あけぼの荘の二人
     
       



ミワ君と暮らして、2週間が経っていた。



水曜の晩、カテキョのバイト帰りの僕は、金曜までの課題提出が危うい事をふと思い出し、普段は通らない路地を抜ける近道をした。 間口の小さなスナックだのがひしめくその路地裏は、生ゴミなんかが散らばっていて、薄気味悪いのは男の僕でも危機感迫る感じなのだけど、兎に角急がねばの一心で、なるべく回りは見ないように迷路みたいな隙間を小走りで進んだ。

で、コンビニの灯りがそろそろ見えるって辺り、僕は行く手が塞がっているのを知る。

数人--- 数えると4人が1人を袋叩きにしている。
リンチ? ソレッぽい。 正に、真っ最中。

薄暗い中、手足の隙間から見えたのはじゃが芋みたいな血塗れの顔だった。 事無かれな僕としては即、回れ右が通常だけれども、何故だろう、そのスプラッタポテトフェイスお腹の奥がグググと熱くなる感じ。 そう、不思議な事になんと、僕の息子はやる気なんぞ出し始めて、色んな意味で立ち竦み、そして凝視する僕。 いやしかし、見殺しってのは人道的に・・・・・・などと、葛藤しつつも興奮高まる僕だけど、だけど一人が大きくソイツを蹴り上げ、ビールケースに突っ込むソイツ。 呻き声も低く、あぁこりゃもう、もう・・・・・・そう思った僕だけど、その瞬間、ソイツは死神の如くイキナリすっくと立ち上がる。

後はビックリ、格闘漫画? ヒーロー活劇? 

ソイツ、なんだよ全然応えちゃナイじゃん。 立ち上がって見りゃデカイよゴツイよ、筋肉ダルマで流血がキマル三白眼の凶悪フェイス。 でもって瞬殺・一発撃沈、あっと云う間の屍四つ。 

---な、なんだよ、何で僕? 

殺気ばしった視線が、ギラリ。 背骨震わす、低い声。

『・・・・・・ お前んち、どこ? 』

はぁ? 僕んちですか?

『そ、その、コンビニの裏のあけぼの荘・・・。』  

どうして応える? 素直な僕って。

『・・・ じゃ連れて行け、介抱しとけ、見物したろ?』

男の言葉に何故だかフラフラ、吸い寄せられてく自分が怖い。 
そして男は顔を近づけ、僕の目覗いて一言落とす。

『お前、興奮してるだろ?』

探る眼をしてソイツが顔を近づけるから --- どうして? ワケわかんない! --- 僕はソイツの血塗れフェイスを、ペロリとひと舐めそしてキス。 鉄錆みたいな血の味のキスに、気付けば猛烈のめり込む。 ソイツの舌が僕のに絡まり、僕もソイツの味に溺れる。

かくして僕らは、家路を急ぐ。 

僕は頭が真っ白で、だけどお腹がモヤモヤしてて、熱くなったりゾワリとしたり。 時々掠めるソイツの腕にも、やたらと血圧が上がって下がって。 アパートの前、コンクリ階段、前昇る僕に触れた手の平に、腰の骨上が溶けそうな感じ。 可笑しいくらいに、膝が震える。

そんな僕を知ってか知らずか、ソイツのブットイ腕がスルリと僕に巻き付いた。 筋肉の束にガッチリホールド、湿った吐息をうなじに感じて鍵開けるのも容易じゃぁない。 ドアが開けば縺れる二人。 倒れ込むのは玄関先で、転がるソイツは器用に反転。 でもってしたたか、背中を打ち付けゥウウウと呻いて眉根を寄せる。 そんなソイツに乗り上げちゃったら、心配するよりもう堪らない。

『君、今、ぶつけたでしょ?』
『かまやしねぇよ』

『手当てしないの?』
『だから舐めろよ』

だってもナニもあったもんじゃない。 うっとり血まみれなそいつの傷を、尖らせた舌で舐め突付く僕。 沁みるか痛いか顰め顔のソイツに、何故か益々僕ってばエキサイト。 やがてするりと忍び込む指、ソイツの手の平が脇腹をすり上げ、背骨から腰を指先が辿る。 思わずしがみ付けば、咄嗟に爪を立ててしまったのはソイツの生々しい傷跡だったりして。 ヌルリと滑る感触とソイツがヒュッと息を詰めたんで僕は、赤く染まった指先がソイツを抉った事に気付いた。

けれども、ソイツは予想外の反応を示す。
ヤ、ヤバイッと謝ろうとする僕に、予想外の命令を下す。

『・・・も一度抉れ、その指で、ココ』

ソイツは肩口、一際大きく出血ジワリの傷口を示した。 

『い、痛くないの?』
『そんで、インだよ。』

イイ訳ないじゃん!とか思う癖に、あぁどうして? 僕の指先は、ソイツの皮膚を裂く。、ジュクジュクした新しい傷。 感触に震え、ねぇこんなのって、ナニ? ちょっと変? ねぇそれなのに、この、うっとりってねぇ? 

僕は夢中で血塗れになり、そいつは夢中で僕を弄る。 

もう堪らなくって僕らは間抜けにズボンは半脱ぎ、初めて触れる他人のアレに、一寸ビビルが勝手はわかる。 いやもうあの、驚く程ソイツは上手くて、つい手がオロソカになる僕だった。  ・・・て、ホラもうヤダ、イイ所にヒットするし ・・・・思わず良くって浮かせた腰から、マッハでソイツはズボンを剥ぎ取り、そしてそのまま平たい床に、ゆっくり倒され今度は下に。 見上げるソイツの野獣アイズと、メロッときているフリチンの僕、うわ!こわッ! --- もしや、僕って喰われちゃうのか? --- そんでもイイや、と 理性は吹き飛ぶ。 なにしろとっくに息子はソイツに、しゃぶられ舐められ、もうイイ按配だし。

しかし、事実は意外な方向。 

ソイツがおもむろ、膝立ちになり、僕の息子をドリンクイン。 
そしてねっとり咥えたソコに、絞められ擦られ息子は感激。

『悪かぁないだろ、イイ感じだろ? だから言えよ。この豚野郎ってな!!』

ゆらゆら腰振るソイツが見下ろし、不可解・不穏な指令を下す。

『ほらよ! イイならとっとと罵れッ!』

きゅっと締め付け思わず喘ぐ、そんでソイツの目がマジ、怖くって。 
瞬発、発声、裏返る声。

『こ、この、豚野郎ッ!!』
『あぁ・・・・・・もっと言え! 言ってくれ! ケッタ糞悪いホモ野郎ってのも、バリエで付けろッ!薄汚ねぇ豚めッて、頼む、俺を罵ってくれッ!』

罵りながらのオカシナ快楽、がしかしナンテコトだ、ソレッて恐ろしくイイ。 
目玉がチカチカしそうな快感に浮かされ、何時しかノリノリの罵声もマイオリジナル。


『マッチョの癖に、尻振りやがってッ!!』
『あぁ、全くだ! 屑の屑だな、オレは!!』

『屑カマ野郎ッ! ホモらしくもっと絞めろッ!!』
『・・・・・・あぁ許してくれ、怠ける俺を!  ・・・ なぁところでよ、爪立ててくれ、ホレ、ここ辺り、血ぃ出てるとこ。』


更なる指令に一瞬醒めるが、もはや判断する余裕ナシ、乞われるままに爪立て抉る。 苦痛にソイツが呻いて眉寄せ、その表情にゾクリとする僕。 ついでに痛みに窄まったアレが、息子のカリをギュッとして最高ォ〜〜!


罵り・抓り・抉り・終いにゃ殴って抓って引掻いて、それまたスコブル良くって、格闘・奮闘へとへとドロドロの僕らは長きに渡る珍プレイに力尽き、果てた。 ツワモノどもの乱交の後、僕んちの玄関はエライ有り様だ。 

『じゃ、風呂借りるわ』

まるでバテちゃいないソイツは、とっととゴートゥーマイ風呂。 ガス栓入ってねぇのかよバカヤロとか言ってるよ、威張ってるよ、ココ僕んちでしょ? ザバァ〜ンて浴びてる訳?まだ水でしょう?まァイイってコトですか? ならばしょうがない。 残された僕は、気だるい身体に鞭を打ち、理不尽な掃除に身を粉にした。 

--- のようなマッチョでマゾ、勝手者なソイツの名は ミワ という。 

そして其処から何故だか居座るミワ君と僕の同棲生活は、済し崩しの通り魔的展開で始ったのだった。 人生ってわからない。



『なぁ、腹減った。』

言いたかないけど使えない奴。  ミワ君、生活能力 全く の人。 

掃除出来ない、汚すの得意。 でかいガタイに見合ってよく喰う、その癖自分じゃお湯沸かすだけ。 下水掃除のバイトで稼いで一応食費は入れてくれるけれど、 聞けば悪臭強烈な中、ゴムの上下に殆どボンテでソレが堪らず辞められないとか。 なんだよ結局、娯楽じゃないか。 極真黒帯・強面の癖に、ヤラレルのが好きでおまけにマゾで、その上なんだか俺様な奴。 はっきり言って美形じゃないし、じゃ何で僕ってミワ君で勃つ? 

『そりゃアレだ、つまり、相性ばっちり?』

似合わぬ語尾上げでサラリかわすミワ君は、沸騰させた熱湯味噌汁をわざわざ ふぅ せずに啜るのが好き。 で、当然、スパイシィな熱さにァアッ!と、悲鳴。 そしてソレ見てる僕も、もわぁんとウットリ −−−こ、こう云うところか?  なんとなく身体で知る勃起の理由。 
世の中理屈じゃないんだよね。 

『オレはよ、正直、お前は好みだぜ。 秀才風味の細身の男に、ヤラれてサドられ至福の骨頂だよな』

と満足げなミワ君、美味そうに熱湯味噌汁をまた一啜り。 唸って啜ってもう止めようよと思う頃に、仕上げの塩辛をひィッッと喰った。 究極の飴と鞭、それこそミワ君の苦痛と恍惚じゃァないんだろうか。 などと考える僕は、そんなミワ君から目が離せない訳で。

あぁ多分、今日はこの暑いのに、チゲ鍋喰うとか絶対言う筈。 
だってミワ君、もう口ん中、きっと火傷、結構凄い。


僕は今夜のメニュウを考え、うきうき買い物リストを素早く脳内作成する。 そして、一口鍋ツツク毎に、ウットリ悶えるミワ君を思う。 勿論、鍋は大量のキムチで真っ赤、ぐらぐら煮え立つ地獄鍋に決まり!  あぁ、そりゃいいわ、スッゴクいいや。 

そうだな、そんなら今夜はミワ君、徹底的にフェラする事決定!! 
だよねぇ、二回はイカせて貰わなきゃ! 
そんでディ〜プで、舌先で探る爛れた口内はきっと甘い鉄錆の味。

想像すれば、なんて素敵、なんて甘い生活なんだろ!


『なに、笑ってる?』
『・・・・・・ふふふ、幸せだな、って。』

そう、こんなにも僕らは幸せ。 
満ち足りてるし、楽しみイはッパイ。


神様、神様 アリガト!アリガト! 粋なハカライ感謝してます!


ね、僕らって、無敵でしょ?







September 4, 2002




     
はむこ様 3456Hitリク 『マッチョでごつい男はマゾ/受、攻は健気で気の良いサド』
        との事で。 ほのぼのムードで、如何でしょうか?