはり顔は紅潮していた。

「……っもー!」

桃子の硬直がようやく解けると、少しだけ雅から距離を置いて突然叫びだした。

「い、いきなりチューするなんてずるい!」

「だって……前に付き合ってた時も、ももからキスしてくれたこと無かったじゃない?」

「う、あぅ、え、えっと……」

何か言い返そうと、桃子は頑張って言葉を探していたが、
なにも見つからないのか、少し拗ねたように雅から離れ、
落としっぱなしだったCDを机に置いて、そこにあった椅子に座る。
それを追うように、雅は反対側の椅子に座った。

「……もー、さっきまで泣いてたと思ったら、またももを手玉に取るんだから……
 なんなのみやってば。いっつも、ももより手慣れてますし?みたいなさぁ」

「そんな訳無いし、人聞きの悪いこと言わなーい。それに、泣いてたのはお互い様でしょ?」

完全に拗ねモードの桃子を楽しそうに暫く見つめていた雅だったが、
ふと、目についた紅茶が、完全に冷め切っていることに気づいた。

「……紅茶入れなおして、お茶菓子でも出すからさ。ご機嫌直してよ、ももちゃん?」

そこまで言って雅が立ち上がろうとしたところで、
桃子がなにやらぼそっと口にした。
聞き取れるようなものではなかったので、雅は再びそれを聞こうとする。

「ん?」

「……そんなのは、いいから……」

桃子は少し目をそらしながらそう言うと、続けて何かを言おうとしたが、諦めたように眉を落とす。
そして、そのまま目を閉じた。

「……はいはい」

雅は苦笑しながら、桃子に近づき、今度は少し長めのキスをした。
触れる瞬間小さく揺れる肩が愛おしくて。多分、今までで一番長く、優しく触れていた。

「……やっぱ、分かってくれるんだ」

「そりゃあ。何年の付き合いだと思ってるの」

「…………」

雅の言葉に、なにか思うところがあったのか、桃子は少し黙り込んで考える。
その様子が気になったのか、雅はティーカップを下げようとしながら、桃子の様子を伺っていた。

「あっ、あのさ……」

そうしているうちに、桃子が口を開く。

「……久しぶりに、…泊まっていい?」

「えっ!?」

どき、と自分の胸が高鳴ったのを、雅は感じた。

そう、久しぶりに。
以前は、桃子が早朝や深夜帯での仕事の都合の為に雅の家に泊まることは何度かあった。
その時でさえもお互いに寝相が悪いからとか、時間が無いからとか、なにかしら理由を付けては別々に寝ていた。

「み、みやは良いけど……着替えとかは、持って来てるの?」

「……いや、持って来てないけど……でも……あー、その」

桃子は、言葉を濁した。
その表情から、言わんとすることが予期され、雅まで顔を赤くする。
そして、それに答える心の準備を雅は整えていた。
もしかしてただ寂しいだけかもしれない。逃げ出す気なら今助け舟を出してやらないといけない。

「もも?……お客様用の布団、みやの家にはもう無いからね?」

「っ……分かってる。……あの。もし、みやが嫌じゃなかったら、だけど。……一緒に寝ていい?」

「……うん、勿論」

少しの間を置いて、桃子を腕の中に抱き寄せてから雅は答えた。
締め付けられそうな胸の高鳴りを、どうにか抑えながら。

「でも。良いの?みやは前よりもっと、ももが好きになってるし、
 ……ももに触りたいって思ってるんだよ?」

「え、えっと。もう触ってるよね?」

「もっと、だよ。キス以上の事だって、ももにしたいなって思ってたし。
 ずっと我慢してた分、これからは一杯ももを感じたいんだけど?てか…ももは我慢してなかったの?」

「……鈍感は……どっちだよ」


ちゃんとした返事の代わりに、ももにギュッと抱きしめられた。
お互いの体温が自然と高くなっていくのを感じずにはいられなかった。



そして、その夜は。

泊まるなんて予想すらしていなかったけど、それならばと。今日はずっとももと居たくて。
本当は今夜はしみちゃんとご飯しに出掛ける予定だったけど、キャンセルして貰った。
ドタキャンだったのに、全然怒ってなかったのは不思議だったけど。
じゃあまた今度ね~って軽く笑ってくれたその優しさが有難かった。

ももは何が食べたい?って聞いて。
オムライス!って言われて。いつも通りのフライパンで、可愛いのを作ってあげた。
ももはみやのを作るからね!って柄にもなく張り切ってて、そして。
出来上がったのはちょっとだけ破けてたけど、意外にもフワフワの卵が乗っかったオムライス。
卵の味付けが一切されてなくて、ケチャップ頼りだったのはまあ、ご愛敬って事で。
大好きな人が作ってくれたものがとっても美味しいんだな、って痛感した。


二人で片づけて、並んで歯磨きして。
コップは一つなのに、歯ブラシが二本に戻った。
以前よりももがくっついてくることにドキドキさせられて。
並んでソファーに座ってTVを見てるのに、内容なんて全然頭に入んなくて。
それはももも一緒だったらしくて。自然と見つめ合って、抱き締めて。
両手では数えきれないほどに触れるだけのキスを贈り合った。


照れてるくせに、こともあろうにお風呂、一緒に入ろっか?なんていつものノリでふざけ出したから。
流石にももの冗談でも。みやが平然と良いよ?なんて言おうものならみやのえっち!って逃げるはずだ。
馬鹿でしょ!ってバスタオルともこもこのパジャマを投げつけたら、予想通り笑って先に入ってくれた。

あ。下着、渡すの忘れた。
似合うかと思って買ってあったやつ、梱包したままだったからあげようと思ってたのに。
……まぁ、良いか。明日ちゃんとプレゼントしよう。


二人とも寝間着に着替えて、再び二人は寝室へ移った。
雅のベッドは一人で寝るには十分大きかったが、それでもダブルと言うには少々小さい。
枕は予備のものがあったので、それはなんとかなったのだけれど。

「じゃあ……おやすみ」

「あっ、ちょ、ちょっと待って、みや……」

ももは雅を手で制する。
そして、雅の目を見つめた。

ももが唾を飲み込む音が、雅には聞こえた。
察した雅は、ゆっくりと目を閉じた。
そして、五秒ほどたって、唇に柔らかく何かが当たる感触があった。

目を開けると、ももが布団をかぶって悶えていた。

「……おやすみのキス?」
「そ、そういう、こと……じゃ、じゃあ、おやすみっ」

一方的におやすみを告げて、ももは布団をかぶったまま横になった。
それを見て、雅は苦笑する。

とんでもなく可愛い事を今日は一杯してくれてたのに。
やっぱりまだ恥ずかしいって訴えるももにはやっぱりもう少し時間が必要だよね。
そう言い聞かせたけれど、以前のように不安になる気持ちはもう無かった。

「……うん、おやすみなさい、もも」

そうして、僅かな明かりを残して、寝室の明かりが消される。

――予想はしていたがキスだけで、電気を消してしまった。
  心は昨日までと違ってポカポカと温かい。だけど……これじゃ、望み薄いかな。
  でも、さっきからのももは……ももにしてはずいぶん積極的だった。
  なによりも、初めてももからキス、してくれた。
  嬉しくて調子に乗って何度もみやがお願いしたからか、凄い恥ずかしがってたけど。
  これは……もしかしたらもしかするかもしれない。手でも握ってみようか。

雅はそんなことを悶々と考えていたが、
散々泣いたり笑ったりして、今迄張り詰めていた心が疲れていたのか、
それとももものおかげで安心したのか、少しだけ眠くなってくる。

そんな時、不意にももの手が伸びて、雅の肩に触れた。
突然のことに、びくっ、と雅の体が跳ね上がる。

驚きすくんでいると、そのままももが接近してきた。
そして、ついには抱きしめてきた。

「ちょっ、もも?」

「…………」

寝ているのか、それとも照れているのか、返事はない。
そのかわりに、ももの手が雅の胸に触れる。

「ひゃっ!?」

「あっ……い、嫌だった?」

ももの、不安げな声が聞こえてくる。それと同時に、ももは手を引っ込めた。
起きていた、ということは、これはももの意志だ。

「……ううん、違くて。びっくりしただけだから……」

「そ、そっか……ごめん」

ももは返事を返したが、そこからは何もしようとしない。
一瞬触れられたままの雅の気持ちは昂るばかりで、しかもやり場が無い状態だった。

「……いいよ、もも。……ももの好きなようにして」

「う、うん……」

ももは、体をひっくり返し、雅に覆いかぶさった。
僅かな明かりが、ももの顔を照らしていた。

「……ごめんね、なんかさっきから、やられっぱなしで、
 ろくにお返しとかできなかったから……」

「それで、ちょっと強引にいってみた、ってわけ?」

「……う、うん」

ももは、その体勢から、雅に顔を近づける。
ゆっくり、だが先程よりは早く、唇は触れあう。
体を雅のすぐ隣に降ろして、雅の温もりを感じることに専念した。

触れて啄むだけのキスが、五秒ほど続いて、ようやく二人は離れた。
だが、そこでももは何かを言いたそうにしていた。
しかしそこで敢えて雅はなにも言わずにももを待っていた。

「あ、あのさ、みや?……その、えっちのときのって……えっと。
 ……舌って、入れるんだよね、やっぱり」

至近距離で、恥ずかしそうにしながらも、それでもどうにか目をそらさずにももは訊いた。
ももがこんな事を聞いてくるなんて。みやと身体を重ねる事を想像をしてくれてたなんて。
嬉しくて、照れくさくて、愛おしくて自然と笑いが溢れてしまった。

「まあ、そう。…かもしれないけど。そう言う時じゃなくても別に、良いんだけど。
 ……嫌だったら、別に無理にやらなくてもいいんだよ?」

「とっ、とんでもない!したい、みやとならしたいに決まってるじゃない!」

「…そう?じゃあ……んっ」

そう言って目を閉じた雅に促され、ももは再び顔を近づけてくる。
再び唇が触れ合い、そして恐る恐るではあったがももの舌が雅の唇を割って侵入する。
雅の方もその可愛らしい動きに少し驚きを示していたが、
こちらもまた、恐る恐る舌を動かし始めた。ももがビックリして逃げてしまわない様に。

ぎこちないながらも、二人の舌が絡み合う。
ぴちゃ、くちゅ、と、水音が二人の口から漏れ出す。

絡み合う音が、静かな寝室に響き続ける。
だが、恍惚の表情を浮かべていた二人の表情が、少しだけ歪み始める。
そして、とうとう雅の方から舌を抜いた。

「…はぁっ、ま、って、もも……さすがに、ちょっと苦しい……から」
「ご、ごめん、どこでやめていいのか、わかんなくて……」

あたりの音が二人の息遣いだけになり、会話がしばし途切れる。
桃子は明らかに初めてで。この次どうすれば良いのか戸惑っていた。
雅は流石に大体のことは分かるが、そこへどう不安がらせずに持っていくか思案していた。

「……と、とりあえず、服ぐらい脱がない、と」
「あ。そ、そっか」

そうして雅は、自分の寝間着のボタンを外していく。
桃子も少しためらった後、ゆっくりボタンを外していった。


そうして、二人は下着姿をお互いに晒すこととなった。
雅は既に上半身は何も身に着けてない。

「……ももって……ブラはこんな大人っぽいの、付けるようになったんだ……」

「……ぅ、うん……だって……みやみたいに可愛いの、って。入んない、し」

桃子は雅を直視できない恥ずかしさからか、それとも申し訳なさからか、
それ以上殆どなにも言えずにただ雅の視線を受けるばかりだった。

「むぅ、いいなぁ。大きいし……。大人っぽいけど、十分可愛いよ、もも」

そのまま、雅は桃子の胸を見つめ続ける。
そのうちに手が出そうになったが、途中でひっこめて、代わりに桃子の目を見た。

「えっと……触る?」

「……良いの?」

「う、うん。……みやになら触って欲しい、から」

お互いの胸中が照れでいっぱいで、ろくな言葉も交わせないまま、
雅は桃子に手を伸ばす。

レースに縁取られたブラをそっと外し、恐る恐る桃子の胸に触れる。

「……んっ……」

最初は、人差し指だけで。
それから、指先だけで。
桃子の目を見て、特に嫌がる様子を見せていないことを確かめた上で、
雅は手のひら全体で触れてみた。

「あ……柔らかい、ね」

ゆっくりと、その感触を確かめるように、
しかし優しく、桃子の肌に触れる。

「みやも、ちょっとは大きくなったのになぁ……」

雅は自分の胸に視線を落とし、落胆したような声を出す。
そこは、女性らしい曲線は見せているものの、
出る所はしっかりと出ている桃子と比べると、今はある程度の大きさではある雅。
それでも昔から若干のコンプレックスではあるらしかった。


「えーと……あっ!?」

桃子がなにかフォローの言葉を考えていると、
雅が今度は乳頭を口に含んだ。
そして、赤子のように吸い始めた。

「もも、ちょっと位みやにも分けてよ……」
「もう……」

喋るために一旦口を離したかと思うと、再び胸に吸いついて、
今度は乳頭を舌で転がし始めた。

「あっ……んっ……」
「……えっと、どう?こんな感じで……気持ちいい?」

桃子は声を抑えているためか、震えながらも無言で頷く。
しばらく雅は続けていたが、少しすると愛撫が緩くなり、やがて完全に止まった。

「……みや?」
「……その、もも……みやにも、して欲しい」

顔を赤くしながら、恥ずかしそうにいった雅に、桃子は頬を緩める。
それから、ゆっくりと雅の肌に指先から触れて、
手のひら全体で胸を刺激する。

「んぅっ……」

雅は、確かに本人の言う通り大人になるにつれて成長していた。
服だけじゃなく下着類にもこだわってきたせいか、鎖骨から胸にかけて、そして腰に至るまで。
華奢なのにふっくらと包み込むような女性らしさもあって時間を忘れて見惚れてしまいたい程に形が良い。
手の中にピッタリと納まるサイズだからなのかもしれないが、
とにかく桃子の動きに敏感に反応していた。

「みや?……大丈夫?」

先程の桃子同様に返事を返せない雅は、妙に必死に首を縦に振った。
それを見て桃子は、先程の雅と同じように、舌での愛撫を始める。

「ふぁっ、あっ、んっ、あっ!…ももっ」

敏感なところに触れる、特殊な感触に、
雅は声を抑えることができなくなった。
嬌声は、だんだんと大きくなってくる。
見かねた桃子は、愛撫を中断した。

「もう、そんなんじゃ次いったとき大変じゃない?」

「……次、って?」

言ったものの、桃子の表情には、まだ疑問符が浮かんでいる。
荒い息遣いと、その表情が、未知の行為への不安を物語っていた。

「ねぇ、もも……次、行って良いの?」

そんな桃子をあまり過剰に刺激しないようにしながら、雅は手を伸ばす。

「……ぁっ!?ちょっと、みやっ」

「……ここ、どう?」

下着越しに、敢えて小指の指先で秘所をなぞる。
驚きもあったのだろうが、それだけでももは大きく体を跳ねさせた。
触れた手を凄い勢いで掴まれる。

ももだって手違いって言うか、不可抗力って言うか。撮影中のみやに同じ事したことあるのに。
もう忘れてしまったのか、気付いていなかったのか。いや、気付いてない振りをしてたのか。

「……ど、どうって……」

「脱がせてみていい?」

「え、えっと……」

桃子はただただ困惑するばかりで、焦れた雅が少し大き目の柔らかいショーツに手をかける。
お腹が冷えるだとか、お尻が包み込まれてないと安心しないんだもんとか理由をつけて、
大人のくせに未だに可愛いのを身に付けてるから、脱がせるのも本当は勿体ないと思ってしまうんだけど。


「わ、わかった……あー、駄目!やっばり……自分で脱ぐから!」

「……そう?」

ももはベッドの外側へ足を向けて、少しためらった後、一気にショーツを脱いだ。
かと思えば、すぐに体育座りの姿勢になる。潔いんだか悪いんだか。
さっきまで恥じらってはいても平気そうだった顔も胸も何も見せてくれない。
いや、ご機嫌を損ねたか危機感を感じて丸まってしまったアルマジロみたいだ。

「……もう、そんな格好じゃなにもできないでしょ?」

「……だって、やっぱり、恥ずかしい」

桃子は絶対に見られまいと、足をしっかりと閉じている。

「もう……仕方ないなぁ」

そうつぶやいて、雅も同じように足をベッドの外側へ向けて、ショーツを脱ぐ。
そして桃子の方へ向き直り、膝でベッドの上に立つ。

「……ほら、私もだから、こっち見て。もも」

雅の、一糸纏わぬ裸体がももの前に現れる。
裸体を晒している本人はもちろん、ももまでひどく赤面する。

「ね?もも、……みやと、みやがこれからする事が怖い?
 ……怖いならここでやめてさ、手でも繋いでもう寝よう?
 みやの為って言ってももが一気に無理する必要なんて何にもないから」

「怖くなんて、ない。ない、けど……」

「けど?」

けど。
雅も恥ずかしそうにしながら裸でいるのに、
桃子もいつまでも恥ずかしがっているわけにはいかなくなった。

このままでいたら雅はまた優しく笑ってももを許して、包み込んでくれるだけだ。
そもそも、駄目ならこの先一人で生きても構わないとの覚悟を決めて今日は此処に来たんじゃなかったのか。
目的は既に半分以上過ぎる程果たした。以前の桃子ならこれで満足以上の気持ちで満ちていたはずだ。

でも今は違う。
あとは、自分自身の恥ずかしさに勝つ勇気とお互いの気持ちを信じるだけだ。

「……わかった、よ」

かなりの抵抗を感じながらも、ゆっくりと、ももは足を降ろす。
雅は平静を保っているようで、やはりしっかりとその一部始終を見ていた。

「あ、あんまり、見ないで欲しいんだけど……」

「……見なきゃ何もできないじゃない」

「いや、まあ、それは、そうなんだけど……あっ!?」

そんなことを言っている間に、雅はピタリと閉じられた太ももへ手を伸ばす。
そうして、優しく指先で、手で触れ、少しずつそこを開かせる。

先程からの反応で、多少は準備が進んでいるようだったが、まだ十分に潤ってはいなかった。
そうしている間も、ももはとても敏感に反応していた。

「……もしかしてもも、一人でちゃんと、気持ち良くなったり…って言うか。
 その。この中とか、も。触ったりしたことも無い?」

ももは言葉で答えることができず、そのかわりにこくりと頷いた。

「そっか……じゃあ、どうしようかな」

雅はさりげなく顔を近づけて、もものそこをまじまじと観察する。
それに気づいたももだったが、足の間に入られては今更ひっぺがす訳にも行かないと、どうにかこらえていた。

あまり負担をかけずに、まだ十分に濡れていないももを気持ち良く刺激するにはどうしたらいいか。
それを雅はしばらく思案していた。

そうする間に雅の顔は、少々ためらいながらも、ゆっくりとそこに近づいていた。
女の子を抱きたいと思うなんて、雅だってももが初めてなのに。
怖がらせないように出来るだけ優しくと、いつの間にか自然と体が動いていた。
だが、ももはその意図するところに気づかない。
ただ雅にじっくり見られてるだけだ、という羞恥心しかなかった。

しばらくして、恥ずかしさに耐えていると突然桃子のそこに、にゅるりとした感触が訪れた。

「んゃっ!?あ、みや、な、なにして!?」

雅の舌が、ももの潤い始めたばかりの、ごく浅い部分だけを這う。

「あ、みや!やめ、やめてって、きたないよ!?」

「……ううん、もものがきたない訳ないじゃない。お風呂だってさっき入ったでしょ」

「し、下着だって変えてないのに!」

「……それも、可愛いしみやは気になんないから」

ごめんね本当は新しいのあったのに。
もものいつものが見たかったから。……わざと、だけど。

「いや、でも……んぁっ、やっ!」

今度は、内側に隠れていた小さな突起を刺激する。
その刺激に耐えようとするも、ももは抑えきれず体を大きく跳ね上がらせる。
反応するその声が激しくなるに従い、もものそこも、だんだんと受け入れる態勢が整いつつあった。
頭に響くももの声が雅の心を昂らせていく。

「……もう、大丈夫かな?」

「は、ぁ……な……にが……?」

「指……入れるね?」

「え!? あっ、ふぁっ!」

今度は雅の白く細い指が、ももの中に侵入する。
しっかりと潤った肉壁をかき分け、すこしずつ奥へ進む。

「……本当にした事ないんだ、指一本でもきつい……」

「だ、だから……んぁっ……そ、う言ってるじゃない」

「いや、ももの事を疑ってるわけじゃなかったんだけど……」

指を入口でただゆっくりと出し入れするだけでも、ももは敏感に反応を返してくれる。
その初々しい様子に、声に、雅も強く昂らせられる。
気がつくと雅は、空いた手で自分のほうも弄っていた。

「あっ、んっ、やぁっ!あ、みっ、みや、はげ、し……」

「もも、…好き……ももっ」

「は、ぁっ……ふっぅ…み…やぁ……んんっ」

だが、自慰に慣れた自分の体に動きをあわせてしまったがために、
次第に蕩けていく思考がももには刺激が強過ぎる愛撫になってしまっていた。
もっとゆっくりと優しくしないと、と思っていたのに。
お互いにもはやまともな言葉も発することができず、ただ頂上へ押し上げられていった。

「み、やっ、っく、ふ、ぅ……あぁっ!」

ももの体が、一際大きく跳ね上がる。同時にギュウッと肩を掴まれる。
急な痛みを受けて雅は、しまった、と思い一旦愛撫を止める。
そしてももは、爪先までピンって伸ばしてしまう程の制御不能な力が抜けると雅に寄りかかった。

「……ごめん、もも。イっちゃった?」

「っ……わかん、ない……」

それだけ答えて、後に残ったのはももの息遣いだけだった。
想像以上にぐったりとしたももは、そのまま眠ってしまいそうだった。

「……もも、大丈夫?」

「……うん……だい、じょう……ぶ……大丈夫だよ、みや」

そう口では言ってても、アレだけ緊張してまで迫ってくれてたももが、
肉体的にはともかく、精神的にほぼ力尽きているのは明白であった。

「もも、無理なんてしなくて良いから、ちょっとやすみなよ」

「…うん……みや…大好き」

「うちも、好き。………キスして、もも」

肩に腕をまわしてお互いを安心させるようにキスを繰り返して、
抱きしめるような形でももを支えていると、暫くは起きててくれたけど結局そのまま眠ってしまった。

「……まあ、ももにしては凄い、頑張ってくれたよね」

素肌が触れ合っている温かさと隣に居てくれるももへの感謝と愛おしさのためか、雅まで自然と眠くなってくる。
ももをそっと寝かせて、自身も布団をかぶってそっとおでこに口付けると静かに眠りについた。

「ありがとう、もも。……おやすみなさい」


    - - -


翌朝。

目を覚ましてすぐに、雅は隣を確認した。
ももが、穏やかな寝息を立てている。
しかも、その姿は昨日のまま……裸のままだった。

そこでようやく、雅は自分も裸体のままであることに気づく。
布団の外は少し寒かったが、下着を付けて、着替えるついでにももの服も取りに行った。
いつだったか、ずっと置きっぱなしになっているももの、数点の着替え。
そして昨日渡さなかった、ピンク色な下着の入ったプレゼントを。
我ながらなんて未練がましいと思ってたけど。返さなくて、捨てなくて、良かった。

喜んでくれると良いけど、と思える日がこんなに愛おしいなんて。
ももを傷つけない様にって自分の事に一杯一杯で、大事な事を忘れてたのかもしれない。

二人分の服を持って寝室へ向かうと、突然大きな音がした。
あわてて中に入ると、ももが頭から床に落ちていた。

「ど、どうしたの!?もも、大丈夫?」

「あ、みや!よかった……」

足だけをベッドに残して逆さになったまま、ももは雅に手を伸ばした。
その手をとって、雅はももを引き上げる。

「いや、ごめんね」

「もう、朝から一体どうしたの?」

「いや……その……みやがいなくなっちゃった、と思って……慌てたら、落ちた」

それを聞いて、自分がいなくなって子供のように探し求めるももの姿を想像し、
思わず雅は吹き出してしまった。

「あっ、ちょっと!みや、笑わないでよ!」

「ご、ごめんごめん……とりあえず、服、着たら?
 ももが良いのならみやは別にウェルカムっていうか、そのままでも良いけど」

「……あっ」

そこでようやく自分の姿に気づき、ももは一瞬で赤面した。

「あと、今日はこれ、使ってくれるとみやが嬉しい」

「え。なに突然」

「……んー?あげたかったって言うか。恋人になった記念日のプレゼント、って感じ?」

雅の差し出す下着類と服を受け取り、すぐに着替えようと立ち上がった。
もう何度も裸を全部見られてるのに恥ずかしいのか
後ろ向きのまま真っ先にプレゼントを開けてくれる。
……ももの一番可愛いお尻が無防備なままさっきから見えっぱなしなんだけどなぁ。
ま、良いか。気付いて無いし。これも全部みやの特権だもんね。

「ちょっと、みやこれ…!水着じゃないんだからこんな、際どいの」

「えっ?みやが折角選んだのに。ももは使ってくれないの?…そっか」

「や、ちょっと。違う、違うの。…使わないとは言ってないから」

「だよねー、ももはみやの事が大好きで仕方ないんだもんねー。
 ……早く服着ないと、もっと凄い事するからね?」

「っ……な。ず、ずるいぃ……」

わざと一瞬しょんぼりした雅も、慌てるももを横目にからかいながらいつもの服装に着替えた。
みやの普段着の方が際どい、か。って後ろを見られたら呆れて言われる事も覚悟した上でだ。


「……じゃあ、改めて……おはよう、みや」

「うん、おはよう、もも」

そう言って、雅は目をつぶる。
ももはその意図に気付かず、疑問符を浮かべたまま雅を見ていた。

「……初めての恋人へのおはようのキスは、してくれないの?」
「! ……あ、ああ……」

雅から言われてようやく気づいたももは、再び赤面する。

「やっぱり、まだ恥ずかしい?」

「だって……慣れてないから」

「じゃあ、やめる?」

「……やだ」

一瞬のためらいの後、ももはそっと顔を近づけてキスをしてくれた。
そしてすぐに離れて、顔を伏せた。

「……うぅ、駄目だ。やっぱり恥ずかしい……」

「昨日、あれだけいろいろしてくれたのにねぇ。…舌まで入れて」

「そ、それは言わないでよぉ……」

顔を真っ赤にしたももの頭を、雅は微笑みながら片手で撫でた。

「もう、幾つになっても可愛いんだから」

そう言って、雅はもう片方の手でももを抱き寄せる。
ももはまた、顔を見られないようにしっかりと張り付く。

「……でも、みや」

しばらくそのまま過ごしていたが、
おとなしくしていたももが、口を開いた。

「もしかして……いや、多分、あれじゃ満足してないよね?」

「そんなこと無い。あれだけ可愛い告白までされて、それだけでも夢みたいなのに。
 初めてなのに慣れない事してあんなに可愛いももを見せて貰えたら、今回は十分。
 みやの方こそ、ももに無理させちゃったから」

雅はももの頭を撫でながら、即答する。

「う……で、でもさ、その……私ばっかり気持ちよくなっちゃって……
 こ、今度は、もっと、いろいろ覚えて、頑張るから……」

「そんなに焦らなくていいよ、もも」

ももの頭を、雅はもう一度優しく撫でる。

「だって、みや達の時間は沢山あるんだから」

「そっか……そうだよね」

自然と重なる唇から互いの温もりと愛おしさが伝わり、心が安らぐ。
そしてそれは、やはりこれで良かったのだと、二人に思わせた。

最初から雅を選んだ事は勿論だったが、
桃子は同時に、絶対雅に二度と後悔なんてさせないということを強く決意した。

そして、雅と一緒ならばももは何でも出来ると、ほぼ確信していた。

END

お休みなのにBSでの℃鑑賞もあったりで流石のイゴーさんも疲れ果てたので寝ます
おやすみやももー

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