クラッシュ・アイス
砕けるもんなら砕いて見やがれ!
甘さはいらない、でも、乾いてる。
冷たいねアンタ、 でも、溶けるだろ??
先生、オハヨ、皆さんオハヨ、俺の一日、いつもの一日、でもさ、イイの、同じでイイの、アンタに逢いたい、アンタに触れたい、俺の一日アンタで回る。
『ホイ、これアガリ、結構イった。』
ありがと、ハルキ。 うわ、稼いだねぇ! 1万ちょっと? ひゃぁコリャすげぇ。
『大会ん時のあれ、超売れ筋だって。 ほらあれ、Tシャツ生着替えのヤツさ、1枚 \300、他のと3枚セットで \800。』
商売上手め、質屋の二代目。 したら何か? この学校には、ズリネタ俺なの数十人?
『まぁな、彼氏ルートで買ってる女もまぁ居るんだけど、概ね野郎。 イイじゃんモテてて』
微妙にヤダよ、なぁ俺、便所は個室にしよう。 結構危険、この売れ方は。
『あぁ、まぁそうだな、中身はアレだが、見た目はこうだし、夢見る野郎も多いんだろよ。』
遺伝子の謎、メンデルの神秘、濃い口親父と、地味顔の母、生まれたオレは、男で美人。 近所の餓鬼の、初恋入れ食い、ついでにトラウマ失恋総なめ。 けども無駄に美貌は結構不幸で、誘拐未遂に暴行未遂、殺傷未遂の未遂尽くし。 無駄に戦うチャンスが多すぎ、今じゃぁすっかり喧嘩上等。 知る人ぞ知るSide.B。
あれは先月、金欠の俺、暇な週末、コンビニ帰り。 アイス舐め舐め深夜の街角、忍び寄るのはヘベレケリーマン。
『んん?コンバンワァ〜、彼女はイクつぅ?あや、美人だねぇ〜! 背ぇ高いんだねぇ、デルモ系かなぁ? だははははは!!』
ジジィ、御機嫌、麗しそうだが、オレは男で今金が無い、気安く触るな、ちょっと来い。
いやん! と可愛くジジイを誘導、路地の暗がり、鼻穴ターボのジジイに鉄拳、すかさず抜き取る財布と定期。 なぁ、どうするよ、ホモで痴漢、女房泣くよな、出世もヤバイな、だけどもアンタはツイテル男、気の良い俺は示談でOK。 か弱い被害者、癒すはマネー。 払ってくれよな、迷惑料。 慌てたリーマン、一気に酔い覚め、二万を掴んで放って逃げた。
『それでも、お前、被害者なわけ?』
路地の先に、そいつは立ってる。 低くて掠れた、声が纏わる。
『助けるまでも、無かったよな、寧ろ、リーマン、憐れで笑えた』
のどの奥で、くくくと笑う。 陰になってて顔見えねぇけど、背ぇ俺くらいかな? 結構高くてガタイは良いほう、あぁ、足長ぇよな、ジロジロ見ながら近づく俺。 まず眼だ、きつい眼、鋭い目付き、シャープな輪郭細い鼻梁、薄い唇酷薄そうで、意味深笑いに心臓跳ねた。
ねぇアンタ、ちょっと、どっかで知ってる、ねぇアンタ俺とどっかで会った?
『そりゃ、ナンパかよ』
くすくす笑うとちょっと優しげ、だけどもイケナイ喰えない感じ。
『俺はね、お前、知ってるよ』
長い指が額を擽り、竦んだ一瞬、口唇掠めた。 吐息かかるよな囁く言葉。
『明日、9時に、俺を見つけな。』
あぁ畜生め、不敗の恋愛獲得レース、17年目に敢え無く敗れる。
しかも行きずり、男で、キスして、うっとりしている自分がなんだかな。 しかし明日だ、9時だな9時か? オイそれ夜か? 朝は無理だぜ、学校あるじゃん。 どっかで見たよな面影胸に、コンビに帰りは恋する道行き。
して、9時、集会、月曜の朝。 もっさり野郎が、ごってり講堂。
あぁヤダヤダね、朝からコレは、白くて細くてキュートで綺麗な、ホールズみたいな美人が見たい。 ハッ、そりゃ俺か?マンまで俺か? 畜生てめぇら和みやがって、オレはドイツで和みゃあ良いんだ。 解せない腹立つ、憤る俺、
ふと壇上からセクシーヴォイス、あ、会長さんだよ、まぁお堅いね、ノンフレームの向こう、クールな美貌、崩れませんよ笑いませんよ、生徒の鏡で学校の宝、親自慢だろね、ああいう息子。
え? マジ? 嘘でしょ? 真っ白な俺。
会長さりげに、眼鏡を外し、確かに見たぞ、こっちを見たぞ、ヤツだよ、あいつ、アレ、会長だ、畜生アイツもSideB? 涼しい顔して眼鏡をかけて、エラソにお知らせ読む会長。 まんまと遣られた、俺、嵌められた。 けど、でも、あれだ、ヤツは俺を知ってたし。 そうだろ?知ってた、知ってて見てた、知っててキスした、そりゃ惚れてたんじゃん。
じゃァ、コトは早い、オレはやるぜ、とっとと纏めろ両想い。
かくして連日、足げく通う、向かった先は生徒会室。
ここでも顔パス美人は御得、恋のデリバリ、スマイル0円、アンタの為なら他にもつけるぜ、豊富なサービス、バリューも用意。 だけども、こいつが、お堅いお堅い、あの日のオマエは何処行っちゃったの? 甘えて見せても、澄まして見せても、凄んで見せてもケンモホロロ、デスますモードでかわされる俺。
なんだよ俺って、なんだか哀れ。 蝶よ花よでチヤホヤ育ち、それが恋して形勢逆転、あぁ腹が立つ、焦れる自分も喰えないヤツも、恋する自分が疎ましい。
ああじゃあ、決めた。 もう、埒、あかねぇ。 あんたが、勝手にキスして始めた、ならば、この先、この俺が仕切る。 見てろよ、俺は、手段を選ばず。 既成事実で勝負をつける。
部活のざわめき遠くに響く、アンタと二人の生徒会室。
いつもの如く、アンタはお堅く、涼しい顔で、議事録作り。 いつもの如く、オレは隣で、コーヒーカップを空にする。 でもな、アンタ、覚悟を決めろよ、今日のオレは一味違う、恋する男の力技。
オモムロ席立ち、アンタの膝へ、跨り、にっこり笑う俺。 邪魔な眼鏡をとっとと外し、上等の頭、抱えてチュウだ。 ビックリしたか?ビックリしたろ、ココまでやるとは思わなかったろ? も一度じっくりキスをして、耳元くちびる、寄せて囁く。
ア・イ・シ・テ・イ・ル・ヨ
駄目押しチュウ。
『あぁ、この畜生、煽りやがって』
言葉が変わる、目付きも変わる、掠れた声に、ゾクゾクっとキタ。 途端に背骨が折れそうなほど、抱き竦められて、息を飲む俺、会長の舌が俺を煽る、煽られ絡まる、俺の舌。 もう止まらない、溢れてしまう。 椅子ごと転がり、痛みに声あげ、潜り込む指に、また声あげる。
あぁ、上々だ、俺ハッピィだ。 後はハルキが上手く遣る。
明日はきっと号外出るぜ、学園きっての美人の御相手、ななんと堅物クールな会長、ビジュアル重視のゴージャスキスに、野郎の股間は一撃だ。 ちなみに単価は、一枚 \1000、デート資金もばっちりじゃんか。
なぁ、会長さん、事実は作った。 もう観念しな、二人でハッピィ!
既成概念吹っ飛ばそうぜ。
砕けるもんなら、砕いて見やがれ!
甘さはいらない、でも、乾いてる。
冷たいねアンタ、でも、溶けるだろ??
クラッシュ・アイス!! もっと、溶かして!!
July 30, 2002
* ゆめ 様 『学園モノ・生徒会・強気受』 ビーボーイの王道風(・・・)
こんな学校嫌だ、そして、こんな夢のないホモも、きっとビーボーイには無い。
ゆめ様、堪忍ね。 ウメキュの芸風ではコレ、限界。
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