蜂蜜ハニィ
甘い夢、むせ返るのは花の香り、蜜の味、蕩けちゃいそう? でも、もう逃げられない。
蜂は、毒を持ってるのよ。 甘くて、痛くて、素敵な毒。 忘れてた?
ほら、もう、すっかり動けない。
その男は、私が店に入った時からずっと、舐め回すように見ていたわ。
だから、私はわざと、カウンターの端に、一人で座った。 ほら、声の一つもかけてみれば? 巧い事、パキラの鉢が目隠しになるココは、そうね、色々すんのに丁度良いのよ。
私は、薄い水割りを、口に含む。
お酒はね、そう好きじゃ無いの。 都合良く使ってるだけ。 私は都合の良いものが好き、何でもね。 程無く、椅子を引く音がして、例の男が隣に掛けた。
ココいい? 1人?
あらま!馬鹿じゃ無いのかしらね。 嫌だと云う前に座り込んでるくせに、1人だと思って、遣らかしに来たくせに。
若く見えるけど、30は超えてそうな男。
綺麗に肌を焼き、身に付けるものは小洒落ている。 さぞや自信があるのだろう、お金かけて鍛えてる、変に造った筋肉が、わざと目立つ着方をしたシャツの下で鼻高々だ。 最高の女泣かせの笑顔とやらで、男は私を覗き込む。
なら、私も、男泣かせの笑顔と、コレが悦びそうな言葉の一つも掛けてやろう。
『スッゴ〜イ筋肉!! 触ってもイイですかぁ?』
なんて、単純! 大喜びの男は、私に胸だの腕だのを撫でられ、擦られ、聞いちゃいないのに、外車ディーラー業の儲かり具合など、陶陶と語る始末。
その一方で、私の胸元だの、組んだ足の間、少し捲くれたスカートだの、腿だのから、目が離せないでいる。
ほら、よく見てね、見える様にしてあげてるんだから。 なんなら、少ぉし、触ってみても良いのよ。 周りからは、見えない様にしているのだもの。 弱虫なあなたでも安心ね。
私は、男を擦る指先や手の平が、それとなく男を煽って行くのを意識した。性的な煽りを受け、焦り、平静を保とうとして、くだらない冗談を捲くし立てる男の話に、笑い、そして身を揺らす自分が、より、扇情的に見える様、私は計算する。
振り払う長い髪の先が、男の首筋を掠める様に。 組替えた足の間から、その暗がりが、きわどく覗ける様に。 そして、スカートの裾を気にする振りした私の手が、男の大腿を擦り上げて、淫靡に通過する様に。 一息ついた溜息が、男の耳朶を擽る様に。
男の眼は、情欲に濡れて、サカリのついた醜い雄だ。 私は、そう云うのが好き。 嬉しくなって、にっこりしてしまった私に、男は気を良くして言う。
もう、一軒、付き合わない?
あはははは、断られる筈ないって思ってるのね!
自分の余裕も無い癖に! 良いのよ、でも、ソレで良いの!
『エ〜ッ、付き合ってくれるんですかぁ〜?』
頭もお尻も軽そうな口調で、私は上目遣いで甘える。 水割りで湿らせた唇が、下品に光っているのを、私は承知で遣っている。 男がスツールから立ち上がり、続いて立ち上がる私の腰を、あたり前のように引き寄せた。
如何にもな、男のコロンの香りが、不愉快ではあったけど、私は男の肘に、胸をぎゅっと押し付けるように、酔った振りでしがみつく。
見たところ、男は、セクシーでヤレル女を持ち帰った運の良い奴。
そして、私はお持ち帰りをされる、好きモノな女。
概ね、ソレで間違っちゃいない。 いいのよ、それで。
二件目、男の案内する 『とっておき』 らしい店で、私は自慢話に耳を傾け、大袈裟に感嘆し、その合間には、男に触れ、しな垂れ、そして私を見せつける事を抜かりなく遂行した。 男は、次第に、何時もより深い、酔いを感じ始める。 おかしいな? と云う顔もする。
そうでしょうよ、私が一服盛ったのだもの。
でも、まさかと思うでしょ? これから自分が喰ってやろう小娘が、何故?って。 私はこめかみを押さえ、僅かに目を伏せた男に、間延びした舌足らずの声で、甘い提案をする。
『あのぉ、アタシのうち、タクシーですぐですからぁ、もし良かったら、休んで行きませんかぁ〜。 なんかぁ、調子悪そうだしぃ〜』
男の顔に、僅かの驚きと、そして安堵、期待が浮かび、そして私たちは、タクシーを停めた。 私は男を支えるように、しっかり身体を密着させ、男は私に凭れていながら、既に、服の上からでも欲情は見て取れた。 共通するのは欲情のみ。
ねぇ、奈落みたいな夜ね。
噛み合わない思惑二つを乗せ、タクシーは走り出す。
ここ、なの? ・・・
男の意外そうな声に、曖昧に答え、私はマンションのエントランスを抜ける。 エレベーターに乗り込むと、男がまた、同じ事を言う。
『一人暮らしは危ないってぇ、親が借りてくれてるの〜』
男が、さもありなんと云う表情で、覚束ない身体の癖に、悪い娘だねぇ・・・ と、私を抱き締める。 全く、悪い娘に掛かったものだと、私もつられて、男の腕の中、笑った。
部屋の中、ふらつく男をバスルームに押し込め、丸裸にして、シャワーをかける。 御自慢の身体は、まぁまぁと云うところだ。 男は、私もバスタブに引きずり込もうとするが、スルスルと、私は交わし、思わせぶりに笑う。 遊んでる暇は無い、手早く男を洗うと、用意したバスローブを羽織らせ、寝室へ放り込み、ベッドサイドに、飲み物を置いてやる。
『コレ、二日酔いに良い御茶なの、飲んで待ってて』
男は、一口飲んで苦い、と云うが、でも、酷い口渇に耐えられず、ソレを飲み干した。 私は 待っててね 、と駄目押しをし、シャワーを浴びる。実際、待つも何も、男は立っていられないだろう。 しかし、身体は疼いてどうしようもないときている。 そんな男の有り様を思い、私は愉しい計画で頭を一杯にした。
案の定、男はベッドに長座し、虚ろな表情で宙を見ていた。
−−−どうしちゃったんだろうな
・・・ 馬鹿ねぇ、まだそんな事言ってるの?
だらしなくバスローブを着た私の身体を、男はそんなになっても、食入るように見つめる。 そして、唯一活気に満ちた男のソレを、ヤワヤワと探り、男を凝視したまま足の間に四つ這いになり、お尻を高く上げた姿勢で、私はソレに舌を巻きつけた。
男は、きっと、自分のが頬張られ、貪られる様と、私の素敵なオッパイがゆらゆらしているのを、存分に楽しむだろう。 そして、体調の悪さなんて、些細な事だとでも思うだろう。 私は時折、男と目を合わせ、悪戯な笑みを見せ、いやらしく音をたて、見える角度を慎重に選び、ちらちら覗く舌先をも、小道具にした。
男が、低く呻く。 案外、辛抱が効かないのに、呆れたが、私はその見掛け倒しな持ち物を吸い上げ、愛撫するのを休みはしなかった。
男の息が、いよいよ荒くなる頃、私はベッドサイドのチューブをとり指先に擦り付け、男の肛門へと滑らせる。 一瞬、男が硬直したが、こんなプレイは経験済みだろう、咥えたまま笑いかけて遣れば、向うも目配せをする。 話は早い。
私は男の粘膜を探る。遊び馴れした男は、ソコでの快感をとうに知ってるから、すかさず喰い付き、数回身を震わせ、みっともない声を上げ、私の口の中に、驚く程を吐き出した。
悪い遊び、してるんだねぇ・・・ 荒い息をした、男が言う。
そうねぇ、してるわねぇ。 でもね、今までのはそう、悪くない部類なのだけど。
この先が、とっておきなのだけど。 あなたは、気に入ってくれるかしら?
私は、男に覆い被さり、男のローブを肌蹴ると、汗ばんだ自慢の筋肉に、口づけをした。
男は、期待しているだろうが、自分が既に、動けない事に、気付いてはいないようだ。
だから私に、足首を掴まれ、抱え上げられても、薄らぼんやりと眺めている呆気振り。
さぁ楽しませてね、ここからは、私の時間。
チューブの中身を多めに取り、丹念に、ソコに擦り付けてゆく。
指二本なんて、簡単ね。その先も大した事無さそうだわ。
止せ、だの、ヤメロだの、男が言ってるけど、馬鹿ね、止める訳無いじゃない。
あなただって、事の最中、そう言われて止めた事、有る? 無いでしょ?
だから、見ものだったわ。
自信満々だった男が、ぽかんとした間抜けな顔で、私のを見た時は。
ローブを脱ぎ捨てた私は、殊更見せつけるように、イキリ立ってる私のソレを、膝立ちして男に曝した。 男は、声も無く、ソコにローションを塗りつける私から目が離せない。 そして、3本目の指で始まったその時、漸く悲鳴を上げたのだけど、あはは、動ける訳ないでしょ?
悪い様にはしないから、ソコで転がって喰われてれば良いのよ。
あぁ、全く、愉しくて仕方がない。
私は優しく、男を解きほぐす。 まさに処女を扱う、そのマンマね。
なまじ、可笑しな風俗娘に仕込まれたソコは、既に快楽を知っていて、男は、多分、さほど苦痛は感じないだろう。 ま、最初は、多少、我慢なさい。 私は、指を引き抜くと同時に、ソコに尖端を捻じ込んだ。
多少、薬で弛緩してるとはいえ、きつい。
男が、釣り上げられた魚みたいに、口をパクパクさせる。
見開いた瞳の、瞳孔が涙で滲む。 あらあら、なんだかイタイケねぇ。
私はしな垂れた男のペニスを掴み、指を絡めて抜き始める。
男の中が、少し緩くなる。 そして、犯される男の上、私の白い胸がこれ見よがしに揺れている。 落ち着き無い男の視線、懇願が、次第に悦楽を強請りだす。
浅ましい、欲張りなペニス。 泣いたって駄目。
蛙みたいな男に乗り上げ、私は一息に、侵入した。
仰け反った男の喉仏が、上下する。
後はもう、止められない。 遊びの時間は、もっと、もっと、続くのよ。
10日後の昼過ぎ、私は、少し離れた町のターミナルに車を着け、バス停のベンチに、男を座らせた。 こざっぱりとした身形はそのままに、驚く程憔悴して、面変わりした男。 服の中を泳ぐ、やつれた身体。 その目が、縁日のヒヨコみたいに、キョトキョト動く。 薄く開いた口元から、言葉は発せられず、透明な唾液が一筋、垂れた。
私は、男の頭頂部をぽんぽんと手の平で押さえてやる。 私と同じ、シャンプーの良い匂い。 小さな子供にするように、優しく、ポンポンと触れた。 そして、震える指が、わたしのジャケットの裾を掴むのを、優しく引き剥がす。 男の眼に、すっかり黄色く濁って充血した目に涙が浮かぶ。
あらまぁ、甘えたさんねぇ!
心配しないで、また、そのうち、逢えるわ。
男の、小刻みに震える手を、私はそっと包み、膝の上に揃えてやってから、抜き取った財布、免許証を握らせた。 そして、ただ、見開くばかりの、その目を手の平で覆うと、触れるだけの、小さな口付けをした。
また、そのうち、逢えるわ。
私は、ハニィ。 甘い、甘い、蜜。
甘い、甘い、逆らえない、 蕩ける、毒。
September 13, 2002
* ニューハーフ〔シリコン巨乳・竿・玉有り〕攻め/マッチョ受け
こ、これは、パイ擦りができる攻めと云う設定かとビビったが、オッパイネタは次回課題へ持ち越す。
人様にネタを貰って凌ぐ日々。 貰うネタは、人それぞれで、コレが楽しい。
そしてマニア部屋へと道は続く。
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