疾走、恋の花道     

      
       



猛暑タケナワ年寄り倒れる正午の六畳。 半分齧ったスイカの種と、水滴付いてる麦茶を残し、オマエは姿を眩ました。


『愛があるなら捕まえてみやがれ!!』


通りの向うの喧騒の中に、オマエの声が、紛れて消える。 嘲笑う如く、油蝉。 豆腐屋ラッパが間抜けに響く。


愛ならあるぜ、売るほど持ってる、愛だらけの俺、恋する男、今こそ見せよう、男の純情。 


猛暑タケナワ、ダルダル正午、炎天の路地に踊り出る俺。  
逃げる気ならば、覚悟を決めろよ、俺は絶対諦めるものか。 さながら俺は恋のハンター、愛するが故の脊椎反射。 路地から路地へと疾風のように、オマエの痕跡追い求む。



ところでどうにも、足裏に痛み。
やや?! 嵌められた! 裏のババァに貰ったこれは、扁平足には苦難の権化、イボ付き健康サンダルじゃんか!  畜生ババァめ、どうしてくれよう!  はたと気が付き、俺、蒼褪める、まさかババァめ、巨悪の手先? こうして俺を妨害するか? そうはさせマイその手にゃ乗らねぇ、待ってろ愛しい恋しいオマエ、必ずや俺は迎えに行くぜ! 決意も新たに走りだす俺、いつかこの手に掴んでやるサ、オマエもハートも鷲掴み。



行列出来てる中華「慢珍」、看板横をすり抜け小走り、裏道へ抜けた俺だけど、突如視界が白から真っ暗、何これ? 何ナノ? 俺、どうしたの?  気付けば地下室、怪しい気配、手足拘束、芋虫の俺、顔を上げれば向うに二人、全身タイツのヤバそな手下。


『油断したわね!お馬鹿さん!』


ググっとくるくるセクシーヴォイス。 おぉダイナマイツ、息子も感激、ラバーでボンテで、キャットで、ヒールな、コスプレ美女が俺を見下す。  こっから見ると、乳しか見えねぇ、ソレはそれなり、まァそれも良し。


『コレを飲まなきゃ、帰さないわよ!』


すかさず手下が俺をホールド、て、いうかもう俺、動けないんだけど、顎をギリギリこじ開けられて、注ぎ込まれた暗黒の液。  うっ、よせ、止めろ!こいつは危険!  こいつは醤油だ、あぁ、香ばしい、 
ナゴム間も無くまさしくピンチ、そういや爺さんこれ飲んで、戦争行かずに済んだとか、って、駄目じゃん、それじゃァ、いや、爺さんじゃなくて、やっぱり醤油は危険じゃねぇか!?


四の五のしてても否応なしに、美女がドボドボ醤油を注ぐ、なぁ、それ500? そのボトル? みるみる腹に、ヤナ痛み、みるみるカァッと込み上げる。 やばいよやばい、アンタら、不味いよ、なぁなぁ、速攻、俺、放してよ! 


瞬間暴発ジャンピング・ゲロ、鍵屋玉屋の8尺宜しく、タコ・イカ・マグロが乱れ飛ぶ。  こいつは昼の、寿司弁当、あぁ俺駄目だな、ちゃんと噛まなきゃ、若い内から顎鍛えなきゃ、ところでコレって、いわゆる「漬け」か?  う〜ん、もっぺん食えそな感じ。



『愛に試練は、ツキモノだよな!』


どこかでオマエの声聞いた。



またまた真っ白そんでもって真っ暗、ふわっとした後ドシンと墜落、畜生、馬鹿やろ、婿入り前だぞ、割れ物禁で、優しく扱え、腰は男の命なり。  しばしば瞬き、ゲロまみれの俺、ジロジロ遠巻き一般市民。 おい、アブねぇな、ここ、交差点?  やべ、青点滅、渡んなきゃ! 


スクランブルに、溢れた人波、俺の行く先二つに割れる。 おぉコレ正に、モーゼの十戒!そうだよ俺って、受難で一杯、巨悪と戦う、孤独な聖者。 


突如発見、前方注意。 
芸者・フジヤマ・歌麿・ベリグー、富士山麓に、鸚鵡鳴く。
デコトラこっちに突進中。


『左ヘ、曲ガリマス、キンコ〜ン』


そうかい、曲がれよ、とっととイケよ、イケよと言えば、あぁ、良かったな、最期にヤッタ、オマエとのアレ。  いわゆる名器なオマエにメロメロ、愚息大泣き、ミミズ千匹、俺も負けじとツバメ返しで、くの一プレイに暫しの忘我。  うっとりしてたら件のデコトラ、曲がった筈だろ、なんだよ、来るなよ、


『コノママ、轢殺シマス、キンコ〜ン』


な、なんですと?!  慌てふためき、尻持ちつく俺、フロント硝子の向うに見える、人情皆無の狐目の男、アシスタントを勤める助手席、邪悪な顔したチンパンジー。  そこのけそこのけ聖者が通る!  天国までのカウントダウン、中央分離を爆走する俺、ソレを追跡悪魔のデコトラ。  焼け付く陽射しに、世界は黄色。  泥酔の朝に良く似てる。



ようやく、チャンスだ、歩道に駆け込む、そこに到着、何だよ、このバス、ぞろぞろ降りる、園児達。 うあ! かぁ〜っ! 邪魔邪魔、こまかい集団、みるみるすっかり囲まれる俺、そして衝撃、腿、すね、下腹、蹲る俺を、園児が嘲笑。


『敵ヲ、侮ル事ナカレ!』



畜生、遣られた、奴らも敵か? 無邪気な顔してババンバンだぜ。  
あぁ、腹イテェ、ドコンとイテェ、膀胱遣られた、腎臓遣られた、 やったね!明日は血のションベンだ。  弱った身体を投げ出すそこは、地球に優しい可燃ゴミ。 あぁ、ツイてるな、寝心地まァまァ、火曜の壜・缶・不燃じゃ辛い、バットスメルは、この際我慢で、そもそも俺ってゲロまみれ。 暫し閉眼、戦士の休息、愛しいオマエを夢に見る。 



な、何だ? 顔射か?  激しい異臭、顔に降りそそぐイェローシャワー、あぁ目がしみる、スカトロは嫌!  黄色の向うにでっかい赤犬、片足上げて、不敵に放尿。  ブルっと震えて最後の3滴、おもむろに立つ、二本足。 


『我ハ、世田谷犬公爵ナリ、汝ニ、力ヲ与エシ者ナリ!』


何だかこの犬、頼りになるぜ。  けどよ、ここって三茶じゃねぇの?  土地勘、無い犬、何だかヤだけど、溺れる男は、犬にも縋る。操られる様、犬に続く俺。  途中、立ちション、チンコに疼痛、ほら見ろ早速、血尿出たじゃん、


『弱キ者、戦ウスベナク、憐レナリ』


うるせぇ、ほっとけ、黙れ、犬。  強がりつつも、俺は続く、最早頼りはこの犬ばかり。  辿り着いたは、怪しい洋館、ゴシック満載、ホラーな趣、ドアを開けたら恐怖が始まる。


『御帰りなさいませ、我が御主人様』


待ち構えていた、そいつはドラァグ、メイドのコスに、身を包み、一メートルはある、おフランスなヅラ、瞬きする度、睫毛がバサバサ。


『ドロシー、為スベキ事ヲナセ』


犬が命じて、ドラァグ動く、ドラァグすかさず俺に注射。  
あぁ、死ぬのかな、最早これまで、薄れる意識に、為す術は無し。



気付けば、すっきり、真っ白な部屋。  
バカボンみたいな浴衣着て、脛丸出しの、俺だった。 


『気がついたのね、旅の方』


声を掛けるは、ドラァグドロシー、心臓に悪い、ナースのコスに、白いパンスト、ガーターちらり、 けど、気が利くぜ、食事と飲み物、渡されるままに貪る俺。


『召し上がったら、御行きなさい! 貴方はもう、弱くは無いわ、生まれ変わってリニュした貴方』


なんだよ、どうした、リニュって一体? そして衝撃、事実が此処に。  
あの犬勝手に、俺いじったな、改造ですと?  俺、サイボーグ?  もう、人間には、戻れないの?  もたもた喰ってて、オロオロする俺、喰ったらサヨナラ、とっとと消えろ、無情に、ドロシー、俺を追い出す。



かくして俺は、科学の申し子。
右の奥歯に加速装置、左の奥歯に着メロ機能、右網膜には、退屈知らずの、好評、7つのゲーム機能。 早速、響くは「きよしのズンドコ」  畜生、公爵、てめぇの趣味か?


『ビルの、上を見るがいい!!』


オットコ前の、バリトン囁く、ふと見上げれば目の前のビル、屋上に立つ、影一つ。 そして上空、近づく、ヘリ。 あぁ、アレは、アレは、愛しいオマエ! いいか? 待ってろ! 今行くぞ! 加速装置ですぐさまGO!だ!


マッハの速さで駆けつける俺。 屋上のドアをガツンと開けて、オマエの姿を探す俺。  あぁ何て事! 愛しいオマエは、髭の二枚目に、しかと抱かれてヘリに乗る。 にっこり笑った綺麗な顔で、オマエが俺に言い放つ。


『この世の果てまで、追い駆けて来い! 美しい、俺を、攫いに来い!』



そうして飛び立つヘリを見つめて、新たな野望に燃える俺。 


あぁ、追い駆けるとも、攫いに行くとも、
この世の果てまでオマエを求めて、生きてる限り俺は走る。  
例え、世界が敵であろうと、そんなの、ちっとも、かまやしないさ!!


愛に向かって、ただただ疾走。  命燃やして、愛を勝ち取る。
見よ若人よ、我を称えよ!!



これが男の恋の花道。





July 26, 2002





       * 桜井 様 ・・ 『ゲロ/血尿/黄色い視界で疾走する男+エロ+ややフェチ』
         一応、キーワードは入っているかと・・・    怒っちゃ、嫌。