妾宅に赤い百日紅咲く    《4》
 



          「・・何でそんな嘘、言ったんですかッ!?」

          三角の目をして、カラシマが怒鳴る。 




 「まぁ、出来心でしょうか・・・」

などとうそぶく先生は、 大きくおなりだねぇ と、出目金に餌をばら撒く。 

怒りに目をキラキラさせるカラシマは、口笛でも吹きかねない暢気な先生の背中を睨み、


 「・・・つまり、そういう風に見てたんですね?」

火の粉がこちらに飛んだ。


「ですよねッ? モトキさん?」


詰問するカラシマは、静かで怖かった。 

アァとかウゥとか言う俺はこんな時の逃げ場を完全に失う。 だって金魚は先生が構ってるから。 だって、急に動くとアバラが痛むから。


     まず重要な事実を、明らかにしておかなければなるまい。 

     其の一 カラシマは先生の愛人ではない。
     其の二 カラシマは天涯孤独ではない。
     其の三 俺はまだ正式に振られてはいない。


 
そもそも事の発端は25年前に遡る。 

25年前の春、カラシマ母とカラシマ父は出逢い、即、恋に落ちた。 けれどその恋は茨道。 カラシマ母は不動産王シオダテ サブロウスケの一人娘。 一方、カラシマ父は才能こそあれ、まだ日の目を見ない一陶芸家に過ぎなかった。 所謂身分違いの恋。 娘を誑かす不埒な輩として、シオダテ家の圧力がカラシマ父を脅かす。 だけど、二人は諦めなかった。 でも、カラシマ父は陶芸及び美術界からのからの追放を余儀なくされる。 


 「あらゆる居場所を失ったと言っても良いでしょう。 理由は何とでも付くんですよ。 シオダテの力はそれほど大きかったんです。」

カラシマ父の追放を機に、二人は駆け落ちをした。 そうして二人は、丸二年姿を眩ます。 足が付かないように、各地を点々とする流浪の二人。 そんな二人を影で支え手助けしたのが、カラシマ母の幼馴染でありカラシマ父の才能に早くも目をつけていたで、シブサワ先生その人だった。 


「君のお母さんの事は小さな頃から知っている。 そして君のお父さんは、私の大事な親友だった。 ならば、どうしたって幸せになって欲しいじゃありませんか?」

二人は丸二年を逃げ切り、コッソリ、N県の山村、カラシマ父の生まれた山の家に戻る。 今ですら陸の孤島であるのに、当時は更に凄まじく、地図にも載らない地域だったらしい。 外から隔絶されたそこは二人が暮らすにもってこいだった。 まさに、隠れるにうってつけの土地だった。 そうして二人はそこで、つましく暮らす。 やがて二人の間には子供が生まれ、子供が10歳になったその年、二人は車の事故により短い生涯を閉じる。 そして二人の残した遺児はその祖母により大事に育てられました ・・・・メデタシ・・・・・・   と、その辺りはカラシマに聞いた通りだった。

だが問題はそこからだ。


 「今年に入り、サブロウスケ氏は病に倒れました。 余命はあと数年だろうと、本人への告知がありました。」

事業の約半分がサブロウスケの弟シヅヲが任されていた。 サブロウスケには、その名の通り二人の兄が居たが、二人とも早くに亡くなっていた。 しかも、氏の一人娘も駆け落ち先で亡くなって居るとなれば、いずれシオダテの全てを継ぐのは末弟シヅヲという事になる。 そしてそのシヅヲが自分の後を託そうと画策するのは、一人息子スグルの為だった。 なにせ、もうじき兄サブロウスケは死ぬ。 ただ口を開けてるだけで、資産は飛び込んで来る筈だったのだ。 

だけど番狂わせが起こる。 
ひょんな筋から、 死んだ娘には息子が居るらしい と情報が入った。 その息子とはカラシマ ワク。

ワクの存在がシオダテ家を揺さ振る。 揺さ振られて動いたのはシヅヲ。 シヅヲは邪魔者の排斥に、良からぬ方面からの助っ人を頼んだ。 それが、お婆さんの死後、カラシマを脅した連中だった。


 「じゃ、じゃぁ、僕は殺されてしまうところだったんですか?」

カラシマが両手で自らを抱き締める。


 「いや、殺しはしないでしょう? でも、人一人消すのは刃物がなくても出来ます。 例えば外国に連れてってしまうとか、どこかに閉じ込めてしまうとか、もしもそこが危険で劣悪な場所ならば、直接手を下さなくても死んでしまうかも知れませんしね。 」

後継ぎ排斥の為、キナ臭い連中と癒着するシヅヲたち。 そんな動きは病床のサブロウスケの耳にも入った。 動きの取れぬ自分に代わり、サブロウスケは孫の安全をある人物に頼む。 


 「ワク君の実家に押し掛けた連中は全くの使い走りで、私が誰だかなんてわかっちゃいませんでした。 ただ、借金を取り立てて払えなければ息子を引っ張れとでも言われたんでしょうね。 だから、コッチは払えといわれた額を払ったまでです。」

そうして先生はカラシマの危機を救う。 しかし安心は早い、その場にカラシマ一人を残すのは危険過ぎた。 全てはカラシマの安全の為、カラシマ本人にすら秘密裏に処理されねばならなかった。 シオダテ側の受け皿作りが済む前に、諸々が明らかになるのは危険だった。 それなので、足跡を残さぬよう夜逃げ同然山里を降り、先生はカラシマの行方を眩ます。 こちらでの隠れ家に選ばれたのは、先生の祖父が所有していた妾宅。 シブサワ家でも殆んど知られていないここだった。


 「わたしもね、まァ、色々考えたんですよ・・・だって人一人匿うんですからねぇ。 ・・・・でも、ここなら大丈夫かと思ったんです。 なにせ、忘れ去られた場所でしたし、あの人達だってN県での失敗で、もう諦めてくれれば良いなぁと、ちょっと甘く見てました。」

外出禁止だったカラシマ。 それにはちゃんと意味があった。 
カラシマを守る為の、策が練られていたのだ。 


 「で、でも、そんなに危険ならなんで警察に頼まなかったんですか? 俺なんか雇うより、ちゃんと警護を雇うとか・・・」

そうだよ俺は役立たずじゃないか。 俺じゃなかったらカラシマは安心出来たかも知れない。 今回みたいな怖い思いをしないで済んだかも知れない。


 「こちら側の事情を言えば、シオダテの問題はシオダテ内で処理したかった。 そこに警察が入ると色々厄介なのですよ。 なにせ当主は死の縁に居ますから、そこで骨肉の争いが起こりマスコミが動きとなるとねぇ・・・ それにね、」

先生は俺をジィッと見つめ、そして、ウンと頷く。


 「ワク君には、君のような相手が必要じゃないかと思ったのです。」

 「お、俺?」

 「そう。 ビジネスで会話する誰かではなくて、嬉しい事も悲しい事も話し合えて向き合える対等な相手が必要に思えたのです。 ・・・ワク君、モトキ君と過ごすのは楽しかったでしょう?」

硬い表情をしているカラシマに先生は質問をした。
 え?と眉を上げるカラシマ。 
だがすぐにみるみる綻ぶ、花のような笑顔。
 
「楽しかったです。 こんなの初めてでした。 誰かとずっと過ごすのも、話すのも、笑うのも、そこに居てくれるのが嬉しかったんです。 なんだか、嬉しかったんです。」

嬉しかったと繰り返すカラシマだが、何故だか悲しげに見えた。 
あぁ、あれだ、ハラハラ泣く寸前ってのは、きっとこう言う顔じゃないか? 

でもなんで? 

何故カラシマが悲しげなのか、俺にはわからなかった。 


 「だけど、やはり私は甘かったようです。 勘付かれたのも見張られてるのも承知してましたが、まさかこんな住宅地であんな強引な手段に出るとは思わなかったのでね・・・・」

そう。 

あの日、飛び出した俺を、カラシマは一人で待っていたのだ。 いきなりあんな風になって、放り出され、残されたカラシマは俺が戻って来るのを待っていた。 だが俺は戻らなかった。 公園なんかでキリンに跨り、黄昏てた大馬鹿者の俺。 そんな馬鹿の荷物を持って、先生との約束を破り、カラシマはあの夕暮れ、危険が待ち受ける外に出たのだ。 


 「ワク君にもですが、モトキ君・・・・君にはすまない事をしたと思っています。 怪我までさせてしまって、何て詫びて良いやらわかりません。」

木戸を開けてすぐに、カラシマは襲われる。 襲ったのはセダンの男。 カラシマを見張り虎視眈々と機会を狙っていた魚男。 ついでに助けに入った俺も殴られ蹴られアバラにヒビが入り、全身が腐った桃のようなマダラになった。 だけど、この家を見張っていたのは悪党ばかりではない。 ヒーローが居たのだ。


 「いやぁ〜・・・・まさか、あのジョギング紳士が・・・・・」

 「ジョギング紳士?  ミヤタ君の事ですか? ハハ、それは素敵な仇名です。 今度、彼に言っておきましょう。」

 「ややや、言わなくていいですッ、」

日がなジョギングしていたジャージの紳士こそ、万が一にと雇われたサブロウスケサイドの助っ人、元自衛官の凄腕ボディガード=ミヤタだった。 見た所、恰幅の良い四十代くらいに見えたのだが、変装で、実はまだ三十ちょっとらしい。 彼はああして日に数回巡回してセダンの男を見張り、家を見張り、何よりそこに人がいる状況を作る事で、セダンの男に犯行を踏み止まらせるという、予防的な効果も期待していたらしい。 そしてその作戦は概ね成功と言えよう。 

ショックこそ大きいが、カラシマは掠り傷程度。 名誉の負傷をした俺は、運ばれた救急外来で一時間半熟睡し、アバラは折れたけど頭は問題ナシのお墨付きを貰い独歩退院をする。 

そして一同ホウと腰を下ろす茶の間、まだ興奮冷め遣らぬ21時。


 「・・・でも、なぜです?」

俯いたままカラシマが言う。


 「なぜショウタロウさんはは、そんな風に危ない役回りを引き受けてくれたのですか? シオダテという他人のゴタゴタなのに・・・僕自身、そこまで守られるべき人間じゃぁないのに・・・」

声を震わせるカラシマを覗き込み 何ででしょうねぇ・・・ と、先生は出目金の鉢を突付く。


 「何ででしょう? ・・・・・・ つまり、わたしのロマンスでしょうか?」

 「 ?」

 「ハナさんは・・・君のお母様は実に素敵な人でしたよ・・・・。 わたしはハナさんに憧れました。 そして、そんな素敵なハナさんとの恋に全てを賭け、自ら才能を埋もれさすに躊躇わなかったたカラシマにも、わたしは憧れました。」

「・・・・・・ショウタロウさんは、母を・・・?」

小さい声で、カラシマが問う。 
が、先生はにっこりしてそれには答えなかった。


 「あの二人はわたしの中で、ずっと憧れです。 そうなりたいと、自分もそう生きたいと。   ・・・・・・・ しかしね、憧れなんていうのはそうなれないからこそ、焦がれ、憧れるのだと最近は思うのです。」

不意に屈み込んだ先生が、スッと指先でカラシマの髪を生え際から梳く。

剥き出しになった無防備な額。 言葉を捜すカラシマの、薄く開いた唇。


 「君はお母さんに良く似ているね。」

先生は静かに言った。 

カラシマを見つめる先生は、優しくて寂しい。
先生はカラシマの面影にハナと言う女性を見ているのだろうか?


先生は、 「幸せにおなりなさい」 と見上げるカラシマに言った。 

そうしてクルリと俺の方に向くと 「切ないですねぇ」 とハの字に眉を下げ、はァと大袈裟な溜息を吐く。


 「なんででしょうねぇ、またもやわたしは失恋しましたよ、恋敗れたりです。 何の因果があるのか親子二代に渡ってこんな・・・。 ねぇ君、わかりますか? 君は責任重大ですよ?」

わかりますか? と指を差されて、 エェェ? と後退りする俺。 
途端にズキンと疼痛が走り、キュウッと息が詰まった。

顔を顰める俺をなんだか楽しそうに眺め、先生は言うのだ。


 「ワク君をよろしく。」

ヨロシク言われてどうヨロシクするかとか、なんとか、アタフタする俺にもう一度、


 「よ ろ し く 頼むみますよ?」

先生は上品な微笑を浮かべた。

とても品の良い笑顔だったのに、何故か 「なんかあったら許しませんよ!」 な裏メッセージを感じ、笑顔の裏側に俺は震えた。 そうして言うだけ言った先生は、笑顔のまま 「では失礼」 と部屋を出る。 カラシマは呼び止めたが、先生はヒラヒラ後ろ向きに手を振って、そのまま 「ごきげんよう!」 と帰って行った。 


残された俺とカラシマ。 

急に何とも言えない気詰まりを感じ、二人で黙りこくって、二人で下を向く。 


 「あ、あの・・・・」

口火を切ったのはカラシマだった。 だがそれを呼び水に俺は、気掛かりだった一言を伝える。


 「ごめん・・・」

カラシマがビクッと緊張したのがわかる。


 「あんな事してごめん。 逃げてごめん。 だけど俺は、」


だけど、どうしようもなく、

 「だけど、俺はあぁしたかった。 正直、先生とあの、そういう関係だと思ってたからそういう風に見てなかったって言えば嘘になるけど、でも。 でも俺はずっと、そうしたいと思ってた。 先生に嫉妬するくらいに、俺、ワクが好きだ・・好きでどうしようもない、」

 「・・・・だって?・・・」

消えそうな声。 どうして良いかわからない、困惑するカラシマの震える声。 わかるさ、だろうな・・・変な疑いかけられてホモセクハラされて、挙句、酷い目に遭ったばかりなのにそつに告られてるカラシマはホントにツイちゃいないんだろうと思う。 だから、俯いた顔は見えないけど、でも、俺はもう充分だと思った。 


「・・・・でも、な、もう充分だから・・・、」

「え?」


充分だ。 だから安心しろ、ワク・・・・ 無理に答えなくていいから。 
俺に、気なんか使わなくていから。

俺は自分に決着をつけ、ちゃんと終わらせる準備も出来た。 なにしろ 愛するものの為に戦う! なんてなヒーローシチュも堪能出来たのだから、これは早いとこ想い出に変えるのが良いと思った。 そして何十年後かの夏、想い出を振り返りシミジミするロマンスグレーの俺 ・・・・・ な、泣けるじゃんか、おい、


 「色々アリガトな。 俺もさ、ココ来るの楽しみだった。 メシ食ったり昼寝したり、金魚脅かしたり、あーまー俺の場合もれなくトキメキ付きだったし・・・もう、言う事ない夏。 ・・・・出逢えて良かったと思う。 良かった。 だから、」

だからサヨナラだと、俺はすっくと立ち上がり部屋を後にする。

する筈だったのだが、


 「・・・・てッ・・イテテテテテ・・」

脳天に抜ける激痛。 

立ち上がりざま変に身体を捻ったか、折れたアバラの激痛が、華麗に退場予定の俺を半端な中腰でフリーズ。 駆け寄るカラシマに支えられ、ヨロヨロ座りなおす様は、便所帰りの介護老人も斯くや。 

アァ・・と背を伸ばす俺は、まだ背後から回されたままの腕に戸惑い、
解くのか、振り払うのか、何か言った方が良いのか、だってこのままはアレでしょう、嬉しいけど・・・と、


 「有り難うなんて言わないでください・・・・」

背中越しの囁きは、くぐもって聞えた。


 「有り難うだなんて、楽しかっただなんて・・・勝手に終わった事にしないでください・・・・過ぎた事にしないで・・・だって、」

だって?

ドガドガいうのが俺のかカラシマのか、どっちでもかまやしないけど心臓破裂で死ぬ前に、俺は、俺は、あぁマジかよ?!


 「・・・俺は、諦めなくても良いのか?」

ギュッと絡みつく腕。 背中の重みと体温が、先へ先へと促すから、


 「・・・図に乗るぞ? 入り浸るぞ? 懲りずにまた、なんか仕出かしちまうかも知れないし、それに・・・・」

先があるならば、終わりでなく始まりならば、俺の毎日はしたい事だらけで、遣りたい事だらけで、それらは全てカラシマに向かうのだから、


 「俺は、このまま先に進んでも良いのか? 」

      トンと肩に落ちた重み。
      耳打ちされたお願いは


 「・・・ずっと傍にいて下さい。」


       二度目のくちづけは甘く、しっとりと重なる。 


蕩ける薔薇色のそれは、しがみ付くカラシマを無理な体勢で支えた俺がギャァ言うまで俺らを夢心地にさせた。 息が止まりそうな激痛に、2秒ほど彼岸へ逝きかかる俺。 ゴメンなさいゴメンなさい、ハラハラ涙するカラシマを抱き締める俺は幸いだ。 描くも幸福な己を称え、俺は、三度目のくちづけを交わした。 見ちゃおれんと金魚が跳ねた。


                                * *


     やがて百日紅に赤が消える頃、カラシマはシオダテの資産の一部を生前分与の形で受取る。 

そして、全てを見届けた安堵からかサブロウスケ氏も米寿目前の大往生を遂げた。 あれほど内々にと擁護されたツグヲらは、皮肉にも政治献金絡みの疑惑を週刊誌にすっぱ抜かれ、今や渦中の人である。 大活躍だったシブサワ先生はといえば、傷心旅行と称して 豪華客船百日間世界一周の旅(ゆとりプラン・添乗員数名同行) へ出掛け、連日金髪美女らとパーティ三昧だと聞く。


そして俺は、あの家に居た。 

百日紅の花は散ったけれど、花のようなカラシマを眺め、素晴らしき哉人生と自賛しついでに不細工な金魚とも遊ぶ楽園の日々。 カラシマは譲り受けた遺産でこの家を買った。 「なにしろここは訳有りですからねぇ〜」 と笑う先生は、二足三文の安さ爆発価格でカラシマにこの家を売った。 だから、変わらず俺たちはここで過ごす。 

笑い、語り、喰って、庭を弄り、障子を貼り、時に昼寝してたまに御泊りをして、御泊りッ!! 
してますよ、してますとも、あぁもうどうしたら、もう幸せ過ぎる俺!

ひんやりした縁側の心地良さ。 庭の木々を掠める夜風。 丸い水底で目玉を開けて眠る(多分)出目金。
 

そんな夜半、小腹が空いた俺にカラシマが御茶漬けを作った。 
丼を彩るのは刻んだ紫蘇、生姜、茗荷、炒りゴマに海苔に、チョンと乗せられたワサビ。


 「紫蘇も茗荷も、庭からのありものだけど・・・」

トクトク注ぐお茶が、腹の虫を起こす。


 「・・・ん・・・・美味いよ・・・・。 てか紫蘇は知ってるけど、茗荷なんか庭にあッたッけか?」

 「うん、百日紅のすぐ横。 あそこは茗荷だらけなんですよ。 美味しい?」



それだから、俺はこの愛しい人を抱き締めるのです。 胃袋がキュウいったとかじゃなく、愛していると抱き締めるのです。 嘘じゃありません。 抱き締めながら、南無阿弥陀仏なんか唱えてませんからッ!。


神様、仏様、今晩夢枕に髪の長い美人が立ちませんように、天井がバシッいいませんように、イキナリ金魚がプカプカ浮かびませんように、変な光が部屋ン中飛びませんように、そんでそれ見てカラシマが わ〜綺麗だねぇ〜 とか言い出しませんように、挙句ションベンなんか俺、漏らしませんように、そしてこっからがポイントです、聞き逃さないでくださいね、

   愛し合う俺たちを末永く長く長く長く共に枯れるまで、
   どうか、どうぞ、なにとぞ、ひとつヨロシクと     ・・・・・・たのむよ、










December 22, 2004















 *妾宅に赤い百日紅咲く*4.                               





 * >金魚のおはなし、ホモ込み  というお題で書く